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100万回生きた転生者 SS

作者: 和谷幸隆

カナタは転生者だ。


ただの転生者では無い。死ぬたびに転生を繰り返していた。


ある時は村人として普通の人生を過ごした。


ある時は商人として転生前の知識で大儲けした。


ある時は勇者として魔王を倒して世界を平和にした。


王様になったある時は奴隷を開放し種族の差別を無くした。


また別の時は戦争やクーデターで殺された。


盗賊になった人生もあった。


田舎でスローライフをしたこともあった。


男性だったことも女性だったこともどちらでもなかったことも、


エルフだったこともドワーフだったことも魔族だったこともあった。



でもどの人生でも、転生者として繰り返した人生での知識や力が分かると、


利用しようとするものや助けを求めるものばかりで、


どの時代のどの世界もカナタは好きになれなかった。


だから死ぬことも平気で慣れてしまっていた。



そこでカナタは誰のためにも生きず、自分のためだけに生きようと考えた。


盗賊に襲われている人がいても助けなかった。


貧困や奴隷制度も見て見ぬふりをした。


魔王が人間を滅ぼそうとしていても見ているだけだった。


世界が終わる瞬間もじっとして自分だけ転生した。



そんな繰り返しの人生で、


なんとなく寄った名前も知らない町でなぜだか気になる女性がいた。


口説こうとしたがこれまでの転生で得たあらゆる知識も経験も役に立たなかった。


地位も名誉も財産も。その女性には何も通用しなかった。


今までの人生ではもっと綺麗な人も、もっとスタイルのいい人も、


もっと性格のいい人とも出会ったに違いなかった。


でも、カナタはその女性からなぜか目が離さないのだった。


カナタはその女性の近くにできる限りずっといた。


気づくと女性もカナタが一緒にいるのがあたりませになっていた。


子どもが出来て、そして立派な大人になって、孫ができてひ孫もできた。


そんなある日、女性は自分の子どもや孫たちに看取られて息を引き取った。


「死なないでくれ!あなたがいなくなったら私はどうしたらいいんだ?」


「生まれた時から生きられるだけ生きて、終わりが来れば終わるだけ。」


「短い人も長い人もいるけれど、みんな同じですよ。」


「私は違うんだ・・・私は、、、、」



カナタはいままでの繰り返した人生で流した涙よりも、


ずっとたくさんの涙を流して泣いた。


そして最後にカナタも息を引き取った。




「・・・・また私だけ。」


カナタはまた一人転生していた。


それからカナタは何度も何度も転生した。


でも何をしたのか、どうやって生きたのか覚えていなかった。


100万回は生きたあるは、カナタは見つける。


「!」


「あなたも・・・転生したんですね!」


何万、何千万年ぶりに心から笑えた気がする。


「そうね。終わりが来るまでは生きようと思うわ。」


「ずっと一緒に生きられるように不老不死になる方法を見つけよう!」


「ずっと一緒に?面白そうね。では探しましょう。競争よ。」



二人は世界中を探して回った。


そして何十年ぶりか、顔を合わせた。


「ようやく見つけたんだ!これでずっと一緒にいられるよ!」


「そう。私も見つけたの。」


「そうなんだ。二人とも見つけられるなんてすごいね!」


「私のから試してもいいかしら?」


「勿論!」


女性が飲み物を二人のグラスに満たす。


二人同時に一気に飲み干した。


「何か変わったのかな?」


「どうでしょう。もうすぐわかるわよ。」



女性はゆっくりと倒れて息を引き取った。

カナタは絶望しかけたがカナタもゆっくりと倒れていった。

もう二度と転生することは無かった。

二人は一緒に横と横たわっている。

永遠に目覚めることは無い。

ずっと一緒一緒。

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