友人
かなりの駄文ですがお読みいただければ幸いです。
「熱い、これが温暖化の爪痕か」
暑いではなく熱いここがポイントだ。
俺の部屋にはエアコンはなく扇風機と開けっ放しの窓によって涼んでいる。
現在は7月21日(日曜)。俺の学校が終わるまで残り1週間を切った。
今週を乗り切れば夏休みだ。
高校生になってから初めての夏休み、バイトと親からの小遣いこの2つのおかげで俺の財布は潤っている。
1年前からこの時を待って居た。カレンダーに目を向けると大きな赤丸が8月15・16・17に書かれている。コミケだ。
コミケというのはコミックマーケットの略称で毎年夏と冬の二回開かれている日本のサブカルチャーの祭典だ。
去年は受験で行けなかったが今年は去年の分まで楽しむ。
ぴぴぴぴぴぴ
目覚ましの機械的な電子音が俺の部屋に響く。そろそろバイトの時間か。
俺はさっさと着替えバイト先に向かう。
俺のバイト先はドラックストア、一応はチェーン店。
俺がヤードに入るとどうやら店長が休憩時間なようで煙草を吸っている。
「お、加藤君今日人少ないけど前みたいに大あくびしないでね」
「了解です」
店長は気さくな人だパートさんや他のアルバイトの人からも慕われている。カリスマ性とでもいうのかもしれない。
その後はいつも通り言われた仕事をこなす基本はレジ。レジはやることが少なくてとても楽、俺は好きだしメインの仕事もレジ。これがwinwinの関係というやつなのかもしれない。いや違うか。
4時間の業務を終えヤードに戻るすると声が聞こえてくる。どうやら同じ学校の同僚飯田が他のバイトと話しているようだ。
「この前加藤がさ2組の子に告白されてるの見かけて、あいつ振るとき『あ、そういうの良いんで。ドッキリっすか?』てまず言うんだぜ、何かっこつけてんだよ」
「うわ、きも」
二人の笑い声がヤードに響く。
勿論今の話題の加藤は俺だ。自分でも自覚はあるがそこそこイケメンだ、女の子に告白されたのも1度や2度ではない。それこそ下級生から上級生、逆ナンだってされたことがある。
「お疲れーッす」
「お、お疲れ」
「じゃ俺上がりなんで」
そういって帰り支度をしヤードから出ていく。
こういうのには慣れている大体振られた女が男友達に話すのだ。話を二割三割増しで。そうして俺の周りからは人が離れていった。俺が友達だと思っていた人は嫉妬や周りからの目に耐えられなくて居なくなる。いつしか俺は人が信用できなくなった。
友情とは空想の物だ。自分にそう言い聞かせ一人で生きてきた。
「ただいまー」
「あれ、今日はバイト?」
母親がキッチンから顔を覗かせて聞いてくる。足元にはキャリーケース。
「そうだけど、どうしたの」
「お母さんこれからお父さんの所に行くから丁度よかった。帰ってくるのは1週間後くらいかな?それまで留守番頼める?」
「ああ、分かった。お土産よろしく」
「じゃ、火には気を付けてね。それと食費はテーブルの1万円ね、いってきます」
これも慣れっこだ小学生の頃から父親は単身赴任している今は国内だが海外に行く事もしばしば。それに母親が旅行感覚でたまに着いて行く、俺はも長期休業の時は行ったりしていたが最近は行かない。
翌朝目覚ましよりも早く目が覚めた。時間を確認すると7時11分。目覚ましよりも4分速い、お前の存在価値をなくしてやったぜ!フハハハハ。といった感じでアラームを解除。実に気分がいい。
朝飯を食い学生服に袖を通す。
ワイシャツが体に張り付く不快感を感じながらも家を出る。
「今日も暑いな。」
学校に付くと鞄から読みかけのラノベを取り読書に励む。中身を見られたら・・・。という不安を最初は抱いていたが今や俺のカーストは最下層これ以上下がらない。それにせいぜいこの1年の付き合いの奴らに気持ち悪がられようが避けられようがどうでもいい。
何ページか読むと先生が入ってくる。
「はーい、席に座れー」
この一言から俺のクラスのホームルームが始まる。俺的には朝の会の方が馴染み深いが高校ではなぜかホームルーム。学校の七不思議とかに入れればいいのに。
