1匹目 ぶっ飛んだ「狩人」ここに見参!!
「悪魔」
それは太古の昔から人間の敵として、都市伝説的に語られた存在。
しかし悪魔が実在するということは、誰も知らなかった。
彼ら以外には……
「なあ、山の上の方にある村、村人全員が行方不明って、おかしくない?」
「だよな。ワンチャン夜逃げ的な?」
「いや、それはないわ」
「ねぇねぇ、あの村さ、変な噂とかあるじゃん?実は連続殺人とかだったりして」
「ちょっとやめてよ。そんなこと言われちゃったら怖いじゃん」
いつもより教室が騒々しい。
大抵近くで悪魔が出た時はこんな感じになる。もう何度も見た光景だ。
なんて他人事のように思ってはいけないなと思いながら、小さくため息をつく。
放課後その村に行かなければならない。遠いから嫌なんだよな。
自分の席に座りながら、教室の中を観察する。
特に変わりははない。
「おい、翔太!おはよう」
「ああ、おはよう」
こいつは俺の唯一の友人、伊村太助。
太助は社交的で明るく、面白い性格だ。故に、友達も多い。
そんな奴がなぜか俺のような地味な人間に声をかけてきた。
俺としては特にうざいやつでもないし、俺の心がざわめくのを感じると、スッと引いていく。
そういう人間だから俺としても任務遂行のための材料として使わせてもらっている。
やっぱり普通の生徒になるなら友達の一人や二人はいないと教師に気にかけられてしまうし、何より得られる情報が少なくなってしまう。
「なあなあお前山の上の村の話、知ってるか」
「ああ。まあ、少しは」
「なんだよ。全然興味なさそうだな。てかお前さ、これ他人事じゃないんだぜ。すぐそこの山の上の村だぞ。原因だってわかってないんだろ。もしかしたら連続殺人とかかもしれないし、話は別だろ」
「この刑事ドラマオタクが!」
「フッ」
太助は刑事ドラマの刑事が犯人を突き止めたときのような顔をして、なぜかこのタイミングで格好つけた。いやそれ今じゃないだろ、それに何だよその「フッ」て!と心の中で突っ込む。
まあ太助は俺がこの事態を軽視していることを心配してくれてるいるのだろうけど、俺としては悪魔を倒すためにこの街に来たのだから、正直怖いとかそういう気持ちよりも、面倒くさいのほうが大きい。
始業のチャイムがなった。周りの生徒たちがそれぞれの席に慌てて着き始める。
朝は読書をしてから授業が始まる。
俺も机から本を取り出して周りの生徒と同じように読書をする、フリをする。
この時間は俺にとって一番良い時間だ。
本さえ構えていれば、後は周りの生徒を観察していればいい。
観察は俺の仕事上とても重要だ。
データがあるのとないのとでは効率の良さも変わってくるし、何より自分の身を守りながら任務を遂行するのに、とても頼りになる武器だ。
そんなことを思いながら、少し廊下の方を見てみる。
俺の席は一番後ろで廊下にも一番近い列にある。
だから廊下の様子もよく見えるし、教室の様子もよく見える。
廊下の奥の方から担任が机を運びながらこっちへ向かってくる。
なんで机なんか、と思いつつもそのまま観察を続けていると、担任の後ろを、今度は椅子を持ってついてくる影があった。
学ランを着ている。男子か。
こんな時期に転校生。珍しい。
もう12月の初め。特に山に近く豪雪地帯であるこの街は、12月ともなると、雪が降らない日はないと言っていいほど、雪が降りまくる。
そんな時期にこんな街に引っ越してくるとは、ツイてないやつだ。
そのまま二人は教室の後ろのドアから入ってきて、俺の席の横に新しく席をセットした。
こいつも狩人だったりして。
まあ、そんな偶然ないか。俺たち狩人が所属している「対悪魔鎮圧・滅殺部隊」は、国家公安委員会、通称「公安」に属する総勢38人の少数精鋭部隊だ。
『この世に「悪魔」が存在し、それを討伐する組織がある。そして悪魔を討伐する者を「狩人」という。』ということは都市伝説的には囁かれているが、この「対悪魔鎮圧・滅殺部隊」は超極秘組織であるため、その存在はもちろん公には公開されていない。
悪魔討伐には大きな危険が伴う。怪我なんて日常茶飯事、死者が出ることも珍しくない。
それ故常に人手不足に悩まされている。悪魔討伐が可能なほどの身体能力、知能を持つ者はやはりごく僅かしかいない。
