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黒き白銀の妖精 2話

 何時間、歩いただろう。


 もう足も棒のようだ。

 汗が冷気にさらされ寒い。


 僕は、なんで歩いているんだろう。


 見上げると月明かりは、静かに輝いている。


 また、僕は、歩き始める。


 遊歩道の柵にもたれて、辺りを見回した。


 静かだ。


 時計を見ると午前2時。


 鳥も虫も花も樹も眠ってる。もちろん妖精も。


 帰ろう。


 諦めるしかない。


 ふと、目に微かな光が見えた。月明かりとは違う白銀の光が。


 僕は、よろよろと光に近づいた。


 光に包まれて、一匹の妖精が月を見上げている。


 彼女は、僕に気が付くとあの頃のままのほほ笑みをくれた。


 僕は、安堵感と懐かしさでうれしくなった


「ひさしぶりね」


「僕のこと、覚えていてくれたの?」


「ええ、あの頃とは姿は違うけど。分かるわ。貴方、変わったチャイルドだったから」


「そっか」


 船長との日々が胸を駆ける。懐かしくて温かで切ない日々が。


「それで?どうしたの?こんな夜更けに。みんな寝ているわ」


「ネバーランドに行きたいんだ」


「それだけ?」


 彼女は全てを見透かすように目を細めた。


 月光に照らされた彼女は見惚れるほど美しかった。


「君に嘘は、つかない。ピーターパンから子供たちを取り戻したいんだ」


「うそ」


「うそじゃない!」


「貴方はピーターパンを憎んでいる、殺したいとおもっている。子供は言い訳」


「そんなことは…」


「私達、妖精はピーターパンが好きだわ、彼の奏でる音色が得にね」


 僕は、とりつくしまのない彼女のことは、諦めようと思った。


「でも、貴方が私の所に来たのも運命ね、時間もまたね」


「え?」


「一緒に行ってあげる」


 僕は、嬉しさのあまり、この時は頭が回らなかった。うかつだったのかもしれない。


 他の妖精を無理矢理捕まえるべきだった。


 長い黒髪を片方に結び、黒い綿毛のワンピースを着て背中には、黒アゲハの羽を持っている。


 彼女は白銀に包まれて、白銀の妖精の粉を振りまいている


 彼女の名前は、ウィンガーベル。僕に微笑みをくれた唯一の妖精だ。


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