「明日皆も知っていると思うが開校記念日で学校は休みだからな。それに部活は明日は全面禁止だから学校に間違ってくるなよ」
明日休みなのか。知らなかった。
周りでは明日の予定を話し合っている部活動も休みということで仲の良いもの同士で遊びに行くことを計画しているようだ。
『明日カラオケ行こうぜー』『スイパラ行こうよー』『遊園地行こうぜ』
と周りからは聞こえてくる。俺は秋葉にでも行こうかな。
俺の家から秋葉までは片道40分程度、決して近いとは言えない。普段はあまり行かないが明日は平日ということもあり空いているだろう。それに昨日発売した【狐娘ルル】のフィギュアが買いたい。
放課後になり明日に対するクラスの熱が最高潮になっている夏休み前の休みということで浮かれているのだろう。その中で一際目立っているグループがある。
「どうするよ明日」
「遊園地か海で割れてるな」
「俺は海が良ーい俺のビーチバレーテクニック見せてやる」
「イー君はサッキーの水着が見たいんじゃないの」
「飯田お前・・・。エロイな」
「チョ、違うからー」
リア充の顔面解けないかな。俺は心にそんな殺意を宿しながら帰路に付く。
さっきのイー君(笑)通称飯田は俺のバイト先のアレだ。何の因果か小学校からの幼馴染。まったく遺憾である。
それに俺は小学生のころあいつにイジメられていた思えばそのころから人間不信だったかもしれない。
まあ、俺には関係ない事だ。さっさと帰ってアニメを見よう。
俺は歩くスピード速め家へと帰った。
翌朝今日も目覚ましよりも早く起きた。ざまあ、お前の存在価値を・・。これ昨日もやったな。今日は普通にアラームを切り、着替える。
朝飯は久々にファストフードで済ませる。この体に悪そうな味がうまい、最近は異物混入とかニュースになるけどファストフードには愛って異物が入ってないから代わりに物理的に入れてるんだよきっと。
腹も満たされ時計を見ると11時前、そろそろ行こうかな。
それから片道40分電車に揺られ秋葉原に到着。
最後に来たのはいつだったか、欲しいものはネット通販で済ませることが多かったせいもあり足が遠のいていたな。
最初に向かうはメイドカフェ行きつけの店だ。平日ということもあり人はあまりいないがちらほらと小太りなおじさんが座っている。
数名はメイドさんと楽しくゲームをしている、よくもまあ平日の昼からこんなところに居るもんだ。
席に案内され萌え萌えオムライスを頼み運ばれてくるのを待つ。久々に来たこの店は内装は変わっておらず相変わらず店員さんのレベルも高いきっと店長が良いのね。
「加藤君久しぶりだねー」
と後ろから声をかけられる。見た目20代後半なのに実年齢アラフォーの女店長木村さんが立っている。相席いい?と聞かれ席を進める。
「最近全然来てくれないから脱オタしたかと思ったよ」
「何言ってるんですか。俺からオタクを取ったらただの冷めた人になるでしょ。」
陽気な外国人の様に肩をすくめる。
「それまだやってたのかい」
「教えてくれたの木村さんじゃないですか」
店長曰くこれは酒の席では割と盛り上がるらしい。今までの人生で木村さんにしかやったこと無いから真相は定かではない。元ネタはロバートデニーロ。
「君とは長い付き合いだね。もう3年か早いなー」
「まだ3年ですよ」
俺がこの店に初めて来店したのは3年前。その初来店で注文を間違えられ挙句つまずいたバイトの子にオレンジジュースを頭から掛けられたことをきっかけに仲良くなった。
「お待たせしました」
注文していたオムライスが運ばれてくる。これ1個で900円は高いと毎回思うが木村さんと話す代金と思えばさほど高く感じないから不思議だ。
「ケチャップでなんて書きますか?」
「そうだな、店員さんにおまかせします」
「えーとじゃあ」
そういって、ショボーンの顔文字をオムライスに書いてくれた。
最近ではこういうサービスをやらない店があるらしいがそれは果たしてメイド喫茶と言えるのだろうか、それはもうメイドの洋服を着たホステスではないだろうか。
「美味しくなーれ萌え萌えギューン。どうぞ召し上がれ」
一口食べ。
「ありがとう、君のおかげで100倍美味しくなったよ」
