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二匹目 死の淵で

         「悪魔」

それは太古の昔から人間の敵として、都市伝説的に語られた存在。

しかし悪魔が実在するということは、誰も知らなかった。

彼ら以外には……

 「お前、何なんだよ……」

 もうホームルームが終わってから3時間。先生からは見えないよう、うまく隠しているようで、今のところ何も言われてはいないが、あれから休まず問題をとき続け、既に10年分の過去問を解いていた。

 しかし困った事になったと、俺は幸の「狩人宣言」から頭を抱えていた。

 超極秘組織で、その存在自体が超極秘の狩人なのに、まさか38人の無関係者の前で、声高に宣言してしまうとは。

 しかも勝手に狩人募集しやがって。こんなコミュ障の奴が狩人育成なんてできるわけ無いだろ。

 始めの「狩人宣言」の時は、面倒な奴が来た位にしか思っていなかったが、幸は想像以上のコミュ障だった。

 話しかけられても、無視、「ああ」、「断る」、の3パターンしか返ってこない。

 というか、YesかNoの二択じゃほとんど会話にならないじゃないか!!

 幸は悔しいことにルックスはとても良く、コミュ障でなければ彼女を作ることも、いとも容易いだろう。

 バカみたいに頭がよく、コミュ障だということは分かったが、ここまでの奴とは思わなかった。

 ただ、「狩人宣言」を聞いた人全員が、悪魔だの、極秘組織だの、狩人だのを信じているわけではなく、幸の性格も大体分かったことで、さらに信じる人が少なくなったのがせめてもの救いだった。

 俺としては部隊の規則違反として、幸を問いただしたいのだが、俺が幸を問いただすということは「俺も狩人だ」と宣言してしまうようなものだから、うかつに聞くことはできない。

 その後特に発展は無く、幸に狩人になりたいと声をかける人もいなかった。

 仕方がないので放課後、悪魔討伐の任務を遂行するため、校門を出て直ぐに現場になっている村へ向かった。

 既に日の入りまでの時間は短くなっており、まだ4時だというのにすでに暗くなり始めている。

 夜になってしまうと悪魔の力も強くなる一方で、俺達はとても戦いづらくなってしまう。

 なにより俺は夜の悪魔討伐を経験したことが無いので不安だという思いも少なからずある。

 とにかく急がなければ、という一心でひたすら山道を速歩きで歩いていく。

 木が生い茂っており、下草も多く、決して歩きやすいとは言えない道だ。うっかりすると変な方向へ行ってしまいそうで内心不安になる。

 自分で言うのもアレだが、俺はかなりの方向音痴でだ。

 間違った道を歩いていも、そもそも間違った道だということを認識していないため、そのまま間違った道を突っ走って行って迷子になるということはかなりある。

 ネットで調べるとこういうことは方向音痴あるあるらしいが、この仕事をする上ではものすごい致命傷になる。

 誰か人がいないか探すも、住人全員が行方不明になった村へ通じる道を歩く人はいるはずもなく、結局合っているかわからない道を歩いた。

 しばらく歩いていくと、少し行った先に人が歩いているのが見えた。始めは事件の関係者かと思ったが、どうも違うような気がする。

 ストレートの若干紺色にも見える髪の毛を腰まで伸ばし低い位置で一つに結んだ学ランを着た高身長。「朝場幸」だ。

 昔、毎月行われる定例会議に行った時に他の狩人が話していた事をふと思い出した。

 「朝場幸」という名の天才的な強さを持つ狩人がいると。また、「朝場幸」が呼ばれた現場は普通の狩人では対処できない悪魔がいる可能性が高いとも。だから彼が派遣されたところに万が一派遣されてしまった場合は何も考えず、とにかくその場から離れろと先輩からアドバイスをもらった。

 となれば俺が今から行く村にはそんなに強い悪魔がいるのか?俺はごくごく一般的な普通の狩人だ。そんなやつが天才と共に戦えるのか?

 突然後ろに気配を感じ、咄嗟に銃を構え振り返ると、そこに幸が立っていた。

 学校で見たときとはまるで違う、冷徹な眼。

 彼自身が悪魔なのではないのかと疑ってしまうほどの殺気。

 俺が今まで出会ったどの狩人とも違う。ヘタに動けば殺られる。

 同じ狩人であるにも関わらずそんなことを思った。

 すると突然、幸が学ランを脱ぎ始めた。

 一体何をしているのか。出会った時からずっと思っていたが、本当に幸は何を考えているのかよくわからない。

 そんな戸惑う俺をよそに幸はテキパキと学ランを脱いでいった。

 同性であるのにもかかわらず、何か見てはいけないようなものの気がして目を隠していた手を恐る恐る払うと、まるで侍のような服を着た幸がいた。

 侍、というよりは剣士?紺の道着と袴で、腕には「対悪魔鎮圧・滅殺部隊」のロゴが入っている。

 そして一際目を引いたのが狩人の中でも特別に強い選び抜かれた2人の狩人「イスキローテリハンター」だけが、表彰式で授与されるローブ、通称「ディアボロスローブ」。

 まさかディアボロスローブを着ている狩人がこんなに近くにいたとは思わなかった。

 道着なのにローブという若干ちぐはぐなコーデではあるが、これが幸にとってのベストなスタイルなんだろう。

 腰には日本刀のような形をした刀が一本刺さっている。一見すると普通の刀だが、少し吐き気を覚えるほどの魔力を放っている。

 呆然と幸を見つめる俺を見た幸もしばらく俺のことを見つめてきた。

 何なんだ。この時間は。と思うが否や、幸は目線を俺からずらし目的地である村へとスタスタと歩いていった。

 結局あの時間で幸は何を言いたかったんだ?

