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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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島流しなう☆

作者: 瓶覗
掲載日:2019/08/30

ジャンルが分からなかったです……多分、コメディ……?

 晴天。快晴。天晴れ。

 うむ。心地いい。

 この天気を表す言葉を幾つか並べて、私は一人にっこりと笑った。


 ああ、これが一人虚しく揺られる船の上でなかったら、もっと素晴らしいものだったろうに。

 悲しいなぁ。私は悲しいよォ。

 何が悲しいって、自分の現状が。


 私は巫女である。

 天の声を聴き、これから興すことに天の好意が得られるかを探るのが役目である。

 ここに至るまで、私はしっかりそのお役目を果たしていた。


 そう。ちゃんと真面目に働いてたんですよ私。

 なのに、それなのに!

 天の声を聴く占いの結果が芳しくなかったから、それを素直に伝えたら。

 そしたら占いに失敗したとか言われて!


 そうして今、その罰のため。

 命を奪うのは忍びない、とか無駄な慈悲をかけられて。

 私は人の住まぬ孤島へと島流しにあっています。


 悲しいよォ。寂しいよォ。

 食料と水はちょっとばかし貰ったけどさぁ……

 こんなん、処刑させた方が安らかだったりするんじゃない?


 そんな事を思いつつ、あ、見たことない魚がいる!とか現実逃避をしてみつつ。

 私はうっすらと見えてきた、目的の島であろう影を眺めていた。


「自分に都合のいい結果信じないんじゃ、何のための占いか分かったもんじゃないよね」


 ぼやっと呟いた王への不満。

 今まで暮らしていた王宮の端っこで言ったものなら縛り首だが、ここは誰もいない海の上。

 いくら愚痴ってもお咎めなしだ!だって誰も聞いてないし!そう思っていたところ。


「そうですねぇ……うんうん……」


 なにやら死にそうな声が聞こえてきたものだから、私は思わず座ったまま跳ねてしまった。

 声がした!幻聴でなければ船の中から聞こえた!


「え、誰!?誰かいるのですか!?」

「居ます……居ますよォ……巫女様ぁ……」

「嫌味か!?私、巫女の役目のせいでこんな目にあってるんだけど!?」

「あ……ごめんなさい……癖って抜けませんね……」


 しっかり会話が出来る。幻聴ではないみたい。

 ……幽霊とかでもない、よね?

 まあ、幽霊より人間の方が怖いけど。


 それでも、この声の主は私を巫女様と呼んだ。

 その癖が抜けないと言った。

 ……ちょっとだけ、嫌な予感がしたりする。


「……何で居るの?」

「ついてきちゃいました……」

「いや、島流しだから供は禁止って……」

「……てへっ……」

「てへじゃない!やるならもっと元気よく!死にかけてるみたいだよ!?」

「すみません……船酔いで……」


 一人で流されなきゃいけない島流しにちゃっかりついてきて船酔いでグロッキーになっているこの生物は、私が王宮に居た時に何かと世話をしてくれていた侍女だ。


 王宮に仕えているくせに王が好きではないとかいって、私の横にずっと居た。

 さすがに私がいなくなったら真面目にそれなりに働くだろう、なんて考えていたのに、何をついてきとるんだお主は!


 ……めっちゃ船酔いしてるじゃん……大丈夫?

 怒らないといけないのに、あまりにグロッキーしてるもんだから心配になってしまう。

 背中を摩ると逆効果になるかも、と私は彼女の短い暗色の髪に手を伸ばした。


「ほら、もうちよっとで着くから……」

「ありがとう、ございます……ウエップ」

「吐くなら船の外にしてね!?」

「酔い止め、持ってくれば良かった……」

「そもそもついて来なきゃ良かったのよ……」

「だってそれは……あ、ヤバ」

「ちょ、ちょ!?」


 船酔いグロッキー。

 ……うむ。空は見事な晴天だ。



「ごめんなさい」

「まったく……」


 あの後、慌てている間に島に着いた。

 流されて着いたここが、島流しの目的地だ。

 自然豊かで人はいない。


 持ってきた食糧が尽きたら知らぬ植物を食べるか、手を出さずに餓死するか……そんな島だ。

 なるほど罰に相応しい……のかな?


「さて巫女様!」

「巫女じゃないってば!」

「あ、そうでした。じゃあ、なんてお呼びしましょう?姫様?」

「姫でもないし……」


 この少女、船酔いグロッキーの後はスッキリしたのか元気になった。

 今は船を陸に押し上げて中身を取り出しているところだ。

 妙に手慣れている。さては島流し経験者か?


