山田がやらなきゃ誰がやる
電車に揺られ、帰路に着く。
最寄りの駅に着く頃には日が落ちて辺りは、すっかり暗くなっていた。
家の前まで来ると美味しそうなカレーの匂いがしていた。
「ただいま〜」
おっかさん「おかえり!入学式にはちゃんと遅刻しないで行けた?」
「うーん、まぁ…大丈夫だったよ!そんなことより今日の晩ご飯はカレーですかい?おっかさん」
おっかさん「そうよ!あなたの大好きなマトンカレーよ!」
「ひゃっほーい!ひゃひゃひゃひゃほーい!」
おっかさん「手洗ってきなさい!あと、お父さんの仏壇にもご飯あげてきて!」
「はーい!」
私は手を洗い、小さなお皿にカレーをよそい、父の仏壇に供えた。
チーン…お鈴を鳴らして手を揃える。
お父さん、カレー食べてね。おっかさんのカレーはとっても美味しいからね。
私の父は、私が2歳の頃に、仕事中に亡くなってしまったらしい。私は顔すら覚えていない。
私が知っている父は、仏壇に飾られた一枚の写真のみ…
写真の父は、とても体も大きい。そして、青いピッチピチの全身タイツを着ており、胸には"S“の文字。背中に真っ赤なマントを携えている。
「おっかさんは、なんにも教えてくれないけど、お父さんはいったい何の仕事をしていたんだろう…ずいぶんとクセのある格好してるけど…きもちわりー奴だったんだな…」
私は、ちょっとおセンチな気持ちになったが、そんなことは2秒で忘れ、マトンカレーに飛びついた。
その時、ピンポーン!
家のインターホンが鳴った。