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産み直し 1話

 今夜は変な夜だった。



 僕は、甲板のばか騒ぎを避けて船長室の本棚から本を一冊手に取った。



 今日は、変な日だった。


 掃除当番だったのに、スメーが替わってくれたり。


 なにか皆でコソコソしていた。


 船長は、船長でそわそわしているようすで、仕事をサボっている仲間にいつものように怒る事もしなかった。



 今夜は変な日だ。


 ご馳走だ。


 ケーキまである。


 ケーキには一本だけソーロクが灯っていた。


 月明かりに負けない位明るいそれは、とても綺麗だった。


 船長が僕に願いを込めて息を吹けと言った。


 僕は、みんなと一緒に居られて嬉しいよと言って吹いた。



 それは、願いじゃなくて感想だろうと皆が笑った。


 船長も、笑ってた。



 船長が部屋に帰ってきた。


 いつもはブランデーなのに皆といっしょのラムを飲んでいる。



 船長。


 今日は、一体どうしたんですか?



「今日は、お前の誕生日だ」



 誕生日?



 ああ、本来は、産まれた日を産まれてきてくれた事、無事に生き抜いた事を親と子が祝う日だ。


 しかし、ネバーランドでは、失われた習慣だ。


 そもそもロストチャイルドには誕生日が分からないからな。



 じゃあ、なんで今日。



 今日は、お前がこの船に着てちょうど一年だからだ。


 この船の最初の子供。それがお前だ。


 だから、皆で誕生日を祝う事にした。



 そうだったんだ。



 たんじょうび・・・。



 あれ?


 悲しくないのに涙がでるよ。



 船長。ぼく、こわれたの?



「おたんじょうび、おめでとう」



 船長は、僕に一冊の本を差し出した。


 僕がいつもこの部屋で読んでいた百科事典。世界の全てが記されていると船長は言っていた。



 船長、これ。船長の宝物じゃ・・・。



 わしが息子にしてやれる事は、これくらいだからな。


 もらってやってくれ。



 はい。


 はい!船長。


 大切にします。



 さぁ、甲板に上がって楽しんでこい。


 みんなお前を祝って騒いでいるんだ。主役が居なくてどうする。



 今日くらいお前は、子供らしく


 精一杯遊んで甘えてこい。



 本を抱えた僕の背中をそっと押してくれた。


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