助けて久我えもん!
昼からオフとなってしまった。
サンとそこまで離れるわけにもいかねえから次の町に向かうことは避けたほうがいいだろうしな……。昼から暇だな。
仕方ねえ。ツーリングするか。
私はすぐにジャケットを羽織り、ヘルメットをかぶりゴーグルをつけてバイクにまたがった。向かうはそうだな……。海のほう向かってみるか。
江ノ島辺りなんかよさそうだよな。江ノ島程度ならそこまでかからねえし、海に向かおう。
そうと決まれば……。
バイクを吹かし、江ノ島までひとっ走り。
1時間程度でついて、江ノ島のアイス最中に舌鼓をうっていた。
すると、電話がかかってくる。
前いた場所の先輩からだった。私はすぐに電話に出る。
「あいあーい。なんすかー?」
『元気でやってるか?』
「やってますけど」
『そうか。で、お前引っ越したりとかした?』
「いや、引っ越したりはしてないっすよ。そんな1日2日で引っ越すような仕事じゃないし……」
『お前がいないってさっき社長の娘からクレームあったんだが今どこにいんだ?』
「江ノ島っすけど。昼空いたんでツーリングがてら観光に」
『わかった。伝え解く。電話番号も教えていいよな?』
「お願いします!」
むしろなんで今まで交換してなかったんだ。
電話を切り、少し待つと未登録の番号から電話がかかってきた。私は電話に出ると、大地の怒声が響き渡った。
『なんでいないんですかぁ! 30分くらい待ってましたよ家の前で! ノックしても出ないし!』
「悪い悪い。昼から暇になったもんでよ、ツーリングいってんだよ。江ノ島」
『もう……。まぁ、電話番号を交換してなかった私のミスですけど……。それでなんで昼からはないんですか?』
「サンが定期検診があるって言って昼からやれないとか言ってたからよ」
『あ、もう定期検診の時期……。なるほど』
「それで私に何か用事あったん?」
『ええと、機械に不備とかないか聞きに来たんです。私の奴が少し不調だったので同じ現象が起きてないかと。大丈夫でしたか?』
「今のところそういうのはないな」
『わかりましたー。では、お土産期待してますね』
「期待してるつってもどこもってきゃいいんだよ」
『本社のほうに。私か社長の名前を出せば案内してもらうようにしているので』
「はいはい……」
私は電話を切り、とりあえず鎌倉プリンを購入すべく向かうのだった。
鎌倉プリンを購入し、帰り道を走る。セイシン製菓の本社のほうに立ち寄り、受付で榊大地さんのところに案内してくれと言って私の名前を出す。
大地さんは5階の総務にいるんだとか。かーっ。いいねえ私は下働きだってのによ。ま、そんな嫌味は置いておいて。
「うーっす。大地いるー?」
「月見さん。お土産ですか?」
「おう。鎌倉プリン。たくさん買ってきたんだけどよ、足りる?」
「俺甘いの苦手なんでいいっすよ。まず女性陣から取ったら?」
「あざーす! 大地さんの知り合いっすか?」
「知り合いっつーか工場のほうに勤務してんだけど……」
「あ、そうなんすか?」
「今は違いますけどね。社長直々の仕事をしてもらってます。彼女は優秀なので」
「それほどでも」
私はプリンをデスクの上に置く。
「本社に配属されるのを蹴り続けてるぐらいには工場が気に入ってる人ですよ」
「座って事務仕事とかが嫌なんだよ……。現場で働いてるほうが私にはあってんだよ」
「そういう人いるよねぇー」
「いるいるー。でもこっちもこっちでエアコンとか聞いてて夏場とかすごい快適だよ?」
「こっちくればいいのに勿体なーい」
「こんなにかわいい子、私たち歓迎しちゃう♡」
なんだこの総務の女性陣。めっちゃぐいぐい来る。
「んー、あ、お前久我か」
「ん? あ」
「久我まだ工場勤務だったのか」
と、デスクに座っていたのは私の同僚の九十九 春太。整った顔立ちで工場勤務だった際もものすごくモテていた。本社に勤続となってしばらく会わなかったけどこんな形で会うとは。
「今は違うけどな」
「へぇ。なにしてんだ?」
「ゲーム」
「……うちの会社辞めたのか?」
「やめてねえよ! まぁ、そういう仕事だ。羨ましいだろ?」
「……ファック」
「で、あんたは何してんの? 総務って何するところなん」
「備品整理とかだよ。ちくしょー、俺もゲームを仕事にしたいぜ……」
「ゲームを仕事にしたいんならまず社交性を身につけろアホ。お前総務でも孤立してるだろ」
というと、九十九はそのまま固まった。
「話しかけづらいから必要最低限のこと以外は話しかけてねーんだろ。無理すんなコミュ障」
「……助けてよ久我えもん!」
「うるせえ自分から異動したんだろ自分で何とかしろボケ」




