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夢見たっていいじゃん!!!!  作者: YUKARI
第二章 再会
8/27

8 彼氏が出来ました。

 あたしも中学3年生になりました。

 そんなあたしにも受験と言う大きな壁にぶちあたる時期なのですが、行きたい高校があるわけでもなく(入れる学校が無いとも言う)やりたい事もあるわけでもなく。


 だけど1つだけ、願いが叶いました。

 恋が出来ないと嘆いてたこのあたしに、ついに……ついに! 好きな人と言うか彼氏が出来ちゃいました!


 梅雨も終わって暑くなって来たそんな日、今日はデートの日。

 あたしの彼は、会うと頭をポンポンと撫でながら、甘やかしてくれて凄く優しい人。


「幸。今日のキスがまだだよ?」

「じゃあ。いっぱいキスして?」


 上目づかいでめいいっぱい、彼に甘えてキスをねだってみる。

 こんな毎日だったら、この人が居れば高校なんか行かなくてもいいかなぁ? なんて考えちゃってたりして。


「今日は甘えん坊さんだね。幸……大好きだよ」


 ちゅっと音を立てながら、おでこ、頬、唇にキスがふってくる。


「んっ」

「──幸っ!!」


 優しく彼はあたしの名前を呼んでくれてるけど、彼があたしの唇を離してくれないから返事が出来ない。


 ……苦しい? こういう時はどうやって、いつも息をしてるのか何故か思い出せない。

 息が苦しくなって我慢が出来なくなって、思わず彼の胸をポンと押す。 


「い、一回……離れて!」


 あれ? 真っ暗? それに、まだ息苦しい。

 ……それに、あたしってばキスなんてした事あったけ? あたしってば誰とキスしてるの?


「んぐぐぐぐっ! 一体なんなんだよ!」


 抵抗するように暴れると、急に目の前が明るくなって息苦しさもなくなった。


「あれ?」


 天井は見覚えのある、あたしの部屋。

 

「夢ですよねー! あはは。高校に行かないのは流石にヤバいって」


 ガタンとベットの下から物音が聞こえて、ビックリして飛び起きるとうずくまってる兄ちゃんが居る。


「兄ちゃん?」

「いででででで……せっかく起してやったのに、久々の兄ちゃん突き飛ばすとかありえないだろ」


 座る体制に身体を戻してる兄ちゃんの上には、クッションが乗っかってる。

 あぁ……それを、あたしの顔に押し付けてたのか。


「起こしてやったって、そのクッションのせいで息が出来なかったんですけど! で、なんで、兄ちゃんが家に居るの?」


 兄ちゃんは高校卒業した後、美容師の専門学校に入学して学校の近くのマンションで一人暮らしを始めてからは、忙しいみたいで家に帰って来るなんて滅多になかったんだけど。


「後で、その話はするから、今日は早めに帰って来いよ? それより、なんで俺が、お前にキスなんかしなきゃいけないんだよ」

「へっ?! な、な、なっ?!」

「だから、クッションが代わりに……おっと! 早くしねーと遅刻すんぞー」


 兄ちゃんに枕を投げつけると見事にキャッチされ、笑いながらあたしの部屋を出てった。

 な、なんか寝言でも言ってたのかな、あたし。


「やばい! 本当に遅刻する!」


 ******


「さぁちっ! おっはよーっっ」


 登校中のあたしの肩をペチッと叩いてきたのは、今年は同じクラスになった里香。

 ついでに、池山も同じクラス。


「そういえば幸、高校は決めたの?」

「あたしの頭じゃねぇ……」


 里香は同じ高校に行こう。って言ってくれてるんだけど、あたしもそれが出来たらどんなにいい事かと思うんだけど、必死こいて勉強しても無理な気がする。


 それに最近、都会に買い物とかに行くとモデルのスカウトとかされるようになった。

 勿論、()だと勘違いされて。

 女としてスカウトされてれば、大輔くんとノブくんが行ってる翠玉スイギョク高校の芸能科的なコースに行けたかもしれないんだけど。

 