「名前でいいじゃない」

「んー……でもほら、巫女……姫様。姫様は巫女だったじゃないですかー」


 何が言いたい、と言おうとして、気付く。

 巫女は巫女以外の何者でもなく、従順に、純真に神に仕えなければいけない。

 故に、名を捨てるのだ。私は、王宮で巫女としか呼ばれていない。


「私、姫様のお名前知らないんですよ」

「……アリアレータ」

「へあ?」

「アリアレータ。私の名前。長いからアリアでいいわ」

「わぁ……!分かりました!アリア様!」

「様いらないけど……」

「そこは!譲りません!」


 妙に意地の硬い少女である。

 王宮に居た時、私の部屋で二人の時はよくこの素直な笑顔を見せていたが、これが部屋の外になると表情が抜け落ちる。


 私はそれを見て人間って怖いな、なんて思っていたりした。

 それが、ここに来てからものすんごく元気である。

 さてはこれが素か。知ってたけど。


「で、アリア様!まずは寝床をつくりますよぉ!」

「慣れてるわねー……じゃ、なくて!何ついてきちゃってるの!?」

「だってぇ」

「だってじゃないの!」


 子供のように唇を尖らせてそっぽを向いた少女の頭を軽く叩く。

 それでも彼女はこちらを向かない。


「……ソフィア」

「なんですかー!?」


 名前を読んだ途端目を輝かせてこちらを向いた。

 あまりにも、チョロい。


「アリア様!私気付きました!」

「何に?」

「ここまで流されてきたので、今更何を言っても私は帰れないですよ!」

「勝ち誇るな!」


 さあ受け入れろ!と胸を張った阿呆の頭を強めに叩く。

 こいつもしや真性のバカなのでは!?


「……だってアリア様悪くないですもん」

「それがここまでついてくる理由にはならないでしょうに……」

「なります!私はアリア様と一緒にここで余生を過ごすんですー!」

「なんというワガママ……!」


 私はともかく、この子はまだ余生ではないと思うの。

 ……それでも、まあ。

 ここから帰れないのは確かにそうだし、一人じゃなくて嬉しいと思ってるのも確かだ。


「……ソフィア、ここで暮らせるの?」

「はい!おまかせください!」


 私が諦めたのが分かったのか、少女は嬉嬉として荷物を引っ張り出した。

 ……ん?


