冷たい玉座 14話
「フック、立ちなさい。そして、剣を抜きなさい」
一体なにを!?
彼女は、全身をしならせて美しい斬撃を幾つも放つ。
フックは、軽やかに宙をまい、剣を繰り出す。
「あなた、ごめんなさい。私はずるい女。あなたを戦争に行かせたくない。子供にも生きていて欲しい。それには、この国にいるのが一番なの」
「だから、死のうというのか?帰る場所がなければ、僕らの帰る場所が分からなくなればいいと」
「ええ、ええ、ごめんなさい・・・」
帰る場所を忘れそうだと言う船長のようになれと
「船を降下させて、子供達を下ろせ。選択肢はネイティブズに入るかチャイルドになるか、海賊になるかしかないが選ばせれば良い」
「あなた・・・」
「わかった」
「ありがとう。これで安心だわ」
いままでで一番鋭い突きを彼女が繰り出した。
本気の一撃だ。
フックも、合わせるように突いた。
「あなた・・・」
「パパ・・・」
二つの刃は僕に刺さっている。
僕は二人の間に割って入っていた。
「僕は、お前達を愛している。だから失いたくない。わが妻ながら驚くくらいの機転だよ」
「ああ、ああ、あなた、血が。もう喋らないで」
「それに、空飛ぶ女海賊なんてのもワクワクするじゃないか。僕も君がこの国に居てくれれば安心だ」
ずるり、いやな音がする。
「フック、僕は出来た父親じゃなかったかもしれないけれど。そんな僕の思い出を守ろうとしてくれてありがとう。僕には出来すぎた息子だ。産まれて来てくれてありがとう」
僕は真っ逆さまに落ちて行く。
落ちて行く僕とは逆に王様は昇って行く。
満足そう。
そして、孤独から解放される安心感からか、それとも別の何かを考えているのだろうか。
ピーターパンの泣き顔を見たのは最初で最後だった。
船長、僕は幸せだよ。
ありがとう。
「妖精は、本当にいるんだよ」
飛行船に乗る子供達に届くといいな。