表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/73

出航 2話

 懐かしい夢を見たな…。


 目を覚ますと外は、うっすらと明るみを帯びていた。


 小鳥たちが歌い始めていた。


 妻が部屋に、ココアを運んで来てくれた。


「どうしたの?」


「なにが?」


「あなた、泣いているわ」


 え?


 妻は、頬を伝う涙を拭ってくれた。


「たぶん…ちょっと懐かしい夢を見たからだと思う」


 僕は、ココアに口をつけて微笑んだ。


 さぁ!出かける支度をしなくっちゃ!今日は、待ちに待った出航だ。


「あなた、気を付けてね」


「ああ。必ずピーターパンを倒して子供達を取り返してくる」


 朝食を済ませ、赤い衣裳に身を包み朝靄の中に出ていった。


 僕は、ゆっくりと確かめるようにシャツに手を通した。


 ハンガーに掛けてあるコートと帽子を手にリビングへ向かった。


 リビングには、すっかり朝食の用意が整っていて朝日に照らされていた。


 シンプルなグリーンサラダに目玉焼きにベーコン。そして、クロワッサン。質素だけど暖かい朝食だ。


 僕は、一瞬微笑み椅子に腰掛けた。こんな朝食とも暫くお別れだ。


 妻が温かい紅茶を煎れてくれた。


 ふと、隣の空席が目に留まる。息子の席だ。


 あの日以来、冷たいままの椅子。


 部屋もそのままにしてある。いつあの子が戻ってきても良いように。


 妻は、掃除を欠かさない。しかし、掃除をしながら涙を落とす妻の背中は不憫でならない。


 大丈夫だ。僕が取り戻す。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