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17  奇跡の『あーん』


村に響いた大きな音。

それをドラゴンの咆哮と村の皆さんは思っていたようですが、そうではない可能性は高いです。


だから、一刻も早く確かめにいきたい。しかし現在、もしもの場合に備えて、建物内に避難しています。


ハルさん達は公民館となるところを借りきって、現在は住んでいる。

そこに、ハルさんが私専用のお部屋も用意してくれました。

今、そこで待機しているのですが・・・。


ドラゴンの危険がないか確かめてから、外出せずに待ってて欲しいと言われて既に、二時間はここに待機しています。


その時扉がコンコンとノックされ、続いて「第二近衛騎士団団長のゴウラとミュラホークです、入室の許可をお願いします」

と声が聞こえました。


「は、はい、どうぞ。お入り下さい」

私は見知った方がいらしたので、ホッとしました。


でも、入ってきたゴウラさんとミュラホークさんは形式ばったご挨拶から始めます。


「入室許可を頂きありがとうございます。私は宮殿で近衛騎士の第二団を纏めています、ゴウラと申します、以後お見知り置き下さい」


ゴウラさんは私の顔を見ずに、頭を下げたままだ。

どうしたのかな?

固い表情のゴウラさんに私もご挨拶をした。


「ええ、もちろん存じあげております・・・あの・・髪の毛の色を変えていますがアルルーナです。先日は宮殿でお世話になりました」


二人は目をすがめて私を凝視して3秒。


「ああ、やっぱり!そうですよね? マイヤー公爵令嬢のアルルーナ様ですよね?」

気の抜けたような声で、ミュラホークさんがホッとしていた。


パウラの推しが色んな表情をしている。ここにパウラがいたら、卒倒するくらいに喜んだのに、いなくて残念です。


「あれ・・・? ここにはアルルーナ様の侍女の子がいると聞いてたのですが・・」

ゴウラさんは顎に手を置いて、うーんとお悩み中です。


「ああ、それは図書館司書のハルさんにお聞きになったのではないですか? それ、実は私なんです・・・」


もうこうなってしまっては、嘘をつき通すことは出来ないと観念し、私は侍女に変装して図書館に出入りをしていた事を、お二人に打ち明けた。


ゴウラさんとミュラホークさんはお互いの顔を見合わせて、なんとも困ってるような、それでいて苦笑いのような不思議な顔で黙っている。


「あ、あの、・・・やはり15歳になっていない貴族の子が、帝国図書館に出入りしたのは、そんなに重罪なのでしょうか?」


二人の様子がおかしいので、私はどんどん不安になる。


「いや、それは魔力のない子を守るためのルールであって、罰則はないですよ」


ゴウラさんが私を怖がらせないように、ゆっくりと説明をしてくれた。


ほー・・良かったぁ。罰はないんだと安堵のため息をつく私に、二人が更に困惑の表情を見せる。


「いやー安心するところはそこではないのですが・・」

ゴウラさんがうーんと再び思案顔になった。


「それにしても良かったじゃないですか、団長。私達はアルルーナ様以外の人を守れと言われた時は、本当に困惑でしたから、考えてみたら本当に良かった。ねぇ、団長」


「おお、そうだな。これぞ、終わりよければすべてよしだ」


うんうんと二人は妙に納得しているが、私には何の話しか全く分からない


「そういうことなら、アルルーナ様がその図書館司書の『ハルさん』とやらに、じかに経緯をお話をしてみて下さい。私共から話をすると、こんがらがってややこしくなりそうなので、頼みましたよ」


「ああ、よかったよかった」

ミュラーホークさんは、今日の仕事を終わったようなお顔で、手を広げて深呼吸をする。



「一安心だな。一時はどうなる事かと思ったよ。陛下に何て報告をしようって、脳みそが沸騰しそうだったぜ」

二人は焦りで凝った肩をまわしながら出ていく。


何だったのだろうか?


とにかく罰則はなく、ただのルール違反ならば、バレたとしても家族には迷惑はかからない。

それなら、ハルさんに言っても大丈夫よね?


