切り裂きジャックと 2話
両手を広げると、壁からうっすらとした光を帯びた影が出てきた。
ぼんやりとしているけど面影が残っている。
「みんな、ひさしぶりだね」
「トゥートルズ、もう戦わなくていいんだよ」
「ニブス、今日も元気そうだね」
「勝手に行動しちゃダメだよ?スライトリー」
「カール、もういたずらはしていないかい?」
「双子の二人、もう一人のふりは良いんだよ。名前も無くしてしまった可哀想な二人。僕が新しい名前をあげよう。君はマイケル、君はジョン。間違わないよ」
影が僕の周りに集まるけれど
顔は見えません。
だけど、泣いている。しっかり感じられる。
みんな死んでしまった。
僕が殺した。そう僕が殺した。
「みんな、よく聴いて」
僕は、腰の鈎爪に手をかけた
「産み直しなんて無いんだよ。船長から全部教わった。君らも散々試したんだろう?もう終わりにして償いの旅にでるんだ」
驚きと恐怖が伝わってくる。
僕は、僕は、泣いていたのかもしれない。
「償いが終ったら、ジョンが待っているから安心してね。僕も後から行くから待っててね」
鈎爪を横なぎに一周させる。
裂けた空気とともに、影が両断される。
地下道に風が流れた。
産声とも叫び声ともつかない音がこだまする。
風が収まると影達は消えていた。
「さよなら、おやすみ」
私はトーマス・アーノルド警視に向き直った。
彼は、媚びへつらうような笑顔を浮かべていた。