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異界転生譚 シールド・アンド・マジック  作者: 長串望
第七章 ガーディアン

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第二話 喧嘩は買う主義

前回のあらすじ


酒の勢いで要らぬ喧嘩を買ったらしいムスコロ。

全く、阿呆かと。

 義理堅いが阿呆、というのが紙月のムスコロに対する印象だった。


 本人のいないところであることないこと吹聴して、それで揉め事を起こすというのは褒められた話ではない。それで自分が被害を被るだけでなく、他人にまで火の粉が飛ぶというのは全くよろしくない話だ。


 しかし助けを求める前に、しっかりと悩んで考え、自分で責任を取ってどうにかしようとした姿勢は褒めてやっても良かった。

 これでムスコロが全く何の考えもなしに自分達にこれこれこういうことがあったとただ報告してきた日には、知ったことか、自分の尻は自分でぬぐえと一蹴したことだろう。


 問題はことがムスコロ一人でどうにかなることではなさそうだということである。まして一人二人助っ人を頼んだところで難しそうだというのが伺えるのだ。


「それでお前、その難しい依頼とやらに失敗したらどうするつもりだったんだ」

「そんときゃもう、俺の身ひとつで雪げる恥なら」

「お前ひとりどうなったところで、なんにもならない」

「はあ」

「お前がどうなったところで俺とは関係のないところですったもんだしているだけで、俺の、何だ、名声だなんだは悪くなっていたことだろうさ」


 うなだれるムスコロに、未来が優しく声をかけた。


「ムスコロさんは謝り方を間違えてるんだよ」

「なんですって」

「こういう失敗をしてしまいました、責任取ります、って言われてもさ、解決しないなら責任取るのは自己満足だよ」

「ぐう」

「だから正しくはこうさ。『こんな口約束をしちまいました。どうにかしたいが力が足りない。助けてほしい』ってね」

「し、しかし」

「なあに、結局喧嘩を売られたのは俺たちなんだ。俺たちが買い取るのが道理だろう」

「でも、それじゃああんまり申し訳ねえ」

「丁度暇だったからいいよ」


 これにけらけら笑ったのはシャルロである。


「暇つぶしに穴守に挑もうとは。太い連中だ」

「何しろ半分暇つぶしで冒険屋やっているようなもんだからな」

「人生には刺激が必要だよね」


 この実にふてぶてしい物言いに、更にシャルロは笑った。

 ムスコロもにやっと笑い、それでようやく肩の力が抜けたようだった。


「ムスコロへのお仕置きはまた今度考えるとして」

「ぐへえ」

「酒場じゃ俺達、散々に言われたんだろう」

「へえ、そりゃ、もう」

「どんなこと言われたの?」

「ええっ、いや、そりゃあ、その、何と言いやすか」

「言えよ。お前に怒りゃしないよ」

「へえ、そのですな」


 ムスコロが語ったところによれば、こうだった。


 まず一番多かったのが、話を盛り過ぎだということである。

 いくらなんでも二人で地竜を倒すなんてのはちゃんちゃらおかしい、精々がでかい亀でも倒したくらいだろう、というところから始まり、冒険譚の一つ一つにケチがつけられているのである。


 鉱山の崩落に巻き込まれてけろっとしてるなんざ三文小説でも呆れられるぜ、平原を凍らせたなんざ全く馬鹿馬鹿しい話でよくて氷の粒でも飛ばしたってのが関の山だろう、海賊船だって大方船員たちがあらかた片付けたところをいいとこどりしたにすぎないだろうよ、とまあこのように言うのだとか。


 散々な言われようだが、これには二人も、だよねー、と逆にほっこりしたくらいである。

 自分達でもわりと規格外な事をやっている自覚はあるので、仕方がない。

 《魔法の盾(マギア・シィルド)》、紙月と未来という二人組は、地に足のついた普通の冒険屋たち、つまり平均すればムスコロよりちょっと上くらいの実力者が多いだろう連中からしてみれば、全く常識の外にある存在なのだ。


 まず魔術師という存在自体が、実戦レベルではなかなか珍しいものであるし、それが紙月レベルともなると、探す方が馬鹿馬鹿しくなるほどだということを、二人はよくよくわかっているのである。

 わかっていてなお、自重する気はないが。


 二人が大して気にも留めていないのを察して、ムスコロもほっとしたように舌が軽くなった。


「いや全く、連中ときたらまったくわかってねえんです」

「うんうん」

「俺も酔っていたとはいえ、嘘は言わねえ。姐さんが小鬼(オグレート)位なら炭にしちまえるような火の玉を一度に三十六も操れるんだって言っても、こう言うんでさ。『馬鹿言え、魔獣を焼く程度ならともかく炭になんてできるもんかい、ましてやそんな数、おとぎ話でももうすこし遠慮するぜ』って」

「うんうん」

「炎だけじゃねえ、水の魔法も土の魔法も風の魔法も、なんだって姐さんの使いこなせねえ魔法なんざねえんだって言ったって、へっと鼻で笑ってきやがる。『帝都の魔術師だってそんなに芸達者じゃねえだろうさ』とくる。帝都にこもってるから世界の広さってものを知らねえんだ」

「うんうん」

「俺がすっかり呆れちまって、西部冒険屋組合のお偉いさんだって一目置いてるんだ、組合直属の騎士や冒険屋からも信頼されているんだぜって説明してやっても、『大方股開いてあれこれ融通してもらってるんだろ』ってとんでもねえ言い草でして」

「うん……うん?」

「『魔女ってのも隠語だろ、あっちに股開いてこっちに股開いて、寝台で仕事取って、寝台で仕事片付けてるに違ぇねえ、お前知り合いなんだろ、ちょっと紹介してくれよ、俺も魔女様の百戦錬磨の手管を味わってみてえぜ』なんて言いやがって」

「ほほう」

「ムスコロ、馬鹿」

「えっ、あっ」


 紙月のきゅうと細まった目と唇は、到底笑顔とは程遠いものである。

 むすっと押し黙った未来は、意味は分からないなりに罵倒だと察したのだろう。


「活きのいい野郎だ。言い値で買ってやる」

用語解説


・魔女様の百戦錬磨の手管

 実際のところ紙月の経験はというと以下略。

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姉弟作「異界転生譚ゴースト・アンド・リリィ」
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