それに仲良くなったハルさんに、いつまでも嘘をついているのが、心苦しくて辛くなってきてたのです。


よし、きちんとアルルーナ・マイヤーだと自分の正体を話して、騙していたことをお詫びしよう。


・・・騙していたことでお友達をやめると言われたらどうしよう。

そうなったら、初めてのお友達なのに辛すぎる・・・


でも、嘘をついたままはいけないわ。

両手でパンッと頬を叩き、気合いを入れます。


「よし!!」と奮起した気持ちのままでハルさんのお部屋にいこうとしたら、その前に凄い勢いで扉が開いて侍女のパウラに抱きつかれた。


一瞬の早業に、何が起こったか分かりませんでした。


「やっと会えましたー!! お嬢様があのハルってのに連れ去られたと聞いた時には、自分の首を絞めたくなりましたわ。無事に再会できて良かったです」


パウラに物凄く心配させてしまったようです。


「ごめんなさい。パウラにきちんと説明しないで勝手に出発して悪かったと反省しています。本当にごめんなさい。それから、ハルさんに連れ去られたわけではないのよ。私も行きたいと思っていたから・・・」


相変わらずの言葉足らずの説明だったけど、何とかパウラに理解して貰えたようでホッとひと安心です。


ちょうどその時、騎士隊隊長のアーロン・カネトさんが、北に向かう準備が出来たので迎えに来てくれました。


まだハルさんに私がマイヤー公爵の娘だと告白していないのに・・・どうしようと迷いましたが、ここに来たのは村の存続がかかった重大な調査です。


まずは調査を優先させて、ハルさんへの報告は、きちんと後にしようと、自分に言い訳をして私は告白を後回しにしちゃいました。


だって・・少しでも嫌われるかもしれない行事を遅らせたかったんです。


とにかく急ぎなので、アーロンさんと出掛けます。

何と、残念ながらパウラはここでお留守番を言い渡されてしまいました。

いざ、ドラゴンが出たときに護衛対象が少ない方が良いそうなのです。


パウラは猛抗議をしたのですが、却下されてしまいました。


近衛騎士団のゴウラさんと一緒に出掛けられると思っていた彼女は、気の毒になる程肩を落として落胆していた。


でも、あの地響きする音が本当にドラゴンの咆哮だった場合、ここに居てくれた方が安心です。


公民館予定の建物から出ると、アーロン隊長率いる第一騎士隊の他にも第二近衛騎士団も揃っています。

その先頭にハルさんが居て指揮をしています。


???


図書館の司書さんは、そんな事までするのでしょうか?


きっと道案内をしているに違いないと私はその違和感をゴックんと、再び飲み込んでしまった。


ハルさんは後方に私がいるのを確認すると、遠目でも分かるくらいに、眩しい美丈夫スマイルを私にくれる。


あれ?

体の奥がぎゅっとなりました。


私ったらお腹が空いたのでしょうか?

それとも、消化の悪い物を食べたのでしょうか?


何故か胃がグッと苦しくなりました。ハルさんの爽やかな笑顔に、お腹があたったのでしょうか?


腐った物を食べて、お腹があたったとは聞きますが、笑顔でも当たるのでしょうか?


謎の食あたりを気にしながら、私はアーロン隊長さんと一緒に乗馬して整備されていない道を行く。


私が地図上で指し示した場所は、直線距離ならすぐのところなのですが、何せ未開の地ということもあって、足場が悪くその日はたどり着けなかった。


そこで一旦夜営する。


もう二回目なので、騎士隊の料理担当のマイケルと一緒に夕食を作る。

いつものハルさんなら、すぐに私の近くに来るはずなのに、テントの中から出てこない。


どうしたのかな?

忙しいのかな?


