地雷
─── ミリア 視点 ───
「ダサッ。」
ノア君のその言葉を聞いた瞬間、私たちに絡んできてた冒険者パーティーの雰囲気に、剣呑とした雰囲気が混じる。
「あ゛?お前、なんて言った?」
「ダサいって言ってるんですよ。見たところ、装備品があまり汚れていない。ということは、あなたたちはそこまで戦闘をしていないということになります。だというのにこんな時間から飲んだくれてあまつさえ他人に絡みだす始末。こんな人たちが冒険者にいるなんて恥ずかしいです。」
「さっきから黙って聞いてりゃあぺらぺらと……!そんな生意気な口、二度と聞けないようにしてやる!」
そう言って、男のうちの一人がノア君に殴りかかる。
「よし、正当防衛成立。」
ノア君はそうつぶやくと、突き出された男のこぶしを躱す。そして伸び切ったその腕をとると、男の体を石畳にたたきつける。石畳は亀裂を生じさせながら陥没する。その叩きつけられた男はというと、白目をむいて気絶している。
場に沈黙が下りる。そして次の瞬間、
「「「「うおぉぉおお!」」」」
と声を上げ、残りの四人が一斉にノア君に襲い掛かる。中にはどこから取り出したのか、ダンジョン内で使うようなナイフを取り出してる人までいる。
「はぁ……。さっきので逃げてくれたら楽だったんだけど……。」
ノア君はそうぼやきつつ、一人ずつ戦闘不能にしていく。そして十数秒後には、あるものはみぞおちに重い一撃を入れられ、またある者は肩を外され、全員が地に伏していた。ノア君はそんな彼らの一人に近づくと、こういう。
「そうやって相手の強さも正しく把握できないから、ずっとDランクでくすぶってるんだよ。それにね、」
ここでノア君は一度言葉を切り、笑顔を浮かべる。しかしその目は笑っていない。
「僕、男なんだ。だから『女みたい』とか『背が低い』とか言われるの、ほんとに嫌いなんだよね。誰にケンカを売ろうと君たちの勝手だけどさ、ケンカを売る相手と言葉には気を付けたほうがいいよ。」
と言う。
しばらくして、警備隊が到着し彼らは連れていかれた。私たちは軽く事情聴取を受けた後、解放された。
── これからは、間違えてもノア君を怒らせないようにしよう。
さっきのですっきりしたのか笑みを浮かべるノア君を見つつ、私はそう思うのだった。
── ノア 視点 ──
僕たちに絡んできた冒険者たちをのして若干溜飲が下がった僕は、彼らの中のリーダーと思しき冒険者に近づいていく。
「そうやって相手の強さも正しく把握できないから、ずっとDランクでくすぶってるんだよ。それにね、」
ここで僕は一度言葉を切り、笑顔を浮かべる。正直目が笑ってないのがわかるけど、こっちの地雷の上でタップダンスしてたんだし、仕方ないよね?
「僕、男なんだ。だから『女みたい』とか『背が低い』とか言われるの、ほんとに嫌いなんだよね。誰にケンカを売ろうと君たちの勝手だけどさ、ケンカを売る相手と言葉には気を付けたほうがいいよ。」
怯えたような顔で細かく体を振るわせる冒険者にそう告げた時、
【スキル 威圧 を獲得しました】
と言うメッセージが流れる。どうやら今の一幕で威圧なるスキルを手に入れたらしい。あとでどんなスキル確認しておこうっと。
するとそこで騒動を聞きつけたのか、警備隊の人がやってくる。
「ここか……ってなんだこりゃ!」
「あ、お疲れ様です。いやー、ちょっと暴れ過ぎちゃいましたかね?」
「これはお前が?」
「はい、なんかこの人たちに殴りかかられたので、咄嗟に。あ、それに関しては周りで見てた人が証言してくれると思いますよ。」
「そうか……。はぁ……。こんなことは、3年前のあの時以来だな……。……ん?もしかしてお前、ノアか?」
「あ、はい。そうです。」
「なるほどな……。そう言うことか。……こいつらも災難だな……。まさか、一番踏んじゃいけない特大の地雷を踏み抜くなんてな……。そういうことなら、もう言ってもらって構わないぞ。」
「それじゃあ、また。ミリア、行こっか。」
このことはこれで終わった、僕はそう考え、頭の中を切り替える。早く帰ってこの鑑定スキル試したいな〜。僕は隣でミリアが僕のことを何か言いたげな目で見ていることに気づかず、意気揚々と宿へ足を向けるのだった。
作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。




