産み直し 2話
じゃぶじゃぶ♪ゴシゴシ、カチャカチャ♪
じゃぶじゃぶ♪ゴシゴシ、カチャカチャ♪
お掃除、洗濯、皿洗い。
お掃除洗濯皿洗い。
ふぅ、とりあえず終った。
甲板はさすがに広過ぎる。
それに皆がまだ寝ているし。
昨日は、本当に楽しかった。
沢山食べた。沢山歌った。沢山踊った。
そして、たくさん笑った。
いつもだったら、こんなお寝坊していたら、一番早起きの船長に殺されてもおかしくないのに。
さっき、船長室へ紅茶を持って行ったら、飲み過ぎで頭が痛いと言っていた。
海賊なのに二日酔い。
僕は、笑いをこらえて部屋を出たんだ。
今日もいい天気だ。
船長から貰った辞典に手を伸ばす。
船長の宝物だった本。
僕が大好きな本。
船長は世界辞典と言っていた。
この本には無限の知識が詰まっている。
知りたい事が次のページに記される辞書。
辞書の中に知らない言葉があれば知りたいとさえ思えば次のページに、その意味とか用法とか起源とか載っている。
そうして、無限とも思える知識が次から次へと本を閉じるまで広がり続ける。
これを使えば全てを知る事が出来る。
船長は、これで何を知ろうとしたんだろう?
もう知る事ができたのかな?だからくれたのかな。
さてと、最初に知りたい事は決まっている。
「誕生日」
僕は、辞典を広げた。
誕生日とは、ある人や物が誕生した日のこと。一般には1年のうちで、その人や物が生まれた日の応当日を指すことから「誕生月日」または「誕生記念日」を意味する日付である。人が生まれた年月日については、生年月日と呼ばれる。
また、一部の文化圏では「産み直しの日」を指す。
産まれた日か。
僕がこの船で産声を上げた日か。
なんか、変な感じ。お腹の底がくすぐったい。
今日もいい天気だ。
そろそろ皆を起こそう。
出航の準備だ。
僕は、本を閉じると大事に自分用の宝箱にしまい甲板へ走り出した。




