表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/16

第3話 氷神の嫁

ようやく第3話です。

第3話 氷神の嫁

ファミレス『ゴスト梅田店』の中で、千陽子は注文したクリソを一口飲んでから、一条礼子に尋ねた。


「で、兄貴が捕まった容疑は()()で間違いないんか?」

「それなんですけど、先程は私も取り乱してまして、人を殺して捕まったと言いましたけど、刑事も何か今のところは、死体遺棄やとか言ってました。でも、それも時間の問題やって…」

礼子は顔を下に向けてすすり泣き始めた。

「ふーん、まあ、ある程度、証拠がないと警察も動かんやろうしな、何か氷神ともめとったんか?」

「いえ、特に、そら、グループにいる時は、相手は対立するグループでしたし、事ある毎に衝突してましたから…」

「まあ、そうやな、で、礼子も警察から事情聴取受けたんか?」

「ええ、最近の兄貴の行動を知らないかとか、誰かと揉めてなかったかとか…」

「まあ、ありきたりな質問やな。」

「あ、それと氷神明菜っていう女性を知らんかとも、」

「それは氷神の嫁や、隼人と何かあるんかいな?」

「いえ、わかりません、兄貴とはあまり連絡は取っていませんでしたから。」

「そしたら、アイツの家に行こか?」

「え?アイツ?」

「氷神の家や、とりあえず、明菜に会おか。」

「ええ?!」

ナンバー3の熊谷樹里亜(くまがいじゅりあ)とナンバー4の美山香(みやまかおり)が驚く。

千陽子は思い立ったらすぐに行動に移す。

それは昔からの性格で、考えていない訳ではないが、ある意味せっかちなところがあった。


「あ、でも、場所わからんわ。」

と千陽子が言うと、 樹里亜と香はその場にズッコケる。

それを見て千陽子が、二人に、

「めっちゃええやん!あんたらのその動き!そんなタイミングのエエ動きが、うちの事務所の奴等に出来てたら、もっとオモロイもん出来るんやけどな。」

と悔しがる。


「千陽子さん、とりあえず氷神の家は、私が確認しておきます。わかれば、また、連絡しますんで…」

と香が千陽子に言う。

「わかった、頼むわ。」

と千陽子が香に頼んだところで千陽子の携帯から『パワー◯ール』が鳴り響く。

千陽子はプロレスラーの長州◯選手の大ファンで、ずっとこの着信音にしている。

「はい、千陽子!何やエージか、墓参りは?終わった、ああ、そうなんや、で…お前、ネタ遅過ぎんねん!ワイの頭にカビ生えたらどないすんねん!えっ?今からって、お前、さっき事務所にはもう上がるって言うてもたわ、はーもうしゃーないな、わかった、お前、その代わりしょーもないネタやったらシバキ回すからな!おーそこで待っとけ!」

