タイガーリリー 6話
頬はこけ、やつれ、目の下には濃い隈ができている。
それでも、目はギラギラと敵意と戦意を失っていない。尊敬に値する。
リリーの仲間の戦士が数名、洞窟の入口で海賊と睨み合いをしている。
狙撃手は容赦なく狙いを定めている。
僕は、腰布一枚に片手に葡萄酒が入ったジョッキ、片手に川魚の串焼き。
威厳もへったくれもない。
しかし、戦士達は驚いていた。
この氷の世界で体から湯気を立ち上ることなんて彼らの常識にはない。
とどめとばかりに彼女が現れた。
戦士達は、恐らく死を覚悟しただろう。
しかし、僕は無駄死には許さない。
戦って死ぬときは、誰かを守るときだけだ。
船長たちが僕に命をかけてくれた時のように。
戦士達は、降伏してくれた。
彼らは立派な戦士だ。
名誉ある死より、生き延びる勇気を持っている。
僕らは洞窟に戻った。
戦士達は、あきれていた。
ある者は湯に浸かり、ある者は酒を飲み、ある者は本を読む。
これから戦いに赴くとは、思えない程の状況だ。
僕は戦士へ酒と料理を勧めリリーの事や状況を聞いた。
こちらは予想以上に壮絶だった。
氷の世界では猟もできず、食事さえままならない。
リリーがどこからか調達してくるものが全てだった。
恐らく王様かチャイルドが運んだのだろう。
もちろん、足りるわけもなく。食料の奪いあいが始まった。
餓死するもの、病にたおれるものが続出し、今では数名の戦士しか居ないそうだ。
彼らは仲間同士で殺し合うこと、病の仲間をたすけられないこと、静観するリリーに誇りを見いだせず。
戦士として戦いを選ぶためここへたどり着いたそうだ。
族長の言葉が今なら理解できる。
リリーは、戦士ではなく虎になってしまったのだと。