出航前夜 2話
長老は、重々しくくちばしをカチカチ鳴らしてから、ゆっくり話し始めた。
「あの子は、本当に不思議な子だった。普通、わしらが届けた人間の子は、元は鳥であっても皆人間として育つ。人間として祝福され愛に包まれて産まれるのじゃからな」
僕は、うなずいた。
「しかし、あやつは好奇心が強すぎて、あろうことかケンジントン公園に戻って来てしまった。あの頃は、自分を鳥だと思い込んでおった。そして、この島に飛んできて初めて自分が鳥でないことに気付かされた。わしは、ピーターに聞かれたよ。僕は、これからどうなるの?とな。わしは、鳥でも人間にもなれない中途半端な存在になると答えたよ。それからピーターは、飛べなくなった。自分が飛べることを疑ったからな。そして、島を出るべくアヒルに泳ぎ方を習ったが泳げなかった。最後はつぐみ達を煽てて船を作らせて出ていったよ、後のことは、わしも分からん」
僕は、パンと宝石を幾つか差し出した。ハゲコウは、光るものが大好きなんだ。
「おまえさんにも、これをやろう。ピーターにもやったよ」
長老は、僕の帽子に一枚の羽を差してくれた。
不思議と背中がムズムズする。
僕は、礼を言うと島を後にした。
成果は、あった。
ピーターパンは、泳げない。
これは大きい。
僕は、次の目的地に向かった。