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コンコルドプレイ ~世界滅亡の夜に教祖様と祈りを捧げる~

作者: 安藤ナツ

『三人寄れば文殊の知恵』と言うが、昨今の社会においてこの格言が当てはまらない場合も少なくはない。大抵の場合、人間が集まっても建設的な話し合いが行われることはなく、もっとも声の大きな人間の意見に従うことが殆どだ。

 稀に議論が発生したとしても、それは対立を煽るだけで相互理解を深めるなんて言うのは幻想でしかない。真実はいつも一つだが、解釈は人それぞれに委ねられているからだ。そして、人々は自分が選び取った意見や自身の正義を絶対視し神聖視する。その正義がたとえ間違っていたとしても、人はそれを認めない。誤った価値観を守る為に人々は平然と不合理な判断を行い、時には他者を傷つける事すら厭わない。

 私がそんな虚しい現実を知ったのは、高校二年生の冬だ。満月が夜空に映える寒い夜のことで、やはりと言うべきか自由ヶ丘利人が事の発端だった。いや、別に利人が原因と言うわけではないのだから、この言い方は言いがかりになるか。今回の私達は徹頭徹尾の傍観者であった。


「なあ、世界が滅びるのを見に行かないか?」


 年末の忙しい時にアポもなしに私の家にやって来た利人は、シニカルに笑いながらそう提案した。

 私の返答は当然シンプルに「は?」だった。


「近所のおばさん達が言うには、今日、月が落ちて来るんだってさ」

「月が? なんで?」

「“月の女神の悪魔”が愚かな人類に裁きの鉄槌を下すんだ。必見だろ?」

「は?」


 普段は頼んでもいないのに鬱陶しいくらい説明魔な癖に、説明が必要な時はどうしてこんなに言葉が少ないんだよ。って言うか、台詞の量と情報量があってないんだが?

 

「あのさ、わかりやすく教えてくれる? できれば手短にね」

「ああ。だが、その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ?」

「宇宙規模の話なの!?」


 いや。月が落ちて来る異常事態なのだから、その話のスケールになるのは当然なのだろうか?


「最近、ちょっと離れた住宅街に奇妙な集団が噂になってる。総勢は二〇人くらいかな? コミュニティの中心人物は、一人の主婦だ。直接面識はないが、小太りで、声が大きく、常に怒っていて、人間的な魅力に欠け、できれば近寄りたくない女性って感じだったな」

「はあ。それで?」

「そのおばさん――便宜上“教祖様”とでも呼ぼうか? この教祖様は、気の弱そうな女の人を見つけると、色々とお節介を焼いていたそうだ。別に大した話じゃあない、洗剤が安い店を勧めたり、子供の弁当に入れるおかずだったり、あの家の奥さんは窃盗癖があるから距離を置いた方が良いとか、そういう話をするらしい」


 ここまでに宇宙要素ある?


「教祖様はパート先や町内、学校の保護者会で余計なアドバイスを繰り返し続けた。そして、気が付けば彼女の元には二〇人近い女性が集まっていたみたいだ」

「ん? その教祖様のアドバイス適切だったって話?」

「いや。そうでもないらしい。そもそも、どうでも良いアドバイスが殆どだったみたいだからな。そのアドバイスが元で人生が変わった! みたいな人はいないんじゃあないかな? そのやり方も、上から目線で押しつけがましく、恫喝するようだったって言う人もいた」


 それで人が集まるのだろうか?

 実際に集まってしまったらしいのだから、それで人が集まるんだろうけど、納得できない話だ。


「ただ、アドバイスを受け入れた人には優しかったらしい。気の弱い女性達は友人関係が希薄でもあったらしく、何かと親身になってくれる教祖様に徐々に依存していった」

「なるほど。飴と鞭的な?」

「それに加えて、彼女達はアドバイス通りに行動することにある種の安心感を抱いていたみたいだ」

「安心感?」

「人は決断することが致命的に苦手だ。だから、出来れば他人に何かを決めて欲しいって人は多い。そう言う人は、誰かに言われたまま行動するって言うのが簡単に癖になってしまう」

「そういう物?」

「そういう物だ。学生的に言うなら、自主的に勉強するのは面倒な奴でも、教師に言われた宿題だったら嫌々でも勉強するだろ? 人に言われたことをやるって言うのは、行動への心理的なハードルを下げるんだ」

「まあ、その気持ちはわかるけどさ。でも、勉強しない奴はしないでしょ」

「宿題をしないって言うのは、ある意味才能だよ。だから、言われたことに逆らえない気?%A

本当は反ワクチンの話だったんですが、現実の方が面白いのでそっちはボツにしました。

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