真似したがる娘との靴にまつわる約束
「あたちも、パパとおんなじおくつがいい!」
何でも真似したがる年頃だった娘は、よく玄関で俺のブカブカな革靴を履いてはそう言った。
当時、娘はまだ足元が覚束なかったはずだ。ゆえに、履いていたのはマジックテープで留めるタイプのカラフルな靴だったと記憶している。
そんな娘には、紐で調整して履く黒光りするような革靴がとにかく格好良く見えたに違いない。
「じゃあ、大きくなったら、パパと同じような靴を買ってやる」
「おおきくって、いつになったら?」
「そうだなあ……中学生になったら、かな」
「ちゅーがくちぇい? それって、なんさい?」
「十三……いや、十二歳か?」
「わかった! あたち、はやくおおきくなる!!」
あの眩しい笑顔は、今でも忘れられない。
幼かった娘はもうそんな約束を覚えてはいないだろう。
それでも、自分が覚えているなら約束は果たしてやりたい。
*****
「なあ、そのうち、靴屋に付き合ってくれないか?
ついでに中学の入学祝いにお前にも買ってやるから」
*****