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歌姫様は男の娘!?  作者:
第1章
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プロローグ

閲覧いただきありがとうございます。

文章投稿自体が初めてのため、色々と拙い部分があるかとは存じますが、楽しんでいただければ幸いです。


※この話には一部強姦シーンが含まれます。直接的な描写は避けたつもりではありますが、苦手な方はご注意ください。

 目も眩むほどに輝く照明。

 ざわざわとさざめく様々な音。

 期待に満ちた、人々の顔。


 全て、長年夢見た光景だった。

 その様子をステージの袖からそっと覗き見て、思わず熱い息を漏らす。


 この人たちは、本当に私の歌を聞くためにここへ来ているのだ。


 その実感が、本番直前のこの時になって漸く湧いた。そんなあまりにも愚鈍過ぎる自分に、頭の片隅に僅かに残った冷静な部分が呆れている。


 しかし、大半の部分は、夢が叶えられた興奮とこんなに多くの人の前で歌うことへの不安とでごちゃごちゃになっていた。

 もう後1分もすれば本番の合図がある。そうすれば、私は彼らの前に立って、歌声を披露するのだ。

 先月まで普通の女子高校生だったこの私が、である。

 

 凡人の私が高校生の内に歌手としてプロデビューできたのは、親友のおかげだ。

 それなのに、私は今から一人で彼らの前に立たなければならない。


 これまでずっと親友とコンビで活動してきた私にとって、このライブは初めての単独行動だ。でも、このライブの成功にはコンビを組んでいる親友の将来も掛かっている。

 そのことが、私の心を重くした。


 親友の如月晴香は、黒髪を三つ編みにし黒縁の眼鏡をしているという、如何にも優等生といった風貌の美少女だ。

 性格も、外見を裏切らない真面目な優等生で、勿論、成績も優秀。

 そのうえ、運動も得意で面倒見も良いから、1年生の頃から3年生の現在に至るまでの三年間、連続で学級委員をしている。

 寧ろ、生徒会に入っていないことが不思議なくらい、カリスマ性に溢れた子だ。


 それでいて絵を描くことも上手く、歌手を目指す私とコンビを組んで動画サイトに投稿する動画のイラストを担当してくれていた。

 私たちの動画の人気は、彼女のイラストが有ってこそだと私は思う。


 一方私はと言えば、運動も勉強も普通よりちょっと下。

 見た目もこれといった特徴がないし、人の面倒を見るどころか、鈍くさいから人に面倒をかけるばかりなおっちょこちょい。

 歌だけは誰にも負けたくないと思っているけれど、上手いかと言われると自分ではどうとも言えない。


 そんな天に二物も三物も与えられている天才少女と凡人の私では、一見接点が見当たらないように思える。でも、私たちは夢へかける情熱は同じだった。

 晴香はイラストレーター、私は歌手に絶対なるのだと語り合った日から、私たちは最高のパートナーであり、お互いの一番のファンになったのだ。

 類は友を呼ぶ。私たちの関係を表すとすればそんな感じだろう。


 親から夢を否定されているという境遇が同じことも、私たちの絆を強くした。


「何時か二人でプロになって、親を見返してやろう」


 それが、いつの間にか私たちの口癖になっていた。

 でも、それは大人になってからの話だろうと私は漠然と思っていた。

 

 それなのに、冗談とその場のノリで投稿した動画が話題になって、テレビにまで取り上げられたのだ

 世の中とは、本当に何が起こるか分からないものである。


 その動画をきっかけに、私は芸能事務所にスカウトされ、晴香も晴香で大手出版社から声がかかったらしい。

 結局は、コンビを続けたいと言う私の我が儘を叶えるために、晴香も芸能事務所に所属することになった。


 こうして私たちは、『DREAM』というチーム名で活動を始めた。


 今日は発売したCDがまさかのオリコンチャート1位を獲得したことを記念して開催されたライブである。

 今までもテレビ出演やレコーディング、ファンとの握手会と色々な活動をしたけれど、ライブを行うのは今回が初めてだ。

 ここで浮上したのが、歌がメインのライブに晴香を参加させるか否かという問題である。

 

 私は、司会者とかトーク時間のゲストとかで良いから晴香に参加して貰うつもりでいた。

 私たちはコンビなんだから、それが当たり前だろうと思っていたのだ。

 それなのに、本人が口にしたのはライブへの不参加の意志。


「私の仕事は、葵の歌をイラストとして目に見える形にすることだよ。だから、そろそろ私は裏方として露出を控えるべきだと思うんだ」


 そんなことはない。私たちはコンビなんだから、晴香にも表に出る権利がある。そう反論をしようとしたけれど、彼女の目は既に決意を固めていることを物語っていた。

 晴香は一度思い込むと意見を変えることはない。

 それを良く分かっていた私は、言いたかった言葉を飲み込むしか出来なかった。


 でも、本当にこれで良かったんだろうか?

