死者の町カルニベ
死者の町カルニベに向かう道には死者の谷と呼ばれる谷があり、そこに道を塞ぐボスがいるようだった。
死者の谷に着くとそれはいた。
6本腕のスケルトン。見た目が結構不気味だった。
「ボスです! 気張って行きましょう!」
「おう」
私は紫電武装を使用した。
私の身体に電気が迸る。バチバチィ!と強烈な電気を流す。
そして、力強く大地を蹴った。一瞬で詰まる距離。私はまず突進を喰らわせる。
「ええ!? なんですかそれ!?」
「お前それなんだ? スキルか何かか?」
「そう。なんか雷神になったみたいでね。それのスキル。ステータスとかアップするから重宝してる。連発はMP的に厳しいけどね」
「ほへー。そんなのあるんですか。探したら見つけられるかな……」
「くまなく探したら見つかるんじゃねえかな」
「私も発売日からやってるけど見たことないなぁ。掲示板とかでも噂程度だし」
噂程度のものだったのか。そういう噂があるってことは他に手に入れた奴がいるかもしれねえな。
とはいえ、私の一撃であのガイコツは吹っ飛んで奈落の底に堕ちていったようだった。
「おし、ボス突破だな。行こうぜ」
「呆気なかったですね」
「俺らの出る幕がねえな……」
私たちは死者の谷にかかる吊り橋を渡っていく。
死者の谷を越えた先は草木も少なく不気味な印象を受けた。まだ時刻的には昼くらいだというのに夜かというくらい見通しが悪い。
辺り一面に瘴気のようなものも漂っている。
「本当にこの先に町があるんですかね?」
「人間が好んで住みそうなところじゃないよ」
「いや、あったぜ」
町には薄暗く光が灯っている。
人間が歩いている姿も見える。私たちは町に入り、とりあえず見て回ることにした。
死者の町カルニベ。どうも不思議な町だ。こんな陰気臭い場所に町を構えること、死者の町と謳い、世に知らしめていること。謎が多い。
「街行く人の顔色もなんか悪い……」
「あまり人はいなさそうですね。ほとんど死んでるのでしょうか」
街行く人の顔を見ると生気がまるで感じられない。
「ほっほっ。お客人でしょうか。この村に客人とは久しぶりですなぁ」
「ん、誰?」
「私はこの町の長をしている者じゃ。見ない人を見て珍しくて声をかけてしまったわ」
NPCの町長が話しかけてきた。
「ねえ、この町めっちゃ不気味なんだけどなんでこうなの?」
「ほっほっ。それはここに住む者はみな罪人であるからの」
「罪人? ここは流刑の地なのですか?」
「流刑? いや違うぞい。ここは罪悪感を抱えて生きるものが行き着く町。不慮の事故や一瞬の気の迷いで犯してしまった罪。罪の意識を抱えるものが、贖罪として死者を弔いにこの町に住む。だから皆、罪人なのじゃ」
「なるほど……」
罪悪感か。
人を殺してしまった罪悪感とか、そういうのか。
「あまり名物はありませんが、楽に過ごしていくださいな。ただ……あそこに見える白い塔に行く場合は注意なされ。あそこにはアンデッドが湧くからの。ま、この町の周りにもアンデッドは湧くがな」
「あの塔……。うわ高」
「あの塔は死者の塔……通称ヘヴンズタワーと呼ばれておるのじゃ。私らが住む前より、はるか昔から存在する謎の建物……。私たちは天国に繋がっていると考えている。あそこに挑戦する者も多々おるが、帰ってきた者はおらん」
「中で死んでるってことですよねそれ」
「そうじゃな。まぁ、神の加護があるお主たちならば復活は容易じゃろう」
そう言って町長は立ち去っていった。
あの塔は天国へ通じてる、か。あれに挑む者も多い。死者に未練があるからこそなんだろうな。
「……私が死んだらアレで私に会いに来れますかね?」
「サン、あまり縁起でもないことを言わないでください」
「えへへ。ジョークだよジョーク」
「私が死んだらアレで会いにこいよ」
「お前はどっちかというと地獄行きだろ……」
「おいコラどういう意味だ」
私はツクモを締め上げる。
「まぁ、とりあえず死者の町の探検に行こうよ! アンデッドだらけだと思うけど、ルナちゃんが手に入れた雷神みたいなのがあるかもしれないし!」
「だな。とりあえず……朽ち果てた墓地ってところに行ってみようぜ」
「……いかにもでそう」
「出るでしょうね。あまりホラーは得意ではないのですが……」