とキメ顔。
メイドさんはみるみる赤くなっていき「あ、いえ、とんでもない」と素に戻って厨房に帰っていった。
「加藤君やめてよ、他のお客様に迷惑でしょ」
「これぐらい良いじゃないですか」と笑ってごまかす。
「君が来ると君の所にばっかり水持ってくる子がいるのよ、今は新しい子ばっかりだけど休日はやめてよね」
「善処します」
会計を済ませ外に出る。むわっとした熱気が一気に体を包み込み先ほどまでの涼しい室内空気を掻き消す。
「さっさと買って帰りますか」
自分に勝を入れ目的地に向かい歩き出した。
結論から言えば【狐娘ルル】のフィギュアは買えた。しかし狙っていたポージングのタイプは既に売り切れており仕方なく別タイプとなってしまった。くそ俺の2つ前で最後の1個買ったあの男、孫の代まで呪ってやる。
だがこのタイプはこのタイプでまた良い。
俺が欲しかったのはデフォ、とでもいうのだろうか良くポスターなどで見かけるポーズしかし今回買ったのは片足がつま先立ちで振り返りざまといった感じの奴だ。
いい買い物をした。
鼻歌交じりに秋葉原の中でも目立つ青い看板が目印のサブカルチャー店に入る。そこでどこかで見た女子を見かけた。
はてどこで見たかな。一応記憶力に定評(自分から)がある俺だがどうにも思い出せない、最近見た気もするしかなり前だった気もする。もしかしたら初対面かもしれない。
だが一つ言えるのはこの場にあっていない格好ということだ。服装はホワイトブラウスにジーンズの短パン足は編み込みのサンダル。渋谷とかに出没してそうな今時な女子。
顔もかなり美少女の部類に入るのではないだろうか。
あまりのも見すぎていたせいかこちらの視線に気が付き近づいてくる。
「ちょっときて」
そういって腕をつかまれ店を出される。
最悪だよ、俺今財布に3000円は入ってるんだよな。カツアゲってカードまで取られるのかな。
「なんで居るの」
「あのーこれで許してもらえないでしょうか」
向こうが何か言っていたが無視して三千円を手渡す。キャッシュカードは死守せねば。
「は?」
向こうが唖然といった表情をする。これでは足りないのか。
「いや、もう400円ぐらいしか入ってなくて。ほんとこれで勘弁してもらえないでしょうか」
「私のこと分かんないの?」
「あ、もしかしてモデルとかの方ですか。いやー流石おきれいですね、お歳は?いや女性に年齢聞くのはダメか。忘れてください。それより実に綺麗ですねホントいやホント。ナンパとかされるでしょう。俺もあなたみたいな方見たらついつい声かけちゃいますよ。いや実におきれ「うっさい!」・・・はい」
「本気で言ってるの?」
「本気で可愛いと思いますよ」
頭痛を堪えるかのように眉間を抑える。そして大きなため息。
そんなに有名な人なのか。今度ドラマでも見てみよう。
「あなたと同じクラスなんだけど」
「あ、あー言われてみれば。た、高橋さん?」
「多そうな名前言って当てようとしたでしょ」
「・・・。いいえ」
「佐々木よ。さ・さ・き。佐々木恵美。分かんない?」
「これはこれは、ご丁寧に自分は加藤良樹と言います」
と深々お辞儀する佐々木もつられてお辞儀し返す。
「違くて!なんで分かんないのよ!学校始まって3ヶ月以上たってるのに」
「いや、クラスの人とか話したことないし」
「呆れた。」
本当に呆れている様で深々とため息をつく。
幸せ逃げちゃうぞ。そんな事よりやはり最近どこかで見た気がする。なぜ思い出せないのか、きっとこの暑さのせいだろう一応は今いるところは日陰だが室外機の風でむしろ熱い。一刻も早くこの場から立ち去りたい。
「じ、じぁ。俺はこの辺で」
「え、ああ。うん」
そそくさと店内に逃げ込む。店内に足を踏み入れた瞬間に訪れる冷たい冷気。ああー心が浄化される。夏はやっぱりエアコンだよね。俺の部屋にはないけど。
俺の目的の品は新刊のラノベ。一回の平台に置かれているからすぐに発見できた。その中から一冊取り購入。帰りに店員さんに笑顔でお礼を言って出てくる。ナイスガイ俺。
再び外へ、外に出るのは本日三度目それでもなれないこの暑さ。まったく嫌になっちゃうね!
