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ジャック・ザ・リッパー 3話
アーノルド警視の幼少時代は決して恵まれたものでは無かった。
母親は、娼婦で父親は分からなかった。
そして、そんな子供を母親は疎んじた。
商売の邪魔だと、いつも外へ行かされた。
機嫌が悪いと母親もその客も少年を殴った。
少年は耐えるしか無かった。
そして、少年は歪んでいった。
少年は殴られる以外の事をしらない。
少年は殴る以外の表現を教えてもらえなかった。
少年はいつも飢えていた。
空腹と愛情に。
そんな少年にも希望はあった。
街で噂になっているピーターパンとネバーランドの話が少年の心の支えになっていた。
ネバーランドに行けば、怯える事も耐える事も無い。
楽しい冒険と御馳走、そして大人のいない世界。
アーノルド少年には希望に満ちた理想郷だった。
そう、彼に。
ピーターパンに会うまでは。
ピーターパンに出会えれば、理想郷に連れて行ってくれると信じていた。
そして、それは彼にとって残酷に裏切られた。