出航 4話
小さな竪琴を弾いている。
暴風雨の中なのに音が聴こえるなんておかしいにもほどがある。
とりあえず、話しかける。
「こんにちわ」
返事がないタダの屍・・・って生きてるし。
「人間である私が言うのも何ですが挨拶を返すは全ての礼だとおもいますが?ネプチューン様もオーディン様も、かのゼウスでさえおっしゃてました」
人魚はピクンと反応した。
彼女らはおイケメンが好きだ。
「部下にお茶をお持ちします。しばし、嵐を収めて下さい」
間髪入れずに船内1のイケメンがお茶を持ってきた。
あ~。メロウの目がハートだよ。
さすが、メロメロの語源だ。
とりあえず、嵐は収まっている。
スメーに耳打ちして南西に進路を支持する。ジェット気流のおかげで嵐を維持できないはずだ。
と、思った矢先に津波が押寄せてくる。
あり得ない。
「スメー、津波に穂先合わせろ。三角帆を立てろエンジン全開だ。突っ込むぞ」
「正気ですか!?」
ああ、本気だ。
津波の上に立っている人魚を見れば覚悟を決めた。
高波に横から入れば転覆だ。
正面からぶつかる方が確率が高い。
「手の空いた者は、砲撃用意」
目標は2時の方向。
「全ての砲門を開け。出し惜しみはするな」
がらがらと船が動いて行く。
「全員に伝達。全面掃射、二秒後に側面解放。それで津波を抜ける。抜けたら機関停止面舵一杯で後ろに回る」
「復唱!」
「穂先では原因のメロウが惚けている」
なんとかなりそうだな。
彼女の一族が彼女を諭す為に俺たちを沈める手はずだ。
ふふん、俺たちを舐めるなよ?
俺は、鉛で編んだ網を穂先へ投げ込むとメロウが甲板に横たわる。
「ってー!」
大砲が火を噴いた。
船は見事に津波に穴をあけて通り抜けた。