タイガーリリー 5話
銀色のしなやかで硬い鱗。
大きく雄々しい羽。
鋭い爪と強靱な顎
僕を睨み付ける凶悪なまなこ。
口からは炎が溢れている。
神々しいまでのその姿は美しい。
これが洞窟の悪魔の正体。
足元には沢山の骨。恐らく洞窟の奥には財宝が隠してあるのだろう。
恐らく僕も財宝を狙う盗賊か、名誉に目が眩んだ騎士にでも認識されているのだろうな。
地の底から響くようなうなり声をあげている。
こんな生きた伝説とやり合ったら僕の命は一瞬で蒸発だな。
なんて考えたら、なぜか笑えた。
僕はおもむろに服を脱いで、近くの水たまりに入った。
だめだ、冷たい。
その隣に移った。
だめだ、今度は熱い。
近くの石で水たまりを繋げた。
丁度いい。
鼻歌を歌いはじめた僕を彼女は不思議そうに眺めていた。
鼻歌を聞き付けて、仲間がやってきた。
彼女に驚く者、見とれる者は居ても恐れる者は居なかった。
出航するときに命を捨てる覚悟をしてきた連中だ、恐れるものは子供が失われることだけだ。
船長が湯につかり、鼻歌を歌ってご機嫌だからではない。
彼女が女性であることは本人から後で聞いた。いいオトコがいないとか、見る目がないとか色々聞かされたが価値観というか、見分けがつかない。とりあえず頷いたけど。
仲間は、ちゃんと食事も用意してくれていたので、ささやかな?宴を開いた。
彼女もイケる口だ。
この島には無い、葡萄酒が気に入ったようだ。
フラフラと飛んで行ったと思ったら山ほど自生葡萄を採ってきた。
試しに温かい窪みで潰して葡萄酒のオリを混ぜてみた。
さすがはネバーランド、この時ばかりは見なおした。
数分で甘い香が漂い、数十分でアルコール発酵してしまった。
僕達は、大いに食べ、酌み交わし、笑い歌った。
食料がなくなりかければ、村の近くまで彼女に送ってもらい調達したし、彼女も大きな魚を捕ってくれた。
そして、五日目の朝。
予想していた来客があった。