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お盆の奇跡  作者: 松茸
2/2

友人家族

 次の日

 ぴぴぴぴぴぴという目覚ましのアラームに起こされ学校へ。

 俺が席に行くとそれに気が付いたようで佐々木が俺のもとに向かってくる。

 「おはよ」

 「おう、おはよう」

 学校で始めて誰かと挨拶したかもしれない。そんな感動を覚えていると。

 「ハイこれ」

 佐々木から手渡される小説台の本、というか小説だった。

 「何これ」

 「昨日書いたじゃん本貸すから読んでって」

 そういえばそんな事が書いてあった気がする。

 「おう、ありがと」

 「ちゃんと読んでよね」

 そう言っても元いた場所に帰っていく。

 話口調がどうにもツンデレっぽいのはデフォなのか、はたまた単に俺が嫌いなのか。

 佐々木から渡されたのは【俺の妹がこんなに可愛いのは問題だ】という割と有名な作品アニメ化もしており1消費豚の俺は既にアニメは見切っている。

 ツンデレ妹が兄と恋に落ちるという内容で俺の中のアニメランキングではトップ3に食い込んでるほどの面白さ。しかし原作は読んだことは無く今回初めて読む。

 さて家に帰ってからじっくり読みますか。俺は借りた本を傷がつかないよう大切に鞄にしまった。

 家に帰り早速読む。読んだ感想は面白かった。

 しかし俺はすでにアニメを見てしまっているためかそこまでの感動はなかった、アニメは感動したんだよ?ほんとだよ?

 俺は明日本を返すといった趣旨の文を送り鞄に本をしまう。

 みょんみょん。

 LINKの通知音だ。このカエルが跳ねる時の効果音消えないのかな。

 『どうだった?面白いでしょ』

 面白かったと俺は打ちたかったしかし俺が打つよりも早く次の文が送られてくる。

 『既読無視?』

 なぜ読んだことがばれている、あいつエスパーか。

 『面白かった』

 『でしょ?続きもあるけど、どうする持って行く?』

 「えーとアニメ見たから大丈夫って送ればいいかな」

 俺はスマホのキーボードで文字を入力。AはどこかなA。次はNNN。

 『返信遅くない?忙しい?』

 早いよ!まったく今一生懸命文字を考えて打ち込んでるのに!早い男は嫌われるって知らないのかしら。あ、女か。

 『忙しくない。アニメ見たから大丈夫。それに佐々木の返事早くて俺のタイプスピードを超えてるから遅い』

 『妹の良さがわかった?』

 『俺は姉萌えを断固として主張する』

 『ならアニメ化してない別の持って行くから』

 『了解』

 そこから毎日佐々木は俺に妹の良さが分かると言ってラノベを持ってきた、時には漫画のこともあった。しかし俺は有名どころは抑えてる、どれも既に読んだことがあり未だに妹萌えの良さは分からない。

 今日は7月26金曜学校最後の日証拠にもなくまた別の小説を持ってきた。

 「これ読めば絶対良さが分かる」

 そう自信満々に渡してきたのは【異世界戦線】これは4年ほど前に発売されたものでアニメ化はされなかったが根強いファンが多く同人誌なども未だ多く発売してる。

 植物状態の兄を助けるべく妹が異世界で奮闘するという話。

 「あー、読んだことあるわ。家に全巻ある」

 「なんでどれもこれも読んでるのよ!もういい明日私の家来てそこで色々見せる」

 「明日はちょっとアレで」

 「いい絶対だからね!」

 反論は許さないといった風に食い気味に一括し席に帰っていくどうやらご立腹なようで息が荒い。弱ったな。

 家に帰ると、みょんみょんと耳障りな通知音。

 『明日9時に長津田駅に集合』

 『朝から遊ぶの?』

 俺の問いに対する答えは返ってこなかった。一応学校までの定期券ないだから交通費はかからないが早すぎではないだろうか。

 今更考えても返信は来ないのだから諦めよう。そう思い目覚ましを7時にセットし眠りにつく。

 

 「おっそ」

 現在時刻は9時10分時間を指定してきた本人が遅刻ってどうなのよ。

 まさかこのまま来ないフラグかな、中学校の頃あったんだよなー「12時30分学校前集合ね!」と言われ10分前から待って居たが全然来なかった、あと5分待ったら帰ろうと思い結局3時まで待って居たが誰一人として来てはくれなかった。