「いや私連れと来ているので」
どこかで聞き覚えのある声。振り返ると佐々木がお兄さん二人に声をかけられていた。見るからに頭の悪そうなお兄さん。なんで秋葉でナンパ、渋谷の方があそこも頭もゆるゆるなな姉さん方捕まえられるだろうに。
周りの人は見て見ぬふり。まあ妥当なところだろう、俺だって見て見ぬふりしたいけど困っているのが知り合いだったとしても他人だったとしても見て見ぬふりされるのは辛いものがある。
「あのー。連れに何か?」
「あ?なんだよお前」
二人のうち一人が俺に質問してくる。
「あ、あー。自分高橋というものでして。そこのミーちゃんの彼氏です。あ、ミーちゃんっていうのはそこの彼女で下の名前が美香なんで美香のミをとってミーちゃんなんですよーそれでですね僕のことはタカくんって呼んでくれて、もう可愛くてかわいくて。あ、この前取ったプリクラ見ます?ちょっと待ってくださいね、探すんで。」
俺がべらべらとまくし立てるように話をし時折気持ちが悪い笑みをこぼす。
「もういい、行こうぜ」
二人は歩行者天国の中に消えていった。
「はー緊張した」
全身の毛孔から一気に汗がにじみ出てくる。膝は震え横隔膜も痙攣をおこし声が震える、チキンな俺にナンパ撃退はきついものがある。
「なんでいるの」
「え?出てきたらちょうど絡まれてるの見かけたから」
まだ声の震えは収まらない。
「そんなに怖いなら見て見ぬふりでもよかったじゃん!」
「困っているひと見捨てるってしたくないじゃん。言うなれば自己満。でも彼氏って言ったのは失言だった。ごめん。」
やっと余裕が出てきて彼女の顔を見た。彼女は目に涙をためていた、そりゃ怖かっただろうそのまま連れていかれる可能性も無きにしも非ずだったのだ。まあそうならなくて良かった。
俺は彼女を落ち着かせるために駅前のファストフード店に入る。先に彼女を席に座らせ俺は飲み物を買いに。
女の子が何が好きなのか分からなかったので取りあえずシェイクとオレンジジュースを買う。どちらも嫌いな人は居ないはずだ。
席に戻ると佐々木は落ち着いたようで外を眺めている。
「おまてせ」
噛んだ恥ずかしい。
「っぷ。ハハハ!なに、おまてせって。ハハハ」
「い、いいだろ!噛んだんだよ。そんな事よりシェイクとオレンジジュースどっちがいいまたはその他でもいいけど」
「じゃあ、オレンジジュースもらおうかな。あ、そうそうお金」
そういって鞄から財布を取り出す。だがここで奢るのが男ってもんだ。良くは知らないが少なくともアニメの中の男は奢っている。
「あ、いいよオレンジジュースは間違えて買っちゃったから、逆に飲んで」
そういってオレンジジュースを差し出す。
「いや、悪いし。出させてよ」
「俺の経済力舐めないでもらおう。まだ財布に2000円はある」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
最初からそう言って受け取ればいいのに、最近の子はダメね男心がまるで解ってない。え?俺も女心が分かってないって?ほっとけ石原○純の天気予報より分かるわい。
「私さ今日初めて秋葉来たんだ」
「だろうね」
「で一人で外出するのも高校になってからは初めてなんだよね」
無言で次の言葉を待つ。
「いっつもはさ、愛里とかと遊びに行くんだけど今日はみんな海に行っちゃってさ。でも私行けなかったんだ飯田君がグイグイ来るのが嫌で」
「は?飯田?」
思い出した!昨日飯田たちと海に行くか遊園地に行くか話しているのを見かけたから見たことあったんだ。
「知らない?飯田君。髪の毛ブラウンで・・・。」
「飯田は知ってる。あー佐々木ってサッキーって呼ばれてる?」
「今気が付いたの?」
「だから最初に知らないって言ったじゃん」
「言ってないよ」
「あれそうだっけ」
しばしの沈黙。彼女の視線の先には先ほどの男たち別の女の子に声をかけている。