 そんな言葉が頭を過ぎる。この会場に集まって来てくれている人々は、私のファンだけじゃない。

 晴香のイラストに惹かれ、彼女に会うことが出来ると期待してやって来ている人も確実にいるはずだ。

 それなのに、このまま私だけが出て行って歌っても、彼らは満足してくれないんじゃないか。


 そんな疑念が、夢の舞台を前にして高揚する心へ水を差す。


 ふと、無意識のうちに握り締めてしまっていた拳へと暖かいモノが触れた。

 弾かれたように、その手の主へ振り返る。

 するとそこには、優しい目をした晴香が立っていた。


「は、はるか」

「大丈夫。葵の歌声なら、彼らを満足させるなんて簡単ですよ」


 まさしく、藁にも縋る思いで親友の名前を呼ぶ。その声すらも滑稽なほどに震えていた。

 自分で思っていた以上に、不安が身体を支配していたらしい。

 こんなことじゃ、晴香にも呆れられてしまうかもしれない。そう思うと、身体が強張った。


 でも、そんな情けない私の姿を見ても、晴香は呆れるどころか、益々優しい表情になり、右手に添えていた手とは反対の手も使って私の両手をそっと包んでくれた。


その手のぬくもりと、絶対の自信を持った彼女の瞳に、自分の身体から余計な力が抜けるのを感じた。


そうだ、なにを恐れる必要があるんだろう。私には、なにがあっても絶対に私の味方でいてくれる人がいる。


 それに、舞台には一緒に立てなくても、彼女の分身であるイラストが、私のバックモニターへ映し出されることになっているのだ。

 なら、私は一人じゃない。


 彼女がいる限り、私は絶対に大丈夫。


 そう確信して顔を上げると、私の調子が戻ったことを悟ったのか、ほぼ同時に晴香が手を離した。


「晴香!私、行ってくるね」

「行ってらっしゃい」


 タイミングよく送られてきたライブ開始の合図に合わせ。

 私は、夢の舞台へと駆け出した。


 それは、本当に夢のような時間だった。

 キラキラ光る照明は、まるで宝石のようだったし、私のことを応援してくれるファンの声援は、どんな音楽よりも私に力を与えてくれた。

 掛け替えのない親友も見守ってくれている。最高の晴れ舞台。




 なのに、なんで私は今、こんなことになっているんだろう。


「ハアハア、カワイイカワイイヨ、アオイタン!」


「ひっ!」


 なにか言葉を呟きながら、身体を嘗め回す男の悍ましさに、私は短い悲鳴を上げた。

 どれだけ現実逃避をしてみても、どうやらこの悪夢は終わってくれないらしい。

 そのことに、私は心から絶望した。


 悪夢の始まりは突然だった。


 ライブからの帰り道、買い物をしなければならないと言う晴香を、私はコンビニの前の公園で待っていた。

 そこを、この男に襲われたのだ。


 この辺は人通りが多いから大丈夫だろう。そう油断したのがいけなかった。


 最悪なのは、軽くて力の弱い私は男に軽々と抱え上げられてしまい。人目に付きにくい茂みの中へ引きずり込まれてしまっていることだ。

 これでは、誰かが通りかかっても気づかれないかもしれない。

 いや、気づいてもスルーされる可能性が高い。


 しかも、恐怖のあまり喉が狭まっているのか、自慢の大声さえ出せないでいる。


 その結果、碌な抵抗もできない私は、男のいいように服を脱がされ、今はほとんど全裸の状態だ。

 そんな私の全身を、男は好きなように弄ぶ。

 その感触の気持ち悪さに、吐き気がした。


「アオイタン、アイシテルアイシテル。ダカラ、オレノコドモウンデ」


 必死で吐き気に耐えていた私の耳には、男の言葉は意味が理解出来ない外国語のように聞こえる。

 実際には言葉は分かっているけれど、それを理解することを脳が全力で拒絶しているのだ。


 これは夢だ。きっと、目が覚めたら家のベッドの中にいる。

 そう現実逃避をして、自分に起こっている出来事を考えないようにしていた。

 そんなことをしても、どうにもならないことくらい分かってはいたが、他に選択肢が無いように思えたのだ。


 現実を見ることを拒否している私には、男が自分に何をしようとしているのか、きちんと分かってはいなかった。

 けど、男がズボンから取り出した肉塊を、私の股間へ宛がってきたとき、本能的に嫌だと感じた。


 それは、絶対に受け入れられない。受け入れたくない!


 そんな強い拒絶の感情が、凍りついていた私の喉へ機能を取り戻させた。


「い、いあ…いやーーーーーーーー‼‼!!!」


 長年の練習で培ってきた肺活量と声量をフルに発揮した私の声は、公園どころかこの近辺一帯に大きく響き渡った。

 そのおかげだろうか、遠くからざわざわと人の声も聞こえる。


 しかし、私はそれを認識することもできないまま、ただただ叫んだ。

 助けを呼ぶとか、そんなことも考えられない。ただひたすらに思ったことを言葉にして、暴れて、全力で、全身で、男を拒絶する。


 けれど、それをいつまでも男が許してくれるはずもなく、私をとにかく黙らせようと考えたのか、男が首を思いっきり絞めつけてきた。

 その圧迫感に、声を出すどころか、呼吸することさえできなくなる。


「ダマレ、ダマレ、ダマレ‼!」


「ぐっ………」


 男は私ほどでは無いにしろ、自分も十分大きな声をあげながら、只管私の首を絞めつける。

 その手を離させようと試みて暴れても、びくともしない。

 恐怖だけではなく、生理的な意味でもあふれてきた涙で、男の顔がボヤける。


 苦しい、苦しい、苦しい。嫌だ、死ぬのは、だれか、たすけ


「葵、葵、どこにいるの、葵!」


 薄れる意識の中、遠くから私を呼ぶ晴香の声が聞こえた気がした。


ここまで閲覧していただきありがとうございました。


お話を進めるには強姦シーンが必要だったので書いたのですが、鬱っぽい感じで終わってしまったので皆さんがどう思われたか心配です。

いちよう直接的な表現は避けたつもりなのでR15で良いと思うんですが、どうなんだろ。


それはさておき、ここから頑張って連載していこうと思っておりますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。


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