そう言うと千陽子は携帯を切る。

「悪いな、ちょっと事務所戻るわ。」

と千陽子は三人に手を合わせて謝る。

「頑張って下さい!応援してますから!」

と樹里亜が拳を握って、千陽子の目の前でガッツポーズをする。


千陽子は氷神関係の調査を香達に任せて、店を出た。


千陽子が事務所に戻ると、エージこと、カリスマエージがソファーの上に立って、定規を持った手を振り上げ何やら叫んでいる。

「俺の体に眠る、ゴッデスダークのおぞましくも呪われた力が貴様の野望を打ち崩す!」

かなり、真剣であるが、外でこれをやっていると単なる危ない人だ。


「何、アホなことしとるねん。」

とりあえずツッコミを入れる千陽子。

「あ、千陽子さん、お待たせしました。ようやく異世界コントの新ネタ出来ました。今回のは結構自信作ですから、今度の大賞には良いところまで行けると思います!」

エージが振り向いてそう言うと、千陽子はエージの額にデコピンを入れる。

「いったあー!何するんですか!?」

エージが額を押さえて千陽子に文句を言う。

「アホ!良いところまで行けるやと?ワイが(ねろ)うとるのは大賞であって、敢闘賞とかと違うんやで!お前、何自分のハードル下げとんねん!」

そう言われるとさすがのエージもぐうの音もでない。

「悪かったです。でも、一回ネタ見てもらえますか?」

とエージは千陽子に両手を合わせてお願いする。


「ちっ、しゃーないな、おもろなかったらホンマ、この事務所の窓から放り投げるで!」

千陽子は渋々承諾する。

「いや、それは勘弁して下さい。マジで死にますから。」

千陽子は自分が言ったことを結構、実行することがあるので、うかつに『はい』とは言えない。

「はー、何々、ん?『死語魔法』?何やこれ?」

千陽子は今回の最新ネタが書かれた紙の束を見て言った。

「ああ、それですか、それが今回のネタの肝です。」

「何やそれ?おもろいんか?」

「わかりません、ただ、死語魔法は相手には効かないと言うのが前提で、例えばかなり昔の死語とかを呪文として僕が言うので、千陽子さんが、『お前アホか?そんなもん効くか!』とか『何言うてんねん!』とか言って突っ込んでもらいたいんですわ。」

「ふーん、一応やってみよか?」

「お願いします。」

こうして、クリム&カリスマのコントの練習が始まった。


ーーコント『死語の世界』ーー

カリスマ「えーい、邪悪な化身ゾンビーノ男爵!私の最終奥義『死語魔法』で地獄に追い返してやろう!」

クリム『何を生意気な!お前こそ、我と戦って死んでも、後悔するなよ!』

カリスマ「うるさい!いくぞ!死語魔法……『その服ナウいじゃん、イケてるね!』」

クリム「………」

ーーー終了ーーー


「ちょっと千陽子さん!ツッコミ入れて下さいよ!」

「アカン、無理。これ、なにがおもろいんや?」

「えっ?いや、」

「こんなもん、ワイにツッコミ入れられるのを前提にして作っとるやないか!」

「いや、でも、千陽子さんのツッコミが無いとアカンと言うか、」

「あのな、ツッコミっちゅうんはな、客がツッコミ入れられへんのを代わりに相方が入れてるんや!客がどう突っ込んでエエもんか、ようわからんようなネタはやめとけ!」

「客の代わりにですか…」

「そうや、お前はお笑いの作家を目指しとるんやろ?そしたら、ワイに気を使わんと、誰にでも、どの芸人でも使えるようなネタを考ええや。」

「じ、じゃあ今まで僕が考えたネタで、千陽子さんが、一番おもろかったと思うネタって何ですか?」

「えっ?エージの考えたネタでか?」

「はい。」

「うーん、そうやな、強いて言えば…」

「強いて言えば?」

「『抜けない聖剣』の話かな。」

「あ、あれですか、確か、勇者が抜けなくて、魔王が抜いちゃうっていう話ですよね。」

「あれは中々、おもろかったと思うけどな。」

「他には?」

「他?うーん、『田舎者の魔法使い』かな?」

「あれは、確か田舎者の勇者と魔法使いが魔法を唱えても訛ってて、魔法が発動しないっていうやつで、え、それって千陽子さん僕にダメ出ししてたやつじゃないですか!」

「だから、それくらいしかないんやもん。」

「えー、ひどいですね。」

「アホ、ひどいのはお前のネタや!」

「あー僕、才能無いんですかね?」

「才能なんて持ってる奴は一握りの人間だけや、人間は努力や!努力したら何とかなるわ!」

「努力ですか?はー、どんな努力したらエエんですか?」

「そやな、1日100個の小ネタを考えるとか?」

「ひ、100個っすか!きついっすわ!」

「アホ!何でもエエんや、しょーもないことでも、幼稚なことでも、とりあえずやる!まずはそこからや!」

「わかりました。話、もうちょい練り直しますわ。」

「そうせえ、ほならワイは帰るから。」

「お疲れ様です。千陽子さんは今からお店ですか?」

「当たり前や、ここの仕事がないんやったら、他で稼がんとアカンやろ。」

「そうですね、頑張って下さい!」

「お前もな。」

そう言うと千陽子は事務所を出ていく。


「あーネタ100個かあー!きつー!」

エージは両手を上げて伸びをして、そのまま、後ろのソファーに倒れ込んだ。





アカーン、おもろないわ。

今、エージ状態の僕。


脳が切り替わらへーん!

ピーンチ!

読んで頂いた奇特な方ありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