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切り裂きジャックと 3話

『さ、さぁ。俺も船に乗せてくれ』



 うすら笑いを浮かべているその顔は可哀想になるくらい必死だった。



 だけど、それで罪が許されるわけではない。



「君は誰だい?」



『俺は、トーマス・アーノルド。ヤードの警視だ』



「それじゃあ、君を連れて行けない」



『なんでだ!?』



「僕の船は海賊船だ。警官は乗せられない」



『そんなの屁理屈だ!俺を乗せないようにそんな事を言っているんだな!』



 アーノルドは大きなナイフを僕に向けた。


 まだ、血がしたたっている。


 何人の女性が犠牲になったのだろう?



 僕は、彼に見向きもせずに檻の中で震えている女性の方へ歩を進めた。



『おい!話を聞け!そんなの置いて俺をネバーランドへ・・・っ!?』



 キンッっと綺麗な音をたててナイフは鈎爪で斬れた。



 僕は、檻の鍵を壊して中の女性を出してあげた。



「可哀想に、怖かったね。もう大丈夫。一緒に港へ行こう。そこから家に帰れるように手配するから。さ、おいで」



 今にも泣き崩れそうな女性の手を引き僕はその場を後にする。



 パン!



 僕の頭の横を鉛がかすめ、壁がはじけた。



『俺を無視するな!』



 拳銃を構えてアーノルドが叫ぶ。



 パン!



 軽快な音がもう一つ。



 僕の手が急に重くなった。



 僕の手を握ったまま赤い花を咲かせて、ビックリしたような安心したような表情で、ゆっくりと崩れて行く。



 僕は、とっさに抱きかかえた。



「しっかりしろ!」



 にっこりと笑顔を僕にくれて彼女は事切れた。


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