 はあー期待した俺が馬鹿だったかもしれない、帰ろう。

 帰る前に時間を確認、時刻は9時15分。・・・20分になったら帰ろうキリがいい。

 「お待たせ!」

 結局佐々木が居たのは25分。良かった来てくれて。

 「あー、いいよ、そこまで待ってない」

 「ホントごめん!」

 そう言って素直に謝ってくれるだけでも待ったかいがあった、息が荒い様子を見るとどうやら走ってきてくれたみたいだ。

 「じゃあ、一つだけ我が儘言わせて」

 「可能な範囲で答える」

 「コンビニ寄っていい?」

 俺たちはコンビニに入り適当なお菓子と飲み物を購入し佐々木の家に向かう。

 佐々木の家は駅から10分ほどの新築が目立つ住宅街そのうちの二階建ての一建だ。

 「あ、優美ゆうみ・・・。妹が居るけど大丈夫?」

 「え?あー、アレルギーはないよ。それにロリコンでもない」

 「違くて。小さい子供苦手じゃない、ってこと」

 「オフコース」

 家の中に入ると途端に緊張してきた。知り合いの家に入るとか初めてだし、何より女の子の家に上がり込むというシチュエーションが何か悪いことをしている気分にさせる。

 「どうぞ?上がって」

 玄関先で棒立ちになっているお礼声をかける佐々木。

 「お、お邪魔します」

 リビングに入るとエアコンの冷気と自分の家ではない匂いが俺を取り囲む。

 もう嫌だ、家でいつもの空気吸いたい。

 ソファーに座らされ借りてきた猫もびっくりすること周りを警戒し背筋は90度をキープまるで高校入試も面接試験を受けているかのような姿勢だ。

「なんでそんな緊張してるの」

「い、いや。人の家とか初めて来て。作法が分からない」

こんな事なら調べておくべきだった。

佐々木がお茶を入れている間俺はテーブルの上の雑誌の表紙を舐めるように眺めている。

〈ドキドキ男心をくすぐるしぐさ特集〉やら〈男の子がこんな仕草をしたら脈あり!〉とポップな文字でレタリングされている文字とにらめっこ。

こわ、女子こわ。女子の可愛さは作られてるんですね、やっぱり信じられるのは素肌と二次元。

ドタドタと二階から降りてくる足音が聞こえてくる。

「お姉ちゃん!お客さん来た!?」

 バーンとリビングのドアを勢いよく開いて女の子が入ってくる。見た感じ歳は小学生だろう、トプ画の幼女とは年が違うことからきっと次女だ。

 女の子3姉妹いいな、俺は一人っ子だから兄弟に対する憧れが多い。姉が欲しいそして姉に叱られたい。

 「優美!静かにしなさいよ。ごめんね、昨日友達がくるって言ってからテンション高いんの」

 「次女も同じ名前なの?」

 佐々木は頭に疑問符を浮かべている。俺の言い方が悪かったな。

 「次女と三女名前一緒なの?」

 「うち三女居ないけど」

 「トプ画写真の子は?」

 「ああ、あれは5年前のこの子。今は9歳」

 「なるほどねー」

 俺は優美ちゃんの方を向き挨拶をする。

 「初めまして。俺は加藤って言いまーす」

 手を振りながらなるべくチャラく。俺がこのぐらいの時は年上はすごくかっこよく見えたし髪の毛染めてる人はその中でも一際カッコいいと思っていた。

 「は、初めまして」

 あー癒される。きっときれいな心をしてるんだろうな。

 「何照れてるのよ」

 と佐々木がツッコミを入れる。

 「て、照れてないもん!」

 なるほど佐々木が妹萌えなのも分かる。こんなかわいい生き物が居るならそれは萌える。

 「はい、ちゃんとご挨拶する」

 「佐々木優美です」

 なにこれ持って帰りたい。

 「よろしくねー」

 しばし雑談しているとふと気が付く。

 「昼飯食べないの?」

 佐々木はバツが悪そうに視線を逸らす。

 「優美もお腹すいた」

 「いやー私料理出来ないんだよね」

 ならばご両親は?と聞こうと思ったがあまり家族の話題に踏み込むのはよろしくないな。

 「じゃあ、買ってくる?」

 そう言って外を見るがどす黒い雲が空を支配している

 「いやー今からは厳しいかな」

 「ねー」

 確かに今行けば確実に積乱雲による雨に当たる。

 「それに素麺飽きちゃったし」

 「なら俺なんか作ろうか?簡単な物なら作れるけど」

 「優美お兄ちゃんの料理食べてみたい!」

 「流石にそれは。」

 「えーいいじゃん。お父さんとお母さん今日帰ってこないんでしょー」

 え、なにそれ気まずい。ほら見ろ佐々木まで気まずそうな顔してるだろ、こういうのは気が付くとその場の空気が悪くなるんだよ。

 おねがーいと優美ちゃんが佐々木を揺する、最初は拒否していた佐々木も段々とその口調が弱くなっていく。

 「まあ、そうだけど。お願いできる?」