なぜそこまで彼らは秋葉にこだわるにか、秋葉より池袋の方が女の子多いだろう。俺の偏見では池袋にはオタク女子がわんさかいる、それはもう池袋市民よりもわんさかと。
「そういえばその箱なに」
突然話を振られ我に返る。
「ああ、これ?ふっふっふ見て驚くなよ」ともったいぶって紙袋から俺の嫁【狐娘ルル】のフィギュアを取り出す。
「お、ルルじゃん。私ネネ派なんだよね。」
ネネというのは【狐娘ルル】の妹【猫娘ネネ】のことだ。なぜ姉は狐なのに妹は猫なのか。ちなみに母も居り【犬娘トト】父は不在。
「どうやら君とは趣味が合わないようだ」
「妹の良さが分からないわけ?呆れた。ホントに男なの?」
「失礼な俺は妹萌えより姉萌えなだけだ。佐々木こそ姉萌えの良さが分からないか」
「なに言ってんの妹の方が萌えるじゃん!」
そこから俺たちの討論はヒートアップしていく。
俺は姉萌えについて熱弁し佐々木は妹萌えについて熱弁。両者一歩も譲る事無く思いを吐き出した。
結局佐々木が熱くなり俺が妹萌えの良さを理解しないことに涙を浮かべたのでなき崩しといったふうに俺が折れ和解。
泣くなんてズルい。女の子の涙には勝てないと痛感した。
「分かればいいのよ分かれば」
と得意げに胸を張る。
元々小さい方ではない胸がより一層強調され目のやり場に困る。
目を逸らすついでに壁にかかっている時間を確認。
時刻は2時を回っているそろそろ帰るか。
「じゃ、俺かえるわ」
「私も帰ろっと」
二人で店を出る、太陽が真上までのぼり気温は今朝よりも格段に上がっている。
時間的には気温は今がピークだろう。
「じゃ、グッバイ」
「ちょ、ちょっと」
と呼び止められる。なんだよまったく。
「なに?忘れ物?だからお母さん見せ出る前席確認しなさいって言ったでしょう?」
「違くて。連絡先教えてよ。折角話の分かる人に出会ったのに」
「メアドでいい?」
「LINKとかやってないの?そっちの方が楽なんだけど」
LINKっていうのは最近中高生の中で連絡に使うSNSだ。スタンプの数が多く今時学生には必須アプリ。
「ダウンロードするから待って」
俺は今やアラーム機能すら使わなくなったスマホを取り出しスイスイーと言った感じでアプリを探す。俺のスイスイーっとしたスマホ操作に佐々木が「だっさ」と言ったのは無視しておこう。
ダウンロードが終わり佐々木にスマホを手渡す。
「え?なに」
「やり方分からない、から頼んだ」
「ケータイ人に渡すってどうなのよ」
と苦笑交じりに言っているが声のトーンは上ずっている。頼られるのが好きとさっきの討論で言っていたからな俺に頼られるのが満更でもないのだろう。
「はいできた」
画面には恵美という連絡先、トプ画と言われる小さな写真の部分には雪だるまと幼女。
は、まさか佐々木の妹好きは度を通り越して幼女を盗撮したりするのか!
「それうちの妹可愛いでしょ」
「そうだね」
合法的な写真だった。
そして本当に解散。今日は有意義なひと時を過ごせた。
夜になり俺のケータイから聞きなれないみょんみょんという電子音が鳴る。
最初は不調かな?と思ったがどうやらLINKの通知音だったようだ。
アプリを立ち上げると恵美という連絡先から赤丸で3となっている。
そこを開くと3つの文が送られている。この赤丸は文の数が書かれるのか。
『今日は楽しかったー(^^)』
『学校でも話せたらはなそー』
『あと今度妹萌えのラノベ持って行くから絶対読んでよね』
わざわざ分けなくても句読点で何とかなるだろうに。最近の子は句読点端知らないのかしらおじさん心配!
『了解。俺も楽しかった』
これでいいだろう。送信。
自然と口元が緩み笑みを浮かべている事を隠すかのよう俺は眠りについた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
こんな駄文ですが一応は続けます。
誤字脱字等は各自で補って読んでください(笑)