 もしかしたら、自分が見逃してるだけで女としてスカウトしてくれてるのがあるかもしれない。

 ちょっと、家に帰ってスカウトに貰った名刺見てみようかな。


「ねぇ、里香ちょっと……あたし、忘れ物したから家に戻る!」

「わかった! ギリギリだから急いでねっ」

「じゃ! 行って来る!」

 

 走って帰る必要はなかったんだけど、数分で家に着いて貰った名刺を机の上に広げてみる。

 

「わー。やっぱり、メンズ雑誌の名刺ばっかり……」

「げ、何この名刺の数。しかも、有名なとこも数枚あるし」


 いつの間にか後ろに居た兄ちゃんが、ひょいと名刺の一枚を手に取って見てる。


「これ、お前が貰ったの?」

「あたしが貰ったみたいです。はい」

「俺、今日帰って来て正解だったわ。てか、早く帰って来いって行ったけど早すぎじゃね?」


 そんな事……兄ちゃん言ってたっけ?  

 ん? あぁ、お母さんはパートで居ないと思ってたが、兄ちゃんが家に居るの忘れてた。学校サボったのもしかして、兄ちゃんにお母さんにちくられる?


「あっ、いや、に、兄ちゃんに会うの久々だから、一緒に居たいと思って早く帰って来たんだよぅ……的な?」


 なんて適当な事を言ってるのが分かってるのか、あたしの顔をとっても嫌そうに見る兄ちゃんの視線が突き刺さっております。


「そんなキモイ事わざわざ言わなくていいから。じゃあ、とりあえず私服に着替えて。俺ん家に行くから」

「え? なんで?」

「今日の学校のサボりは母さんに黙っててやるから。それに頼みたいこと、あるんだわ」


 頼みたいこと?

 しかもサボりの事を言われると……ま、まぁ、お母さんに黙っててくれるなら行くしかないか。


 兄ちゃんの家はここから電車で1時間位のとこにある。

 実家から学校に通えないこともないみたいだけど、学校の研修も忙しいしバイトも美容関係のしてるみたいでそこに住むことにしたらしい。


 専門の学費も奨学金だし、住んでる家もバイト先の寮と名の付くマンションだから、そんなにお金かかってないみたい。これを親孝行って言うのかな?


「きゃーー! 悠真さぁん!」


 家から地元の駅まで歩いてると突然、黄色い声の女の人に兄ちゃんが声掛けられた。


「げっ」


 最近、自分も女の子に囲まれるから忘れてたけど、やっぱり兄ちゃんもまだ声掛けられてるんだと感心しつつも「来るな!」って、兄ちゃんは表情に出して女の子の顔を見てる。

 これだけ黄色い声を出されれば流石にあたしでも面倒だしなぁ……何かあたしも言われたら、面倒だから離れて観察してよ。

 

