目覚め
初投稿ブーストで2話目です!
── 天賦の説明 ──
初級職 農民 のような、非戦闘職
中級職 戦士 のような、一般的な戦闘職
上級職 戦闘職の中でも上位に位置する職
超越職 他の職とは一線を画す強さの職
──温かい。
意識を取り戻した僕が初めに思ったのは、そんなことだった。
うっすらと目を開けあたりを見渡すと、知らない天井と寝かされている布団、床の畳や障子が目に入る。
少しぼうっとしながらそれらを眺めていると、徐々に意識がはっきりしてくる。それに伴って記憶も戻ってきて、僕はばっと飛び起きる。慌てて胸元を見ると、そこにナイフは刺さっておらず、あろうことか傷跡すら残っていない。でも、あの痛みが現実でなかったとは思えない。
そう僕が首をひねっていると、すっと障子が開く。
「お目覚めになられましたか。」
流れるような長い桜色の髪に、同じく桜色のぷっくりとした唇。翡翠のような眼は切れ長で、刃のような鋭さを感じさせるとともにどこか温かさも感じさせる。舞い散る桜の柄をした着物を着た女性は、僕が起きていることを確認すると、
「庭の草花の手入れをしようと思ったら庭先にあなたが倒れているのを見つけたので、急いで運んで軽く手当てをさせていただきました。」
と言う。
「でも、確か僕胸にナイフを刺されてたと思うんですけど……。後、ダンジョンの中に家って……。」
「傷に関しては、たまたま家に置いてあったエリクサーを使って治させてもらいました。家に関しては──」
「ち、ちょっと待ってください!い、今、エリクサーを使ったって言いました……?」
「?はい、それがどうかしましたか?」
「どうかしましたか?じゃないですよ!なんでそんな高価なものを……!」
「なぜ、と言われましても…。どうせこのまま使わないでいるよりは、誰かを助けるために使ったほうが有意義かな?と思ったからですが……。」
「だからといって僕みたいな天賦もない『無能』に使うようなものじゃないでしょう!」
僕がそう言うと、
「天賦がない、ですか?でしたら、その目に浮かんでいる紋章はいったい何なんですか?」
「そんなものないですよ。」
手を横に振りつつそういう僕だったが、そこでふと気づく。
……あれ、僕の手ってこんなに白かったっけ?
「……すみません、鏡ってありますか?」
── 数分後 ──
「な、なんじゃこりゃ……。」
僕は鏡に映った自分を見、絶句していた。新月の夜の空のように黒かった髪と青白かったとはいえまだ血の通っていることが感じられた肌は雪のように白くなり、髪と同じく黒かった瞳はルビーのように紅くなっていた。そして僕の左目には、今までにはなかった不思議な紋章が浮かび上がっていた。
「もともとそのような色ではなかったのですか?私があなたを見つけた時には今のような色でしたが……。」
「……まあとりあえず色のことは置いておいて、まずはこの目の紋章が何か知りたいな。何かこの手の情報が載ってるような本ってありますか?」
「それならこの家の書斎にあるかもしれません。」
そう彼女が言っていたので、さっそく書斎に向かうことにした。
「こちらです。」
彼女の案内で書斎についた僕は、さっそくこの紋章のことについて調べ始めた。
「うーん……。上級職にも該当はなし、か……。」
「そうなると、残っているのは超越職だけになりますね。」
「超越職かあ……。もしそんな天賦を持ってたら、驚きだよね。『無能』の僕が、その辺の冒険者より上位の天賦を持ってることになるんだもん。」
そう呟きつつ、本のページをめくっていく。しばらく読み進めると、とある職の説明に目が留まる。
「これ……だね……。」
そこに書かれていた天賦は〈刀聖〉。文字通り刀を扱う超越職だ。この本によると、この天賦が最後に確認されたのは約200年前らしい。
「見つかりましたか?」
彼女が本棚の奥からやってくる。
「うん。〈刀聖〉だって。」
「やはり超越職でしたか……。そう言えば、今までは何の武器を使っていたんですか?」
「今まで使ってたのは糸が中心だったね。刀は持ったことはあるけど、ほとんど使ったことはないや。」
「でしたら、裏庭で刀の修練をしていきませんか?この空間は外とは時間の流れが違っていて、訓練するにはもってこいですよ。」
「でも、僕は刀のことについてはほとんど知らないよ?」
「安心してください。この書斎にたいていの武器の指南書は置いてありますし、私自身ある程度は刀を扱うことができるので。」
「じゃあ、お願いしようかな。」
こうして僕は、刀を扱う訓練をすることになった。
エリクサーとは
回復薬の中でも最上位に位置するもの。四肢の欠損をも治し、あらゆる病・呪いを打ち消すと言われている。
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