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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第一章
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手合わせ

彼から問われたその質問に、僕はすぐには答えることができなかった。Sランク冒険者って……確か今世界でも9人しかいないって言うあの!?


「い、今、聞き違いじゃなければSランク冒険者って聞こえた気がしたんですが……。」

「おう。俺はそう言ったぞ。」

「無、無理ですよ!僕みたいな一市民に、Sランク冒険者なんて!」


Sランクといえば、化け物揃いだと聞いたことがある。対して強くもない僕がそんな中に入るなんて、想像もつかない。


「お前みたいな一市民がいてたまるか!大体あのミノタウロスも、Aランクでも単独(ソロ)討伐は無理なんだぞ?」

「え、あれをですか?冗談はやめてくださいよ。」

「冗談じゃないんだが……。事実、Aランクのミリアもあれには手こずってたみたいだしな。」


へー、ミリアってAランクだったんだ……。

……じゃなくて!僕がSランクなんて絶対無理!大体僕みたいな凡人を、なんでこんなに買い被ってッッ!


僕がそう考えていると、突然ギルドマスターが僕に殴りかかってくる。


「ちょっ……!いきなりっ……なんなんですか!」

「いや?ほんとに凡人なんだったら、これを躱せるのかと思ってな?後、さっきの見てたらなんか戦いたくなってきたからな。」

「だからって!いきなり!殴りかかってこないでください!」


容赦無く叩き込まれる連撃をなんとか躱しつつ、僕はそう言う。


「はっ、これを躱しておいてよく言うぜ。言っておくが、これを躱せる奴なんてほとんどいないんだぜ?普通の奴は反応すら出来ずに一撃もらっておしまいだ。」


── くっ、どうする!?僕は彼の拳を躱しつつ考える。ここじゃ開けすぎていて(これ)は使えない。だからといってこのまま躱し続けるだけじゃジリ貧だ。そう僕が考えていると、


「戦闘中に考え事とは感心しないなぁ!」


と彼が拳を叩き込んでくる。


躱すのは間に合わない、即座にそう判断した僕は虚空から木刀を取り出すと、身体と拳の間に滑り込ませる。


「ほう?そんなものを隠し持っていたのか。」

「自分の実力は必要なとき以外は隠しておくものでしょう?」

「そうでなくちゃな!」


彼はそう言うと一層激しく拳を打ち込んでくる。僕は木刀でそれを受け流しつつ、彼を観察する。


── この動き、明らかに身体能力だけじゃ説明がつかないんだよなあ。それに信じられないくらい堅いし。そうやって彼の動きを観察していると、ほんの一瞬だけ、僕の目に魔方陣が映る。


【確認しました。スキル 魔導書(グリモワール)に、無属性魔術 身体強化 と 硬化 が登録されました。】


やっぱり魔術で強化してたか。他には特にカラクリはなさそうだし、そろそろ終わらせちゃって大丈夫そうかな。


「どうした?守ってばっかじゃ俺には勝てないぞ?」


彼はそう言うと、より激しく拳を打ち込んでくる。それを僕はいなしきれず、身体が浮かび上がる。彼は勝利を確信したようににやりと笑うと、とどめだと言わんばかりに大振りの一撃を打ち込んでくる。確かに普通ならこれは回避できない。そう、()()()()。僕は仕掛けた罠に相手がかかったことを確認すると、身体にたたき込まれた一つの技を繰り出す。


── 桜花流刀術・七式 春風


その瞬間、空中にあった僕の身体を彼の拳が捉える。しかしその身体は吹き飛ばされることなく、拳の触れた部分から桜の花びらとなって彼の視界を塞いでいく。驚愕に彼が目を見開く中、僕はその花びらに紛れて間合いを詰めると、拳を振り抜いてがら空きとなった彼の胴に一撃をたたき込む。


「そこまで!」


するといつからそうしていたのか、審判のように立っていたアルバートさんがそう宣言する。


「おーいてて。こりゃあ良いのをもらっちまったな。」


グレンさんが僕の打った脇腹を軽く押さえつつこちらへ歩いてくる。


「きれいな一撃でしたね。」


アルバートさんがそう言うと、


「ああ。全くだ。しかし最後のやつはどうやったんだ?あれなら確実に入ると思ったんだが。」


グレンさんがさっきまで戦闘をしていた辺りを見つつ聞いてくる。底には先ほどの花びらは一枚も残っていない。


「詳しく教えるつもりはありませんが、これと魔法の合わせ技だということだけ伝えておきます。」


僕は手に持った糸をチラリと見つつそう答える。

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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