コミュ障以外は完璧なんだけどなぁ
九十九に泣きつかれ、私ははぁと溜息を吐く。
「じゃあお前も仕事終わったらゲームやって社交力身に着けてみりゃいいじゃん。ネット越しなんだからそこまで怖くねえだろ」
「……うん」
「今日の夜一緒にやってやるから……。しゃあねえなぁ」
九十九は私にやっているゲームとかを聞き出してくる。
リジェクトギャラクシーということだけ教え、最初の町の一番大きい広間でルナという名前で待っているとだけ告げて帰ることにした。
「お前、その恰好似合うよな」
「だろ? 惚れてもいいぜ」
「ほんとに似合ってるわねぇ」
「バイクにまたがるイケメン女か……。ありだな」
総務の人がなんかお見送りに来たんですけど仕事いいんですか。
私はバイクにまたがり自分の家に戻ることにした。我が家に戻り、鍵を開けて荷物を放り投げて、5時まで待つことにした。
あと1時間。セイシン製菓は5時が定時で残業は今日はないと言ってたしな。うちの会社超ホワイト。まじで残業時間の少なさったら……。福利厚生とかちゃんとしてるし、セイシン製菓に就職できたのは幸いだな。
私は5時にアラームをセットして少し目をつむる。
そして、アラームの音で目を覚まし、私はゲームにログインしたのだった。
ギノツ町で最後にログアウトしたので、私はそこからだ。
リマジハの町に戻り、私は大きい広間のベンチに腰を掛けて九十九がやってくるのを待つ。30分後、ようやく九十九がログインしてきたのだった。
「よぅ。待たせたな」
「ほんとに待ったよ。で? お前リアルモジュールにしたのな」
「ああ。見た目だけはいいからな。性能は置いておいて」
「それ自分で言うなよ。悲しくならねえ?」
「事実なだけに悲しくはならんな。で、ルナと呼べばいいのか?」
「そう。あんたは……ツクモ。お前リアルネーム使う派なのな」
「まぁな。九十九って苗字珍しいし基本バレねえだろ」
「たしかに」
あまり見かけない苗字なだけリアルでそういう名前とはバレづらいか。
「……で、どうしたらいい?」
「敵とばとってやるんだが……。他人と関わるんならまず隣町の冒険者ギルドで登録して即席パーティとか作ってみてもいいかもな」
「……」
ツクモは私の腕をぎゅっと握る。
「言葉だけで怖がんなよ……」
「人と話すと考えたらなかなかきつい」
「お前顔がいいんだから話しかけられる側だろ普通。受け身の対応していろよ」
「受け身の対応はしてるさ。でも話が続かねえんだよ……」
「お前顔はいいのにそういう浮ついた話ないのその性格だよな」
顔がいいコミュ障ほど生きづらいだろ。
こっちからはあまり話題を振れないのに相手からぐいぐい来るものだから困るしな。こいつの買い物はネットでやってるけど、町に出るときいつも誘われてんだよな……。私を彼女に見せかけて回避してる。そのたびになにか奢らせやりをとりお
「とりあえず人と話すことは置いておいてよ、戦ってみろよ。ゲームの醍醐味は戦いだから」
「……わかった」
「強くなけりゃあパーティ組んでくれるやつもいねえだろうしな。武器は?」
「槍だ」
ツクモの背丈くらいの槍を取り出し、振り回していた。
槍はリーチがある武器だが、基本的に攻撃が突きと薙ぎ払いになる武器だ。少々扱いづらいと思うが初心者にこれはいいのか?
まぁ、見てからだな。
私は平原のほうに移動し、ツクモの戦闘を見届ける。
私の批評としては。
「戦闘は難なくこなせる。お前コミュ障以外はだいたい完璧だよな。そこがむかつく」
「褒めてんのか?」
「褒めてる」
ほんとにこいつは……。
これで私以外の人と話せればいいんだが。というか、なんで私なら気兼ねなく話せてるんだよ。友達フィルターか?