イタタ・・。

何となく、気になって考えていると胃酸が出てくるような胃もたれがする。

今日の私は、胃の調子が良くない。


皆さんに出来たスープを配っていると、近衛騎士団長のゴウラさんが、私にボソッと尋ねる。


「あの、『ハルさん』にあなたの事を伝えて頂けましたか?」


ハッとする。

うっかり忘れてました・・・。


「その様子じゃまだですよね。その食事を『ハルさん』に持って行くついでに、(アルルーナ)の話もして貰えませんか? あのテントで今回の視察に関わる仕事をしていて、まだ食事をとっていらっしゃらないのでお願いします」


私はゴウラさんに教えて貰ったテントに食事を運ぶ。

でも、いざテントまで来ると自分が公爵令嬢だと伝えるのが恐ろしくなった。


嫌われるのではと思うと、口内がカラカラに乾く。


ダメだ。せっかくのスープが冷めてしまう。

テントの外から中のハルさんに声をかけた。

「あの、ハルさん。お食事をお持ちしました。中に入って良いですか?」


「え? ちょおっ」

ガタッッ!!

バサバサッ・・・ゴン。「うっ」


テントの中が大騒ぎになっているわ。

「ハルさん、大丈夫ですか? 入りますよ」


テントに入るとハルさんが一人で暴れたのか、書類やらペンやらが散乱していた。


「どうしたのですか?」

どうやったらこんなに散らかるのだろう?普通に転んだとしてもこんなにはならないよね?


いつものハルさんからは想像出来ないくらいの慌てっぷりに、何だか親近感が湧きます。


テーブルに持ってきた食事を置いて、私はハルさんと一緒に散乱しているテント内の片付けを手伝った。


テントの明かりがハルさんの瞳と髪の毛をゆらりと照らす。


いつもはしっかりとした赤色なのに、今のハルさんの髪の毛の色は暗い色に見える。逆に瞳の色は赤よりももっと明るい朱色だ。


「ななな何? 何か変?」


ハルさんは私と目が合うとしきりに自分の髪の毛を触りだした。

ハルさんてそんな女子みたいな仕草してたかしら?


「なんでもないです。それより早くご飯を食べて下さいね」


ハルさんがプレー卜に乗った簡素な食事を、まるでA5ランクのステーキ肉を見るように目を輝かせて見ている。


「ルーナが作ったんだよね?」


ハルさんったら、今にもご飯に飛び付きそうにご飯と私を見比べた。


「はい、マイケルさんと一緒に作りました」


マイケルさんの名前を出したのは良くなかったのでしょうか?

先ほどまでの『待て』をしている犬のようにご飯に集中していたハルさんから、食欲が消えたみたいに表情がスンと無くなった。


「マイケルさんは、お料理担当をして中々の腕前です。だから味は本当に美味しくて、保証しますよ」


騎士さんのご飯だから、ザ・男メシって思ったのかも知れませんが、マイケルさんの料理はきちんと味付けをされていて美味しいのです。


それを伝えたのですが、ますますハルさんのお顔から表情が消え失せ、何だか歪んできてます。


どういう感情なのか全く理解できないので、とにかく食べて貰うことに専念しようと思います。


そこでパンを一口サイズにちぎって、「はいっ!」と差し出しました。


ハルさんは一瞬戸惑いを見せた後、口でパクっと食べた。


「ぬお?」

私、変な声を出して固まってしまいます。

だって・・・

勿論ここはハルさんが手で受け取ってくれるものと思っていたのに、まさかそのままお口で食べるとは思ってもいませんでしたもの。


これはリアルで充実しているカップルが行う『あーん』ではないですか!!


私にも『あーん』をする日がやって来るなんて思いもしなかったです。


これは・・・

これは・・・奇跡?・・


動揺激しい私に、ハルさんは二度目の『あーん』を期待して待っている。

一度目は計らずもやってしまいましたが、自覚しての『あーん』は上級者しか出来ませんよ!!


ハルさんの期待の瞳が、迫って来る・・。

これ以上ここにいる事は、無理です!!!


と思った瞬間、テントを飛び出していました。


今まで低燃費で動いていた心臓が、近頃はドキドキすることが多過ぎてしんどいです・・・。


遅い時間の投稿になってしまいました。

すみません。

(;>_<;)

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