切り裂きジャックと 1話
『さて、変人のジェームズさんは、こんな処で何をされているのですかな?』
「私は、港へ向かう途中だ」
『いいや、違うね。港へ向かうのなら、こんな古い地下道を通るはずが無い。それにここは切り裂きジャックのアジトだ。ほら』
アーノルドの指差した方には身の毛もよだつような光景が広がっていた。
逆さに吊るされ股を裂かれた女達。
そして、次は自分ではないかと檻に入れられ怯える女達。
「なんてことを・・・」
『ほんとにおぞましい、しかし、これで事件は解決。変人ジェームズが切り裂き魔だった』
「なっ!?」
『ねぇ?素敵な筋書きでしょう?』
「ヤードの名誉は守られ、自分は安泰。そして忘れた頃にまた切り裂きジャックは現れる」
『なかなか察しが良いですね。さすがですよ』
「汚いな。まるで大人のように汚れているな」
アーノルドから笑顔が消えた。
「付け加えようか?産み直しなんて存在しない。仮にあったとしても汚いお前はネバーランドへは行けない。だが、僕はこれからネバーランドへ行く。大人だが汚くないからな」
アーノルドの顔が怒気で倍にでも膨らんだように見える。
「そんなことをしても怖くない。さて、健気なアーノルド。産み直しをどうやって知った?教えてくれたら船に乗せてやるぞ。もう一度言う。僕はこれからネバーランドへ行く。大人の身体でだ」
『あ、あ、ロストチャイルドが』
見当はついている。
「教えてくれたんだね?」
『ああ、ああ、そうなんだ!そいつらに命令されたんだ』
「さぁ、出ておいで子供達。僕の仲間達」