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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第一章
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回想③ ── グレン 視点 ──

あれから、数週間が経った。初めはギルドの空気に馴染めるか不安だったが、うまいこと馴染んでくれたようでよかった。……まあ、何も話さず人形のようにただ椅子に座っているだけの状態が馴染んでいると言えるのなら、だが。

あれから色々と話かけてみたが、結局彼が反応を見せることはなかった。一応こっちが頼んだことはしっかりやってくれるから話が伝わっていないわけではないんだろうが……。流石にここまで何の反応もないと不安になる。

ちなみに今後のために色々な武器を試させたところ、ノアが一番うまく扱えたのは意外なことに糸だった。てっきり剣とかかと思ってたんだが、予想が外れたな。


「君、誰ー?」


すると、ずっと椅子に座ってぼうっとしているノアに話しかける1人の少女がいた。ノアは彼女の方をゆっくりと見ると、


「……ノア。」


とだけ言う。


「ノア君って言うんだ!私はミリア!よろしく!」


そう言うと彼女はノアの手を取り、握手する。

その後も彼女は、全く反応を見せることのない彼に話しかけ続ける。すると、


「……何で……?」


と、初めてノアが名前以外に声を出す。


「何でって、決まってるよ!君と仲良くなりたいから!」


その言葉に、ノアは小さくではあるが目を見開く。


「……何で、僕なんかと……?」

「んー……何となく!なんか、君とならうまくやっていけそうな気がしたから!」

「……やっぱり、わからない……。」


そう言うノアだったが、俺はノアの表情の変化を見逃さなかった。彼の口角が、ごくわずかに持ち上がっていた。


── てっきりあいつの心は壊れちまってるものだと思ってたが……もしかして心の奥底に閉じ込められてたのか?……なら、あの嬢ちゃんには感謝しないとな。あいつの心を、ごくわずかにではあるが解き放ってくれた。あの子なら、きっとノアとも上手くやってくれるだろう。

俺はそう思いつつ、2人の様子を見守るのだった。


「── しっかし、ミリアが貴族の娘だと知った時は驚いたな。」

「ですね。あんなに天真爛漫な子が貴族なんて、今でも信じられないですからね。」

「だが、正直彼女が貴族の娘で助かったな。」

「ええ。……もしあの2人が結婚することになっても、そのハードルの高さが段違いですからね。」

「となると……目下の問題は認定式か……。」

「ですね……。あの式典には、『聖女』ことトウカさんが参加しますから……。もしかしたら、気づかれるかもしれません。」

「だよな……。……噂では、あの家に生まれた子供は双子だったと聞く。……直接顔を見られなくても、何か不思議な力が働く可能性だってある。しかし式典に出ないわけにはいかないし……。……ノア……お前は何で、こうも厄介事を次々に持ってくるんだ?」


と、もし本人が聞いたら「好きで持ち込んでるんじゃないですよ!と言うか、これに関しては僕悪くないですよね!?」と怒りそうなことを言いつつ、俺は窓の外を見る。空は徐々に青くなっていく。清々しい朝だ。しかし俺の内心には、暗雲が渦を巻いていた。


俺はちらりと家紋を見る。藤の花が描かれた外枠に、猛々しく吠える虎。間違いなく、隣国の貴族の中で皇帝の一族に次ぐ力を持つと言われており、初代皇帝の血が受け継がれる血筋、シスト公爵家の家紋だ。確かに7年前、あの家の双子の片割れが行方不明になったと言う話は聞いた。だが、あの時のノアは髪の色も瞳の色も、伝え聞いた特徴 ── 今のノアと同じ、白髪赤目とは全く違ったから、考えることもしなかった。しかし、何故髪や目の色が違ったんだ……?


そう考えた時、俺の中で1つの仮説が生まれる。一見、突拍子もない仮説だ。しかし、今までバラバラだと思っていた情報がまるでジグゾーパズルのように組み上がっていくにつれ、その仮説はより説得力を増していく。


── 発見時、ノアの周囲にあった明らかな殺害計画の証拠。帝国の腕利きの魔獣使い(テイマー)複数人が行方不明。それに、あいつにかかっているという封印……。


それらが繋がっていくにつれ、俺の目の前に、恐ろしい一枚の絵が完成していく。


「……なあ、アルバート。……もしかすると ── 」


俺がその仮説をアルバートに伝えると、


「それは……!……しかし、確かにそれなら全てに説明がつきますね……。……ですが……。」

「ああ。もしこれが正しいとするならば、あいつは確実に帝国の闇に関わることになる。……本当に、何であいつはこんなに厄介事を……。」

「……これに関しては、彼は悪くないでしょう。……今は、でき得る全ての対策を、できるだけ早く行うのが最優先です。」

「そうだな……。」


── ノア、お前は今後、どうなっていくんだろうな……。


俺は今後否が応でもこの闇に関わることになるであろうノアに、心の中でそう問いかけるのだった。

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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