 ついてきてはいけない、とでも言いたかったのだろうか。

 でも仕事は仕事だから仕方がない。村へは行かないといけない。

 村の方を見るとかなり歩いていった先に幸の姿が小さく見える。きっとここで声をかけてもガン無視されるだろうから、俺は走って幸の後を追いかけた。

 しばらく歩いていくと目的地の村が見えてきた。この辺りまで来ると山道がかなり踏み荒らされているのがありありと分かる。倒木もちらほらあり、廃村間近の村、という雰囲気が否めない。

 するといきなり、ビュッと音がして強い突風が吹いたかと思うと、幸がやや体を前に倒し刀の柄を握っていた。風と共に感じた魔力の強さに思わず身震いする。悪魔が、来る。

「おい、狩人」

急に声をかけられ無意識に肩がビクッとなる。こんな時に声かけるな!びっくりするだろ!

 初めて幸が声をかけてきた。今までずっと後ろにいたのにも関わらず、ガン無視され続けた末にやっと声をかけられたと思いきや、とてもぶっきらぼうな口調に幸らしいと思いつつも俺は少し嬉しかった。

「何だ?」

「今から抜刀する。お前だと吐くかもしれないから下がってろ」

 は?

 吐く?

 俺が?

 急に?何で?

 そう思ったのも束の間、背中が凍りつくほどの魔力を感じ俺は思わず後ずさりする。発信源を探そうとあたりを見回すが、悪魔はいない。

 一体どこからの魔力何だ?

 しばらく考えた挙げ句、半ば信じ難い結論に達した。

 幸の、刀からだ。

 俺がそう気づくと同時に幸が刀を鞘から抜ききり、宙へ飛び上がった。

 今まで感じたことのない魔力に、腹の底から何かがせり上がってくるような気がして、思わず地面に膝をつくと、激しく嘔吐した。

 自分でも信じられなかった。悪魔と戦った時すらこんな恐怖は感じたことがなかったのに。ただ、幸が刀を抜いただけでこんなにも「死」を感じるとは思わなかった。

 俺がそんなことをしている間に幸は宙を飛び上がるようにして、さっきから刀で空を切っている。

 一瞬、何をしているのか理解できなかったがしばらく動きを見ていると、幸が何かを避けながら動いていることがわかった。

 まさか、実体のない悪魔なのか?!

 まだ報告例は2件しかない。しかも、その悪魔を狩りに行った狩人は全員死亡している。

 これを報告したのはその狩人たち本人ではなく、彼らが魔力を飛ばして報告した。

 しかしこれができるのもほんの一握りなわけで、俺みたいな普通の狩人では、そんな事をしただけで魔力が底をついて戦闘不能に陥るだろう。

 幸は不規則に来る攻撃を宙を蹴って避けながら、刀で斬撃を与え続けている。

 俺も動かなきゃ。狩人なのに。幸に任せっきりじゃだめだろ。動け。動け。動け。動け。動けっっ!

 やっと動いた右手で腰につけた銃を握り悪魔がいるであろう空間に銃口を向ける。

 息を整えてから思い切り引き金を引くと、バンッと大きな発砲音がして空間に向かって飛んでいき、空中で飛散した。

 本当に、あそこに悪魔がいるのだと、やっと実感を持った。

 俺の銃は悪魔に当たると弾が飛散して体内のあちこちに散らばる仕組みになっている。

 俺の銃弾が少しは効いたのか、バランスを崩したらしい悪魔がの隙きを見て幸が思い切り刀を降ると刀から黒い魔力がこれでもかというほどに染み出して、黒い炎を纏ったようになり、空中に刃を当て、そのまま空を切った。

 悪魔を倒したらしい幸が地面に降り立つと、刀を鞘にしまった。

 幸はさっきからずっと立ち尽くしていた俺の方を一瞥すると、村の中へと歩いていった。

 あとを追いかけなきゃ。そう思ったのも束の間、足が勝手にもつれる。まずい、倒れると思っときには既に視界は真っ暗だった。

はじめましての方は、はじめまして!

何と2回目(!)の方はありがとうございます!(泣)

翔と申します。




こんな拙い文章を最後まで読んで下さり本当にありがとうございます。




第一話は初めて書いた小説だったのですが、私の予想では一桁の人数にも読んでもらえるかわからない……

という状況だったのですが、なんと二桁(!)にもなり、読んでくださる皆様にはホントに感謝感謝です(༎ຶ ෴ ༎ຶ)



正直言うと戦闘シーンの出来にはかなり波がありまして、いい方に安定させられるように頑張ります!!




週1、2週に1回くらいを目安に更新していきたいと思っています!




次回も読んでくださるとホントに嬉しいです!作者の励みになります


・面白い!


・次話を早く!


・続きが気になる!


と思った方は、☆☆☆☆☆からの評価、ブクマへの登録をお願いいたします!嬉しくて鼻血でます。

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