ジャック・ザ・リッパー 7話
アーノルドは、今夜も拳を血に染めて、いっときの空腹を潤した。
しかし、なぜか満たされない飢えのような物がお腹に溜まるようになった。
そんな夜。
路地の先へ光る小さなものが飛んで行った。
ごしごしと目をこすって見ると確かに何か光っているものが飛んでいる。
まるでダンスをするように楽しげに。
妖精だ!
アーノルドは、直感的にそう思った。
そして、その先に居るであろう王様に思いを馳せ心が躍った。
こんな気持久しぶりだ。
気がつくと走り出していた。
しかし、光る妖精はどんどん先に進んで行ってしまう。
石をぶつけてみようかとも思ったが拾っているうちに逃げられると考えてやめた。
考えるのはやめだ!
アーノルドは、走った。
何も考えず、ただひたすらに走った。
見失った・・・?
辺りを見回しても光はない。
ここは、どこだ?
路地裏にいたアーノルドは、いまは森の中に立っている。
正確には公園の中に。
公園なんかに来る事も連れてきてもらう事も無かった彼には鬱蒼とした夜の森は恐怖で満ちていた。
くそっ
ココロノ中で舌打ちをすると、遠くから笛の音が聴こえてきた。
アーノルドは、森から抜け出たい一心で笛の音を追った。
あ・・・。
沢山の小さな光に囲まれて彼は笛を吹いていた。
緑の羽付き帽、緑の服。
生意気そうで自信に満ちた顔。
そう、彼だ。
ずっと焦がれていた。
ピーターパン。
どうしてだろう?
あんなに会いたかったのに。
楽しそうなあいつを見ると何か嫌な気持になる。
なんの苦労もしてないあいつに腹が立つ。
どうして、俺は、こんなに苦労しなければならないんだ。
どうして、あいつは、あんなに気楽なんだ。
そう思いながらも、アーノルドは、ピーターパンへ近づいて行った。
妖精達が騒ぎだしたのでピーターもアーノルドに気がついた。
最初に声を出したのは、意外にもアーノルドだった。