 妹の押しには弱いようですね、お姉さん。

 俺はキッチンを借り冷蔵庫の中を確認。トマトとキュウリ、それにニンニクがある。

 冷製パスタ風素麺を作りにかかる。

 まあ、いろいろ足りないがそれっぽい物はできるだろう。

 ニンニク、オリーブオイル、塩、ブラックペッパーそれと鷹の爪を混ぜソースを作る。

うん美味い

 次に素麺を茹でそのうちにトマトときゅうりを切る。

 素麺が茹で上がると水で冷やし皿に盛り付け完成。

 盛り付けは優美ちゃん。

 まずはお姉さまが一口。

 「あ、美味しい」

 次に妹君。

 は感想言う前にもりもり食べている。随分と美味しそうに食べてくれて作ったかいがあったもんだ。

 「なんでこんなの作れるのよ」

 佐々木がジトッとした目つきで聞いてくる。

 「愚問だな。俺は家でよく作る」

 「なに趣味とか?」

 「まあ、それもあるし。中学の頃調理実習に参加させてもらえなかったから家で作ってた」

 場が静まり返る。

 「それは。まあ、大変だったね」

 やめろそんな憐れむような目で見ないでくれ!

 腹も満たされ満足したのか佐々木はご機嫌に鼻歌を歌っている。その間に俺は皿洗い大きい皿が3枚しか洗うものがないので速攻終わらせ時間を確認。

 12時40分。

 かれこれ3時間は居るな。そろそろ帰るか。

 「佐々木そろそろ俺帰るよ」

 「早くない?」

 「でももう3時間いるし」

 「これからゲームやろうよ」

 「優美もゲームしたい」

 「優美もこういってるし、ね?お願い」

 優美ちゃんが顔の前で手を合わせてお願いしてくる。まあいいか

 「分かった、じゃあ。やろうかな」

 あれ変だな、俺まで優美ちゃんに甘くなってる。いや、待てよ、姉萌えを主張したい俺からすればむしろ佐々木本人に甘いんじゃないか?いや、それはそれで問題だ。

 そこから三人で人生ゲームで盛り上がっていると雨が降り出した。

 雨脚は次第に強くなり暴風雨へと変わった。

 「降ってきたね」

 佐々木が窓の外を見ながらぼやく。

 テレビをつけるとどうやらここ等一帯に積乱雲があるらしく今すぐに帰るというのは無理そうだ。

 「ただいまー」

 玄関から女性の声がする。

 「あれー、恵美―。誰か来てるのー?」

 「友達が来てるー」

 どうやらお母さんが帰ってきたらしい。

 リビングの扉を開け綺麗な女性が入ってくる。

 「お。イケメン。何ー?彼氏ー?」

 「お母さん透けてる!」

 そう言って廊下へと押し戻される。僕何も見てない黒い下着なんて見てない。

 「ちょ、ちょっと待ってて」

 佐々木も廊下に消える。

 しばらくすると佐々木が戻ってきた、少しばかり疲れているようだ。

 「さ、さあ、続きやろう」

 ゲームは佐々木が1位、優美ちゃんが2位、俺がびり、という結果に終わった。

 ゲームが終わったタイミングでお母さんがリビングに入ってくる。

 「いやーごめんごめん。まさか男の子連れてきてるとは思わなくて」

 「あ、お初にお目にかかります。加藤良樹と言います」

 「固くるしいね、今時うちの新人社員ももう少し砕けてるよ」

 わっはっはと大笑いをするお母さん。

 「しかもそんなチャラチャラした見た目でそれって」

 「失礼でしょ!お母さん!」

 「良く言われます」

 と苦笑交じりに俺。

 その後お母さんの質問攻めにあい俺は意気消沈。なんでおしりと胸のどっちの方が好きとか聞くんですかね。

 「あ、面白いもの持ってきてあげるよ!」

 そう言って部屋から出ていくお母さん。

 時刻はそろそろ5時になろうとしてる。雨もすっかり上がりいい天気だ。

 「あったあった。これこれ」

 手には卒業アルバム。

 「それあたしのじゃん!恥ずかしいから!」

 「いいじゃん減るもんじゃないし」

 「とゆうか、今日帰ってこないんじゃないの!」

 「後輩に仕事押し付けた。ささ見よ見よ」

 半ば無理やりアルバムの鑑賞会が開かれた。その中で佐々木の中学時代の夢などがお母さんによって暴露され佐々木も意気消沈。

 楽しかった時間はあっという間に過ぎ俺は帰路に付いた。

 家に帰ると佐々木の家とは打って変わって静まり返った空気。

 誰もいないのに騒がしかったらそれはそれで問題だが、さっきの空気に成れてしまうとどこか寂しい。

 しかし俺からしたらこれが日常だ、あの家が非日常過ぎるのだ。俺は俺の日常に戻ろう。

 そうしていつも通りの静かな生活へと戻っていった。


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