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天界の瑠璃 外伝  作者: 上杉 真
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律子 菩薩への転生

天界では釈尊が深甚なる法を説き続けていた。律子のいる天界は、菩薩界・仏界が渾然一体となった五色光明輝く世界であった。釈尊はいかなる修行を全うすることによって、娑婆世界における衆生がこの世界に生まれることができるのか、説き示していた。「善い哉、善い哉、菩薩摩迦薩、そして、天人たちよ、御身らは、生老病死の苦しみをこの世界においては超越している。ここにおいては、その苦しみを受けることはない。しかし、娑婆においては、我も久しくその苦しみを観じ、輪廻からの解脱を志し、出家して沙門となった。娑婆は生老病死の苦しみに満ちている。生きる苦しみ、老いる苦しみ、病、そして死。その苦しみに加え、善根を積まなかった者は、また苦しい娑婆世界へと輪廻せねばならない。仏出世の本懐は、一切衆生を成仏せしめんが為。我もまたその本懐を成道するため、娑婆において仏となり、法を説き続けた。我と共に修行を全うし、また、善根功徳を積んだ者は、今ここにおいて、我と共にある。しかしながら、法を聞き漏らした者にも、成仏に至る道をつけおいた。今においてもわたしの説き残した教えを娑婆において一心に修行する者たちがいる。汝ら、修行の根本である教えとはいかなるものか?答えるが良い」釈尊が宣うた。「釈尊よ、それは、六波羅蜜でございます」。多聞第一の阿難が答えた。「善い哉、善い哉、その通りである。それを解説できる者はいるか?」釈尊が再び問うた。阿難はじめ、菩薩摩迦薩たちは、重々に解知していた。阿難に促されて、末席の律子が釈尊に尋ねた。「釈尊よ、六波羅蜜とは如何なるものなのでございましょうか?」「善い哉、善い哉、それは、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧である。世の中には、自らは贅沢をして、他に施さない者がいる。これはまさに第一に捨て去るべきである。また持戒とは、無駄な殺生をせず、妄語・両舌・悪口あっくを言わず、邪淫・淫らな邪を避け、物心の盗みを犯さず、酒に酔って、他人を悩ませないことである。自らを律し、他人の侮辱にも耐え忍び、怒りの心を起こさず、常に御仏を祈る禅定によって、他の幸せを願い続け、奉仕実践の精進に徹することである。また、智慧とは、世間的な知恵をいうのではない。知識がいかほど多くとも、それは智慧とは言わないのである。真の智慧とは、布施より禅定に至る修行によって得られる観念を超えた法悦体解たいげの喜びに溢れた智慧である。それは体認によって知る世界で、ひとつの神通とも言えるであろう」。釈尊が律子に宣うた。「釈尊よ、そのような修行が果たして煩悩具足の衆生にできるのでありましょうか?」律子が再び釈尊に問うた。「善い哉、初めは、煩悩に惑わされ、全うする事は難事であろう。しかしながら、貫く意思をもって、漸次、修行する事によって、最後の智慧にまで至ることができるのである。輪廻を超えたこの世界に生まれる為には、この修行は欠かせないのである。律子よ、このように言えば、難しいこともあろうが、決して難事なことではない。心柔軟にして、自らの罪を知り、懺悔と感謝の心を持ち、他を慈しむ心と他の悲しみを知る慈悲の心を持つことである。人は、時には他の喜びに涙し、他の悲しみに涙するであろう。それが仏の道に通ずる体解の智慧である。そして、やさしく、あたたかく、他に仕え、人を支える衆生は、まさしく六波羅蜜の修行に通ずるものなのだ」。釈尊が律子にやさしく説き示した。「そうなのでございますね。出家修行者だけができる修行かとも思いましたが、在家の者にもできることなのでございますね」。「善い哉、その通りである。奉仕の生活を願い、他を救け、徳を積む者は、漸次、菩薩の境涯へと至る事が出来るのである。その者は、もはや六道に輪廻することはなく、菩薩界・仏界へと至ることができるのである」。釈尊は妙なる方便をもって、律子に示し給うた。確かに過去世において、律子は、出家者・尼僧として修行した過去はなく、在家の身として、実生活で善根を積んだ功徳によって、この微妙安楽な世界へと身を移したのであった。律子は仏の教えは誰にも開かれている事を知って、歓喜の想いでみ仏に心からの合掌を手向けただった。瞬時、一つの悟りに達した律子の身体から、淡い光明があたりを明るく照らし給うた

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