「ねえ、ソフィア?」

「なんですか!アリア様!」

「荷物、こんなに多かった?」

「あ、私が持ち込んだ物が半分ほど」

「何をそんなに持ってきたの……!?というか準備いいわね!?」

「そりゃぁ、アリア様が島流しになると分かったその日に王宮の仕事辞めて必要なものを纏めましたから!」

「決断力が高すぎる!」


 王宮の侍女とかいうかなりいい職についておきながらそれを放り出すことに躊躇いが無さすぎる。最早怖いわ。


「ともかくおまかせを!」

「……ええ、そうね……」


 何を言おうと、私は元巫女。世間知らずで知恵はない。

 ここで生きていく術は全く知らないので、彼女に任せるしかないのだ。

 とはいえ。島流しされた本人なのに、私が何もしていないのは少し気が引ける。


 何か出来ることはないだろうか……と思って彼女の手元を見ていたのだが、何もかも早い。

 私がすることはなさそうだ。


「……慣れてるわね」

「ふふん!私が何故一人でアリア様の世話を任されていたと思っているんですか?」

「譲らなかったからじゃないの?」


 この少女、私の横が自分の居場所……もとい私の横は自分だけの場所、とでも言いたげにずっと私の横に引っ付いていたのだ。

 それこそ、他の人が寄ってこれないくらいに。


「それもありますが!私が多芸だったから、全部ひとりで出来たのですよ!」

「……まあ、何でもできるな、とは思っていたけど」

「でしょう!」


 それでも、島流しの先で寝床をこしらえる能力があるとは思わなかった。

 人間何が出来るのかは分からないものだ。

 もう既に、船を少し改造して二人が寝るスペースが確保されている。


「これは簡易的なものなので、用意が出来たら作り替えましょう」

「そうなの?」

「はい!なにせ無人島、やることがいっぱいなので、とりあえずこれだけです!」

「……次は?」

「火を起こすのと、それを燃やすための木の枝の確保ですかね」

「木の枝」

「はい!」


 そのくらいなら、私にも出来るだろうか。

 少なくとも、火をつけるよりは出来そうだ。


「じゃあ、私が枝を拾ってくるわ」

「分かりました!……あ、あまり奥には進まないでくださいね!」

「分かってるー」


 そもそも離れられるような神経をしていない。

 見える範囲からは離れない予定だ。その範囲でも、落ち葉や木の枝は大量にある。

 適当な量を抱えて戻ったら、すでに火がついていた。


「……慣れてるわねー」

「えっへん!」

「で、次は?」

「飲み水を確保するちょっとした装置を作ります!」

「そんなことも出来るのね……」


 本当に、何でもできるようだ。

 任せておけば普通に暮らせそうである。


「それくらいで、あとは時間があるようなら魚を取りたいですね」

「今後の食料も魚?」

「後は、食べられる野草を探すのと……動物も、捕らえたいですね」

「……全く出来る気がしない……」

「お任せくださーい!そのために居ます!」

「頼もしい……」

「あ、ちなみに種もみもちょっとだけ持ってきたので、そのうち畑をこしらえましょう!」

「永住する気……って、永住するんだったわね」


 そう。まだ実感はないが、私たちはここで暮らすのだ。

 多分、何もかも足りないここで、二人きり。

 ……一人だと生きる気力が尽きそうだ、こんな場所。


「あ、アリア様!」

「なにー?」

「これ!これ見てください!」


 妙にウキウキした声で呼ばれて、近づいて行くと何か果実が生っていた。

 ……見た事が、ある気がする。


「やったぁ!自生してるみたいです!」

「これ、美味しいのよね?」

「そうですよ!美味しいし、水分たっぷりです!」


 島流しにあっておいて何だが、何だか普通に楽しく暮らせる気がするのは私だけだろうか。

 いや、恐らくきっと横に居る少女もそう思っているだろう。……この子は、楽しく過ごせそう、というより楽しくする!という感じで生きているが。


 まあ、せっかく二人だ。

 楽しめるなら、楽しんだ方がいいだろう。



 なーんて考えていた初日のあの頃から早……どのくらいかな、一年は経ったと思う。まあ、とにかく時が流れました。

 今、私たちの目の前には王の使いを名乗る者がやってきています。


 この人が言うには。

 私が島流しになった原因である占い。大きな戦をして、勝機があるか否かのそれの結果。それはいい結果ではなかった。端的に言って悪かった。


 ただ、その時王はそれを占いが失敗したのだとして受け入れず、私は島流しになった。

 んで、問題はその後。

 占いで凶と出たその戦で、王は大敗した。


 ……つまり、私の占いが当たっていた、と言う事らしい。

 そんでもって、その大戦で王が変わり、新王が私の存在を知った時、こうおっしゃったらしい。


 王に意見するとは、自らの身を危険に晒すという事。それでも顧みることなく忌憚なき意見を発した巫女が居たとは……

 その占い、真であったのだろう?ならば、そのようなものが島流しになどあったままにはしておけぬ。

 神に愛されし巫女ならば、よもや生きているかもしれん。そうでなければ、せめてその亡骸を丁重に弔いたい。生死は問わぬ、連れ帰ってくれ……


 ……イイハナシダナー

 カンドウシチャウナー

 ……はい。そんなわけでね。目の前にいるこの人は、死にかけてるor死んでいる私を連れ帰りに来たらしい。


 そして今、目を白黒させている。

 そりゃそうだよねぇ。だってこの島、小さいながらも小屋が立ち、小さいながらも畑があり、作られたため池はいけすになっていて、雨水を溜める機構が出来ている。


 最近は動物を飼育できないかやっているところだった。

 ……あ、布は作れるようになったよ。粗悪品だけどね!


 と、まあそんなわけで。今のこの島は島流しのための無人島とは思えないくらいに快適だ。この人も来たときは場所を間違えたのではないかと思っていたようだが、私が件の巫女と分かってさっきの話をされた。


 ……今更、帰って来いって言われましても。

 隣の少女と目を見合わせる。

 本来ここに居てはいけないはずの彼女だが、それはもう今更だ。

 私たちは、目を合わせて頷き合って、声を揃えていった。


「嫌です!」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 罪人1人を島流しだから手漕ぎボートみたいな小船想像してたら侍女がそれなりの荷物持ち込んでこっそり隠れ潜めるくらいの船だった点 流す時に王が立ち会わないとして元巫女様不憫に思ってちょっと…
[一言] いい話だなぁ……。
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