これらを持たない者もある程度能力があるのならば、組織に入れてしまえばいいと言う意見もあるが、それでむやみに死者を出すことは組織からしても、狩人からしてもあまり好ましくない事態だ。
読書をするフリをして新入りを観察していたが、特に一般人と変わりなく、問題なしと判断した。
ホームルームの時間になり、先生がいつものように長々と話すのを右から左へ流し、今日のスケジュールを考えていた。
そろそろホームルームも終わる時間に近づいてきたとき、担任は俺の隣りに座っている男子を手招きした。
男子は大義そうに立ち上がり、また大義そうに教卓まで歩いていった。
担任から黒板に名前を書くよう指示されたのか、粉受(黒板の下に付いてる、チョークの粉を受け止めたり、チョークや黒板消しを置いておくやつ)から白いチョークを手に取ると、それなりに大きな文字で名前を書き出した。
「朝場幸です。よろしくお願いします」
そう言って「あさばこう」はペコリと頭を下げた。どこかで聞いたことがあるような名前の気がして、頭をフル回転させて考えたが、違和感の正体は掴めなかった。
思い出せないなら、きっと大したことはない。そう思うようにし、また今日のスケジュールについて考えを巡らせていた。
しかしその瞬間、幸は唐突に、
「俺は狩人だ」
と、教室の外にまで聞こえるくらいの声で宣言した。
おい、何やってるんだよ!それ、言っちゃいけないやつだって!部隊規則違反だろ。
そもそも俺たちの存在も、悪魔の存在も、超極秘だろうが!
教室が静まり返る。唐突に転校生が宣言した「狩人」というワードに教室中が戸惑う。
そりゃそうだ。いきなり都市伝説的なこと言われてもなあ。
しかし当の本人は全く気にせずにつらつらと話しだした。
「俺は国家公安委員会に属する「対悪魔鎮圧・滅殺部隊」に所属している。この世には悪魔が存在する。悪魔は人間を食いはしないが、労働力として使う。つまり奴隷だ。だが悪魔も全く人間を食わないわけではない。割合としては拐った人間の7割を労働力に、3割は食料として使う。
だが子どもは別だ。子どもは問答無用で食糧にされる。女も同じようなもんだ。女は食料を生産する機械として死ぬまで、永久に子どもを作らされ続ける。
それを阻止するのが俺たち「狩人」の仕事だ。「対悪魔鎮圧・滅殺部隊」も、悪魔も、「狩人」も、その存在は超極秘で決して口外してはならない。もし口外すれば、部隊を追われるだけでなく、恐らく、殺される。
だがこの部隊は総勢38名しかいない。それに反して悪魔による被害の数は日に日に増加している。だから俺は狩人になりたいという意志と、覚悟を持つ者を探している!
狩人は悪魔と戦う仕事が故に、怪我など日常茶飯事、死ぬ可能性だって大いにある。
それらを承知した上で、狩人になりたい者を俺は探している。狩人になりたい者がいれば、俺に声をかけてくれ。以上だ。」
スパッと、そして事細かに極秘情報を漏洩しまくった幸は、何事もなかったように自分の席に着いた。
皆が呆気にとられ、幸を凝視しているのを気にもとめず、彼は机の中から大きく「東王大学」と書かれた赤本を引っ張り出して黙々と問題を解き始めた。
いやお前狩人なんだろ。しかもあんなこと言った後に日本最難関の「東王大学」目指してんのかよ。
多分俺以外の奴全員、引いてると思うぞ。
結局微妙な空気のままホームルームは終わったものの、幸は空気が読めないのか、終始、東王大学の問題を解きながら、なぜ自分がこんなに注目されているのかと分からずにいた。
はじめまして!翔と申します。
こんな拙い文章を最後まで読んで下さり本当にありがとうございます。
自分愛用のメガネを差し上げたいくらいです。
コミュ障要素まだなくない?
と思った方、安心してください、次話かその次の話くらいでがっつり出てきますのでお楽しみに!
週1、2週に1回くらいを目安に更新していきたいと思っています!
次回も読んでくださるとホントに嬉しいです!作者の励みになります
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次話:2匹目 死の淵で