「雪下の誓い」初依頼 上
「お待たせ。」
僕が入り口の受付に向かうと、
「あっ、来た!ノア君、依頼どうする?」
すでにある程度依頼の目星をつけてあるらしいミリアが、僕にそう聞いてくる。
── 75層、レッドドラゴンの討伐に最前線、113層のマッピング、それに62層のモンスターの間引き……。
「うーん……。初めて受ける依頼にしては、ちょっと重くないかな?」
「そうかな?ノア君がいれば問題ないと思うんだけど……。」
「確かにどれも問題はないけど……。せっかくの初依頼なんだから、もっと思い出に残るようなのを受けようよ。例えば、これみたいな、ね。」
そう言って僕は、一つの依頼を指差す。
── 第42層に自生する、雪晶花の採取。
雪晶花は、採取したものの魔力に反応してその色・形を変える。それは一つとして同じものはないと言われている。だがその性質故に、ダンジョン内に自生する姿のまま採取することは困難を極める。
「これなら、『雪下の誓い』の初依頼にぴったりじゃないかな。」
僕がそう言うと、
「確かに!……でも、どうするの?これを持って帰ってくるのって、だいぶ難しいんじゃ……。」
「大丈夫。僕ならできる。」
僕の魔力操作なら、問題なく採取できるはずだ。何なら、魔力を遮断する手袋とか容器とかもあるしね。
僕がそう言うと、
「……ノア君がそう言うなら大丈夫か!うん、これにしよう!すみませーん!」
と、ミリアは受付へ向かっていく。
── 数分後 ──
「あれ?ノア君、そんなに荷物少なくていいの?」
「逆にミリアは何でそんなに荷物多いの?」
各々準備を終えて合流した時の第一声がそれだった。
「だって、第42層だよ?最低でも戻ってくるまでに2日はかかるじゃん。」
「え?第42層でしょ?日帰りで行けるじゃん。」
「「え?」」
僕たちは揃ってお互いに問う。
「え?いくらノア君が強くても流石に1日じゃ30層進むのが限界でしょ?」
「え?何で普通に進むつもりなの?行きは落ちて、帰りは転移すればいいじゃん。」
というか、僕もよくそれやるし。
「落ちる……ってまさかあの大穴のこと!?危ないよそんなの!?」
「大丈夫。僕の糸はオーガでも引きちぎれないから。人2人の体重を支えるくらいなら何の問題もないよ。」
「ノア君がそう言うなら大丈夫……なのかな……。それより、帰りに使うって言ってた転移?って何?」
「僕の使える魔法の1つで、一度行ったことのある場所か座標がわかってるところにワープできる魔法だね。」
厳密に言えば一度行ったことある場所、じゃなくて風景を完璧に思い出せる場所なんだけどね。僕、一回見たものは忘れないって言うちょっとした特技があるから、実質一回行ったことあればどこにでも飛べるんだよね。
「……それって、危なくないの……?」
「んー、基本的な注意点だけで言えば転移結晶と変わらないからなぁ……。強いて言うなら、転移先の安全は確保されないところくらいかな?」
「……事故で死んじゃうことはないんだね……?」
「うん。ハプニングが起こらなければ。」
「……分かった。じゃあ、ノア君のやり方で行こうかな。……あ、でも荷物どうしよう……。」
「あ、それなら僕がしまっておくよ。」
僕はそう言って、ミリアの持っていた重そうな荷物を虚空に収納する。
「あれっ!?どこにいっちゃったの!?」
「僕専用の収納空間、とでも言えばいいかな?中に入れてるものは時間が止まった状態で保存されるし、権限のない人から干渉されることはないから、安全だよ。」
「へー……。そんな魔法があるんだ……。」
「他の人が使ってるのはみたことないけどねー……。まあ、これはスキルの書で手に入れた魔法じゃなくて色々魔力をいじってるうちに見つけたものだからね……。」
これに関しては風流も知らなかったから、多分オリジナルなんだよね。あの"時空間魔法"スキルって、"魔導"スキルがなかったらできなかったし……。使えるようになると結構便利なんだけどな……。
「っと。そんなことより、着いたよ。」
そんなことを話している間に、僕たちは大穴にたどり着いていた。
「それじゃ、いくよ?」
僕は手早く糸を準備し、万が一がないようミリアの体を固定する。
「えっちょっと待って!まだ心の準備がああぁぁぁああ!?」
何か言おうとするミリアの言葉を無視し、僕たちは大穴を落下いていく。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




