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赤と青の液体、どちらかで即死!

作者: 栗色マロン

私としたことが完全に油断していた。さっき飲んだお茶に一服盛られたらしい。

突如として吐き気がこみあげてきたかと思うと、頭が割れるように痛くなってきた。


「俺はアキコが浮気をしていることを知っている。そして相手はお前だと思っている。」

サトシは蔑んだ目で私を見ながら、淡々とした口調で話す。


「ただ残念ながら確たる証拠は持っていない。だからお前の命は運命に預けることにする。」


私とアキコが付き合っているのは事実だ。

サトシは私の親友でもあり、申し訳ない気持ちはあった。

だが二人が付き合い出す前からアキコは俺にとっても大事な存在だったし、アキコにも同じ思いだったと言われた。


親友に隠れて、その彼女と密かに逢瀬を重ねる。そんな後ろめたさもあって、余計に盛り上げってしまったのだから始末に悪い。だがそれも今日ついにばれてしまった。


「お前がさっき飲んだのは遅効性の毒だ。効き目はゆっくりだが確実に死に至る。」

サトシは冷たく言い放つ。

「だがここにある液体のどらかが解毒剤だ。選択を誤らなければ、お前は助かる。」

サトシは、赤と青の液体を指さしてこう言ったのだった。


「解毒剤じゃない方を飲んだらどうなるんだ?」

私は割れるような頭の痛みと戦いながら聞く。

「もう一方には毒が入っている。そいつは即効性だから一瞬であの世に直行さ。」


――――――――――――――――――――――――


いよいよ意識が朦朧としてきた。

今決着を付けないと、数分後には手遅れになってしまいそうだ。


私は赤の瓶を手に取った。それは鮮やかな赤というよりは、少し黒味がかった赤で、どす黒い血の色を連想させた。この瓶を飲んだ途端、この色の血を吐くのかな。私がサトシの顔をぼんやり眺めていると、奴は口元に冷たい薄ら笑いを浮かべたかのように見えた。


続いて私は青の瓶を手に取る。それはサンゴ礁の海の色を連想させる鮮やかな青で、心臓の高まりも収まり、高揚した気持ちも穏やかになっていくのが感じられる。サトシの口元も今度は少し引き締まるのが見えた気がした。


だが待てよ。青には浄化という意味もあるらしい。飲んだ私が浄化されてしまったら、一巻の終わりではないか。それだったら情熱の赤、生命力を彷彿とさせる活力の赤の方が命を繋げるのではないか。


私には分からなくなってしまった。決められない。

だがタイムリミットは確実に迫ってくる。


「あなたのイメージって、本当は赤なんじゃないかな?」

突如として彼女の声が蘇ってくる。それは好きな色を聞かれて、青と答えた時のことだった。


「穏やかで冷静に見えるんだけど、実は熱い闘志を内に秘めてる情熱的な男!なんてね。」

アキコの言葉を聞いて、自分自身を見つめ直したこともあったっけ。


結局のところ、私は彼女の言葉に賭けてみることにした。

赤い液体の入ったコップを手に取り、一気に飲み干す。

破滅の瞬間に怯えながら、じっと耐えていた私は、ようやく顔を上げて歓喜の声を出す。

「やった助かったぞ!」

サトシの口元に浮かんだ薄ら笑いは、いつのまにか凍り付いている。


――――――――――――――――――


私は大学の食堂で一人遅いランチを食べている。

下宿で食べた朝食が、あやうく最後の晩餐になるところだった。

やはり彼女は私にとって幸運の女神なんだ。大切にしなくちゃ。

彼女のことを思うと、胸が熱くなる。


すぐ後ろの席で二人組の女子大生がコソコソと噂話に花を咲かせていてる。

「アキコったら、また男を変えたらしいよ。」

「えっー、また?!ついこの間、青から赤に乗り換えたばっかじゃん?」


「クールで情熱家っていうコンセプトに暫くハマったらしいんだけど、実際はただのチキン男なんで早々に飽きちゃったんだって。次の男は緑らしいよ。」

「マジでこりないよね~。ところで何で男のことを色で呼ぶの?」


「深い意味は無いらしいよ。名前を覚えるのが面倒くさいから、適当に色を割り振ってるんだって。」

所詮女には敵わない。



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