サンだけの特別なもの ①
私たちを閉じ込めていたキューブは塵と化して消えていき、私はキューブ生成という力を得たわけなのだが。
使ってみると、雷をまとったキューブが私の手の平にでき、投げつけると一定期間相手を拘束するようだ。雷のスリップダメージもあるようだ。
そして、一度私が攻撃するとキューブが消えるらしい。
「ふぅん。なかなかいいじゃん」
対象は相手一体のみという制限はあるけどそこそこ使えそうだ。少なくとも拘束は便利すぎる。
「羨ましいーーーー! 私もそういうかっこいいの欲しいです!」
「といわれてもなんで私たちがキューブに閉じ込められたかわかんないからなあ」
あそこにいた中でも私たちだけっていうのが疑問。
あれに閉じ込められてこんな力を得たわけだが、多分何らかの条件を私たち二人が満たしていたと考えるべきなんだろうな。
だがしかしだ。思わぬ収穫でサンは少し気に食わなさそう。
「ルナさんって割と運がいいですよね」
「まぁ、たしかに」
運は比較的いいほうだ。
とりあえずメミッツの町のほうまで戻る。海にはもう用事もないので。冒険者ギルドに報告を済ませて私たちはとりあえず外に出た。
「じゃあ、サン、なにかお前の特別でも探しに行くか?」
「いいんですか!?」
「ああ。何か欲しいんだろ? 一緒に探してやるよ」
私がそういうと、サンは喜んでいた。
喜んでくれるなら何よりだが。私としても心当たりがあるわけじゃない。手当たり次第探していけば何か見つかるだろという魂胆だが……。
私とサンは気力はまだまだあるが、ダイチたちはちょっと疲れが見えてきていた。ゲームといえど疲れるときは疲れるからな……。
「私とサンとで探してるからお前ら休んでおけよ。ゲームやりっぱなしだと疲れるだろ」
「そうですね……。少し休憩させてもらいます」
「あァ……。そうだな」
「ごめんね。ちょっと離脱するよ」
そういって、三人はログアウトしていったのだった。
サンは三人とは違いまだまだ元気がありふれている。若いなと思いながら、私たちはメミッツの町を歩く。
「そういうのどこにあるんでしょうか。普段、人が行かない場所にありそうなものですけど」
「だとしてもここら辺はほかのプレイヤーたちも探してるだろうしな」
人が行かない、ほかの奴が探索してない場所。
私はメミッツの町の地図を見ながら歩く。私は足元が見えてなかったのか、穴のようなものに気づかずそのまま落ちていったのだった。
落下していった先は汚い水が流れている。下水道かここは。
「大丈夫ですか!?」
「ああ!」
サンが心配そうに上の穴からのぞき込んでいた。私は大丈夫だと返す。はしごが用意されてるのでここから登っていけば出られそうだが……。
ここ、誰も探索してないよな。なぜ空いてたのかとかは知らないが、こんな広い下水道になにもないということはあるか? いやあるか。
だがしかし。私の勘なんだけどなにかあると踏んでいる。私はサンを呼びつけた。
「サン! この下水道を探索しよう」
「え? わかりました! 私もそっち行きますね!」
サンは穴から飛び降りて、着地した。
「うわ、ヘドロですね……」
「汚いけど、なにかありそうだし探索しよっか」
「はい……。匂いが分からなくてよかったです」
「ここはぜってえ臭えもんな」




