黒き白銀の妖精 3話
彼女は、僕に気が付くとあの頃のままのほほ笑みをくれた。
僕は、安堵感と懐かしさでうれしくなった
「ひさしぶりね」
「僕のこと、覚えていてくれたの?」
「ええ、あの頃とは姿は違うけど。分かるわ。貴方、変わったチャイルドだったから」
「そっか」
船長との日々が胸を駆ける。懐かしくて温かで切ない日々が。
「それで?どうしたの?こんな夜更けに。みんな寝ているわ」
「ネバーランドに行きたいんだ」
「それだけ?」
彼女は全てを見透かすように目を細めた。
月光に照らされた彼女は見惚れるほど美しかった。
「君に嘘は、つかない。ピーターパンから子供たちを取り戻したいんだ」
「うそ」
「うそじゃない!」
「貴方はピーターパンを憎んでいる、殺したいとおもっている。子供は言い訳」
「そんなことは…」
「私達、妖精はピーターパンが好きだわ、彼の奏でる音色が特にね」
僕は、とりつくしまのない彼女のことは、諦めようと思った。
「でも、貴方が私の所に来たのも運命ね、時間もまたね」
「え?」
「一緒に行ってあげる」
僕は、嬉しさのあまり、この時は頭が回らなかった。うかつだったのかもしれない。
他の妖精を無理矢理捕まえるべきだった。
僕は、全ての用事を済ませた。
これで完璧だ
僕は、安堵感に包まれて家路に着いた。
ケンジントン公園を出てから、僕の家は目の前だ。
家の前にみすぼらしい奇妙な格好の男がいる。
妻になにやら話しかけ、包みを手渡すと去っていった。
僕は、家に帰りパジャマに着替えて妻に聞いた。
「なあ、さっき変な人が来ていたろ?」
「ええ、どうやら東洋からいらしたそうなんですが。貴方に、これを渡せと。そしてピーターパンに合うまでは開けるなと…」
気味が悪いな。
まぁいい。荷物の中にいれておこう。
明日も早い。もう寝よう。