表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/73

出航 5話

 津波のど真ん中を突き破って船が飛ぶ。



 太っちょのオジさんがマストに自分を括り付けるとラッパを高らかに吹いた。



 嵐の風にも雨にも負けず、空へ吸い込まれて行った。



 僕は、バイオリンを手に取っておもむろに弾き始める。



 ストラなんとかっていう若者が奨学金の利子代わりに毎年送ってくるバイオリン。


 毎年、だんだん音色が良くなって行くバイオリン。


 家族で音色を聞いた。


 子供達は、はしゃいで踊って走り回って。


 妻は、笑っていた。


 僕は、幸せだと時間を噛みしめていた。


 そんな思い出。



 サックス、オルガン、ギター。


 色んな音色が彩りを添える。



 いつの間にか波は穏やかにメロウ達は静かに浮かんでいる。



 僕は、甲板で網にかかっている元凶をほどいてやると、氷砂糖を一つ渡した。


「星のきらめきが汝の下へあらんことを」



「海の加護が我らが航海にあらんことを」


 船員が山の幸と山の酒を入れた樽を海へ投げ入れる。



 空は、雲一つない夜空。


 晴れ渡る星空。


 僕たちは、そのまま食事にした。


 音楽を奏でながら。


 匂いと音につられてウィンガーベルが起きてきた。


 嬉しそうに鈴の音のような笑顔を浮かべている。



 僕は、見上げた。


 ポーラースターの右側の星を。


 あそこへ向かって真っすぐ真っすぐ。


 その先にネバーランドがある。



 ウィンガーベルが音色に合わせて踊る。


 妖精の粉を振りまきながら。


 僕たちに、船に、妖精の粉が光を帯びる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