昇格試験
翌日、私はサンと、そしてダイチと合流した。
「お姉ちゃん仕事しながらで私のペースについてこれてないじゃん……」
「大人は仕事しなきゃならないんです」
「そうなんですか? ルナさん」
「仕事してねえ大人も世の中にはいるから十人十色だな」
私がそういうと少しは嘘をつきなさいという目を向けてくるダイチ。
そんな嘘を教えて絶望させることねえだろ。働かなきゃ金を手に入れる手段が限られるってだけだぜ。
「で、どこいくんです?」
「冒険者の昇格試験を受けたいの」
「あー」
「なんですかそれ」
「…………もうダイチ置いてけぼりでもいいんじゃねえかなぁ」
「ですね……」
「えぇ!? 私だけ除け者扱いやめてくださいよ!? 私も必死に頑張りますから!」
「だけどよ……」
「……父に頼んで」
「説明しよう! 冒険者とは……」
そこで父を出してくんのは卑怯だろこの野郎……。私は所詮雇われの身だってのによ……。
私はとりあえず冒険者のこととかを説明した。昇格の仕組みも教え、私たちはあと二つクリアすれば昇格ってことも。
「なんか昇格とか聞くと会社員としては嫌ですね」
「お前社長令嬢なんだからコネでなんとかなんだろうがよ……」
「…………一般論としてです」
「一般論としてもそこまで嫌じゃねえんじゃ……。いや、たしかに嫌か……」
「私の会社は昇格したら給料上がりますけどね、他のとこだと仕事増えて給料が増えないってことがザラですから」
「責任ばっか増えて自分の時間も金も増えねえもんなぁ……。たしかにそう聞くと嫌だわ」
「あのー……大人の嫌な部分を聞かせないでもらいたいんですけど……」
サンには早い話だったな。
「まぁ、私も手伝いたいです。二人の足手纏いにならないようには気をつけますので」
「おう。ゲームは楽しくやってこそだからな。私らあと三つやってねえ依頼あんだろ? それやったらダイチも昇格出来るだろ」
「ですね。薬草詰みとキノコ狩りと鬼バッタの討伐でしたっけ。それやりましょう!」
ということでまずは簡単なものから終わらせていく。
薬草詰みは3人で30個集めればよく、ギルドの人に自生している場所を教えてもらってすぐ終わった。
ついでに森の中に入りキノコを採取。採るキノコはカタタケというキノコ。見た目は松茸に似てるらしいが類似種としてカタタタケがあるらしい。どっちも毒ではないがカタタタケは採取しないでもらいたいとのこと。
カタタタケは笠が開いてる、カタタケは笠が閉じてるで覚えればいいらしい。
ややこしいわ。
「サン、それはカタタタケですよ」
「えっ!? あ、ほんとだ……」
「ルナさんもです」
「まじ? こんだけ笠閉じてるからカタタケじゃねえの?」
はっきり言おう。わからん。
笠が開いてるって覚えたが、割と誤差の範囲。舐めてんのか。地雷クエストかこれは。
「あー、キノコ集まんない〜!」
「だいったいカタタタケじゃねえか……」
「お姉ちゃんよく見分けつくね……。採るまで鑑定効かないしむずいよ〜」
「分かりやすいと思いますよ? ニラと水仙くらいの差ですし」
「いや、ニラと水仙も似てんだろ……。毎年のように事故あんだぞ」
ったく。
なんとか集め終わり、あと残すは鬼バッタのみとなった。鬼バッタはリマジハの平原で低確率で出現するらしい。ちょっとでかいバッタの魔物。
リマジハの平原で魔物を狩りながら出現するのを待った。鬼バッタは1匹仕留めるだけでいいらしい。
「お、出たぜ」
「ちょっとかかりましたね……。えいやっ!」
サンが剣で切り裂いた。
そして。
「おめでとうございます! お三方は進級試験を受けていただき、合格できたらEランクとなります! 試験を受けますか? 試験は個人で行います。何度でも受けることはできますが、1日1回のみとなります」
「おう、うけるぜ」
そういうと、紙が一枚目の前に出される。
私の前に出されたのは豚を思わせる顔をした二足歩行の獣だった。
「オークか」
「はい。それぞれこの紙に描かれた魔物を討伐してきてください」
「わかった。サン、少し別行動だな」
「はーい! 頑張ります! じゃ、いってきます!」
「おう」
サンは意気揚々と歩いて向かう。
「……ダイチ」
「じ、自信ないです……。1人だなんて……」
「落ちたら明日受けりゃいいんだよ。私も行くな」
「えぇ……」
オークか。まずは生息域を調べないとな。