 悠真さんって呼んだって事は、兄ちゃんより年下なのかな? でも、その女の人は兄ちゃんが目の前に居るのに、何故かキョロキョロしてる。


「こんなとこに居るの珍しいですねぇ。今日は一人なんですかぁ?」

「ここ、俺の地元だからね」


 ちらっと、あたしを見た兄ちゃんの視線は「もっと、あっち行ってろ」って、顔だけど面白そうなので見てます。


「メンバーも一緒かと思いましたよぉ。じゃあ、お願いしてもいいですかぁ?」

「渡すのは、明日とかになるけどいいかな?」

「全然いいですぅ! よろしくお願いしますぅ。じゃあ、失礼しますぅ!」


 なんだか、クネクネした女の人は兄ちゃんになにかを手渡した。

 手紙かな? 話の流れからして兄ちゃんのじゃないのか。

 だけど、メンバーってなんのことだろ? 女の人と絡む兄ちゃん見るのも久々だけど、ちゃんと受け答えしてるのも珍しい。

 いつもだったら「誰だよ?」って言って無視するのに。兄ちゃんが人の頼まれるのって珍しいから、そのせいかな。


「じゃあ、俺ちょっと寝るから着いたら起こして」


 さっきの話を聞こうと思ったら、電車では兄ちゃん爆睡。


 学校のあとのバイトとかで忙しくって寝てなかったみたい。

 本当は家であたしが帰って来るまで寝てるつもりだったけど、あたしが思ったより早く帰って来たらしい。


 頑張ってる、兄ちゃんかっこいいなぁ。

 あたしも、やりたいこと見つけないとヤバいな。

 高校の事もそうだけど、ちゃんとしないとまじで高校行けない。


「兄ちゃん、次だよ。起きて!」

「んぁ……あぁっ」


 本当に疲れてるんだ。

 あたしが居なきゃ、寝過ごしてる位に爆睡してたよ。


 頼みたいことって、そういやなんだ? 部屋の掃除? だったら、休みの日かなんかに言ってくれれば行くしなぁ。

 そんな事を考えてると、兄ちゃん家に着いた。


「リビングにある服、ちょっとそこのスーツケースにまとめといてくんない? 電話してくるから」

「うん。わかったぁ」


 兄ちゃんの家に来るのは、2回目だけど部屋の中に入るのは初めて。

 それにしても、散らかってると思いきやそんな散らかってない。


 それなりには散らかってるけど、これは仕方ない感じ。

 化粧品に洋服にアイロンにドライヤーにハサミに、生首人形に生腕模型。 


 ……生腕模型?! 何に使うんだ? あ、マネキュア転がってる。

 兄ちゃん、色んなことしてるからあたしより女子力高いと思う。 


 あれ、スーツケースに服入れとけって旅行? じゃないのかな? パンツないし。何に使うのかな?


 しかっし、この家広いなぁ。

 一人暮らしの学生が3LDKって、立派すぎない? いいなぁ。あたしもこんな部屋で暮らしたい。


「おー、あんがと」

「ねぇ、兄ちゃん頼みたいことって、こんな事じゃないよね?」


 当たり前だろ、と言いながら兄ちゃんがカバンの中から何か出す。


「何これ?」

「いいから、見ろって」


 美容ショー・コンテストと書いたパンフレットみたいのを渡される。

 8月の終わりにあるみたい。

 でも、それがあたしに、なんの関係があるんだろう?


「俺がお前モデルで使おうかと思ってんだけど、さっきの名刺のとこと契約とかしてないだろ? 他と契約されちゃってると無理なんだけど」

「名刺は貰っただけだけど。って、ちょっと兄ちゃんの言ってる意味が……」

「いや、俺んとこの事務所に入ってもらって、コンテストに出てもらいたいって事」


 ん? 兄ちゃん、俺んとこの事務所って言った? 


「兄ちゃん、どっかでモデルしてんの?」

「は? 俺がモデルするわけ……あぁ! 俺のバイト先、芸能プロダクションの子会社のヘアメイクなんだよ。やるだろ? モデル」

「でも……習い事しなさいみたいに、モデルなんて出来るもんなの?」

「俺が出来るっつてんだから、出来んの! じゃあ、撮影スタジオ行くよ。ここの一階にあるから」

「え?!」


 あたしが、洋服を詰め込んだスーツケースをさっさと持って兄ちゃんは行こうする。


「あ、待ってよ!」


 説明も何もしないで、いきなりスタジオって……えっと、スタジオってなに?

 意味のわからないまま兄ちゃんを追い掛けて入った部屋は、兄ちゃんの住んでる部屋とは全然違ってリフォームがされてる。


 兄ちゃんの部屋より広いリビングに、ドーンと傘みたいなライトと白い紙? がステージみたいなとこに敷いてある。

 触ってみると布でもないし、紙でもないけど……なんだろう?


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