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出航 6話

「船長、そろそろ」


 スメーが曲の合間に声をかけてきた。



 今や、僕たちの周りは妖精の粉が星明かりに照らされて眩しいくらいに輝いている。



 僕は、バイオリンの弓を高々と掲げて叫んだ


「者ども、帆を張れ!海賊旗を挙げろ!出航だ!」



 意気揚々としたかけ声が上がる。



「目指すは、ネバーランド!右の星を真っすぐ目指せ!」



 帆を張ると、すぐに風を受けて船が走り出す。


 全ての帆に風が纏う頃、船は海を離れ星を目指していた。



 連れ戻す。

 助け出す。

 想いが妖精に力を与える。

 少しでも、誰か一人でも疑えばたちまち船は落ちるだろう。



 だが、船はひたすらに空を、あの国を目指して走る。



 船長・・・。

 僕、帰ってきたよ。

 戻ってきたよ。

 船長、仇はとるよ。

 船長、僕、父親になったんだ。

 船長、僕、子供を取り戻しに来たんだ。

 船長と同じように。



 だけど、ごめんね。



 僕は船長のようには、なれない。


 子供を連れ戻す。ピーターパンを殺して。


 予定調和なんて知るもんか。


 未来にネバーランドが無くなっても子供だけの国がなくなっても構わない。



 船長、ごめんね。


 骨は拾ってあげられない。


 船長、でも、僕は今でも船長を憶えているよ。


 これからもずっと忘れないよ。



 星の合間を走ると小さな島が見えてきた。


 望遠鏡を覗くと、珊瑚礁の入り江に人魚がいる。


 山には、三角のテント。


 間違いない。あの国だ。


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