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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第一章
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「── ちゃん、お兄ちゃん!」


僕はその声に、ふと目を開く。見ればそこはいつもの宿の部屋ではなく、どこかのお屋敷の庭のようだった。


「いつの間にか部屋からいなくなってるからどこに行っちゃったのかと思ったら……。またここで寝てたの?」


先ほど、僕を起こした声と同じ声がする。見れば、5歳くらいだろうか、あまり装飾は多くないものの高級感を感じさせる、空色を基調としたワンピースを身にまとった少女がこちらに話しかけているようだ。しかし彼女の首から上は、靄がかかったようでうまく認識することができない。


「ああ、ごめんごめん。ちょっと勉強がめんどくさくて。」


すると、僕は何も話すつもりがなかったのに、勝手に口が動く。


── いや、違うな。これは多分、記憶の再生だ。だから僕からは干渉できないし、向こうから僕が認識されることもない。多分この記憶は、僕が無くしてるものの一部……かな?


僕がそんなことを考えている間にも、少女と僕(?)は話を続ける。


「そんなこと言っちゃダメだよ!あれでも結構いいとこ出身の教師らしいんだから!」

「あんな身分とか年齢とかに固執する、The型にはまった人間みたいなあの人が?正直、もう知ってる内容しかないから正味やらなくてもいいんじゃないかとか思ってるんだけど。」

「確かにそうだけど……。普通、お兄ちゃんの歳でそこまでできる方がおかしいんだよ?戦闘も魔術もその辺の冒険者に遅れは取らない、教養や作法なんかも貴族院で学ぶ内容と同等……。いくら蜈ャ辷オ螳カ縺ョ逾樒ォ・と呼ばれてるからって、正直おかしいと私も思うんだけど……。」


何だ?一瞬彼女の声にノイズが入ったような……?


「えー?できちゃったものは仕方なくない?それに、繝ヲ繧、だって僕と同じくらいのことはできるじゃん。……まあ、戦闘に関してはそもそもの適性が違うから一概に比べることはできないけど。」

「うっ……。そ、それは……。」

「まあまあ、別にいいじゃないか。それは2人が努力して身につけたものなんだから。」


ここで、新たな声が現れる。声のした方を見れば、これまた同じように装飾は少ないものの高級感を感じさせる淡い緑色の上着を羽織った男性がこちらに向かい歩いてきている。しかしその顔は、少女と同様に靄がかかったようになっていて、認識することはできない。


「あ!お父様!」


と、少女。どうやら、僕と彼女の父親のようだ。


「どうしてここに?仕事は……?」


と僕が聞くと、


「ああ、仕事ならもう終わったよ。親切な誰かがうちの領土に拠点を置いていた盗賊団を壊滅させてくれたおかげでね。」


と、男性は意味ありげにこちらを見ながら答える。


── うちの領土……。つまり、この家は地主か何かなのかな?いやでもさっき貴族院って言ってたし……まさか土地持ちの貴族?


僕がそんな考察をしている間にも、会話は続く。


「ところで、勉強の方はどうしたんだい?」


「つまんないからサボってる。今更足し算とか簡単な単語とかやらされても意味ないし。」

「ん?それは変だな……。私は確かに、2人に合わせたレベルの教育を行うように言っておいたはずなんだが……。」

「え?でも実際、5歳の貴方達はこれをやっておきなさい、みたいな感じで問題集だけ置いて、すぐにどこかに行っちゃうけど?」


と、少女が追撃を口にする。


「本当かい?……そうなると、また新しい教師を探さないとかな……。」

「ところでお父様、今日は何でこっちに?」


と少女が聞く。


「おっと、そうだった。今日は2人に、これを渡しておこうと思ってね。」


すると男性は、上着のポケットから2つの小さな懐中時計を取り出す。その蓋には家紋のようなものが刻まれている。


── あれは……僕の持ってる……?……てか、家紋ってことはやっぱり貴族なのか……。


「これは?」

「2人の身分を保証してくれる、魔法の懐中時計だよ。もし困ったことがあれば、その土地の有権者とか衛兵とかにこれを見せれば、きっと何とかしてくれると思うよ。」

「へー!すごい!」


と少女が無邪気に感心する一方、僕(?)はじっと懐中時計を見つめていた。


「……それだけじゃない。これは……対物理・魔法障壁に、全状態異常の回復、高位の回復魔法……?」


そんな僕の呟きに、男性は少し驚いたような顔をする。


「あまり目立たないようにしたつもりだったんだけど……。正解だよ。2人の身に危険が迫った時に、一度だけだけど自動で発動するようになってるから、出来るだけ肌身離さず持っておいてね。」


そこまで聞こえたところで、僕の意識が急速に浮かび上がり始める。意識が浮かび上がるのと等しい速度で夢が薄れてゆく中、僕は最後に男性の一言を耳にする。


「君たちは、我が繧キ繧ケ繝亥?辷オ螳カの希望だ。だから、何があっても……死なないでくれ。」

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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