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夢見たっていいじゃん!!!!  作者: YUKARI
第一章 出会い
7/27

7 少し俺の話も聞いて下さい! 2

 今日は、俺がショーに出る時の担当をしてくれる人との初顔合わせで、学校の方に来ています。

 俺は目の前の光景に絶望を感じてます──。

 

 思わず敬語になったけど、担当の女がポッチャリなのは、体質だから別に俺は気にしない。


 だけど、その髪の毛の色は? 痛みまくりな髪の毛は、カラー練習でそうなったのかもしれない。

 痛んでるせいで色が抜け過ぎてるって言うのか? それと、この担当の人のメイクと言えば、一本眉の紫の口紅……?

 髪の毛の色のせいで、昔のヤンキーぽく見えるのかと思ったけど、これは俺の目の錯覚だよな? 個性的とはかけ離れてますよね?


 ……もしかしたら、ヴィジュアル系が好きな人なのかも! と、俺は思いたい。  


「あの、参考までにこれまでにやった、ヘアースタイルとかメイクのカタログありませんか?」


 モデルがそんなことを気にするなんて、珍しい気もするけど俺は勉強の為にここにいるし俺的には問題ない……なんて言い訳をしながら、本心はカタログの中身にまともなのがある事を期待して、カタログを開くと俺の時間は止まった。


 なんだこれ? ヤンキーがいっぱい。

 パンチパーマ? パンチパーマって美容科じゃなくて理容科の方だよな?


 モデルをするのは嫌だったけど、これはモデルする以前の問題に直面する。

 俺が俺じゃなくなる。これは、夢ですよね?


「こんな、髪色にしたいと思ってるのよねぇ。それでね、髪型はこっち!」


 その俺の前に居るヤンキーはカタログの中から、摩訶不思議な髪の色の写真を俺に見せる。

 ピンクにパンチパーマ越してアイパー。だから、その……アイパーって理容科だろ?


 色々と聞いてみても返ってくる返事は、どれも俺にはヤンキー改造計画にしか聞こえない。


 や、やめてくれ!


 そんな時代遅れの髪型にしたら、普段あまり目立たないように生きてる(つもり)俺が変な意味で目立つようになる。

 それに、デザイン科じゃないから服までは見ないかもしれないけど、その色と合わせる服はジャージ? いや、ショーでそれはありえないだろ。


 髪型は服に合わせてなんぼだよな?

 ジュンとノブに聞いてた話とまったく違うし、このまま黙って言う事聞いてればいいって状況じゃない。

 

 俺もぉ、涙出てきそうだ……絶対に俺の頭はこのヤンキーには触らせたらどうなるか。


「ここ、実習室ありますよね? カラーリング剤とトリートメント貸して頂けますか? そこ行きましょう」


 ヤンキーは今日はミーティングだけだよ?

 なんて聞こえたが、断じて俺のじゃない。お前のだよ! と叫びたい言葉を飲み込む。


 何があっても、俺の髪の毛は触らせたくない!!


「そこ、座って。ヤンキー」

「え?」


 あ、思わずヤンキーって言っちゃった。


「私が座るの?」


 そっちに驚いてたのか、自分の口の悪さに少し反省しつつ……まともに会話して俺が丸め込まれて変な髪型になることは全力で拒否するけど、俺が主導権は俺がもらってヤンキーの髪の毛の色を黒に戻そう。


「そう、黙って座って」


 主導権を握るためには、この人に敬語を使うのはやめよう。


 座らせたものの、どうしたもんかとヤンキーみたいな変な髪の毛をじっくりと見る。

 色が抜けた髪の毛は痛みすぎで、バリバリでこのままだと痛みが目立ちすぎる。

 

 黒くすれば、少しは痛みが目立たなくなると思うけど、真っ黒だと少し変な気がする。

 光で少し青っぽく見えるようにしたいけど、やり方なんか知らないけどヤンキーに聞いても当てにならない気がする。


 ちらっと横を見ると俺の父親と変わらない年齢の男の人がなんかしてる。


 学生って感じもしないし、ここの先生だと思うけど俺がこんなことしてたら怒られるか? でも一か八か聞いてみるしかない。


「あのー……」

「なんだい?」


 話し掛けて色の事を聞くと、怒るそぶりもなくその色を作ってくれるらしい。

 作り方を見てなさいと言って、カラー番号と配分を教えてくれてる。


「あの子が頼りないかい? ま、自分で出来るならそれに越したはないか。悠真くん自身もヤンキーにされないようね。分からないことは、君だったらニコッと笑って誰かに聞けば、教えてくれると思うよ。じゃあ、頑張りなさい」


 男の人は意味深な事を言ってどっかに行ってしまった。あの人……俺の名前もしかして知ってた?


「なぁ、今の男の人誰?」


 作り方を教えてもらったカラー剤を、髪に塗りながらヤンキーに聞いてみる。


「赤木先生だったかしら? 私、実習室とかに来ないからあまり知らないわ」


 赤木って、確か仁志の名字だった気がする。

 もしかして、推薦状書くとか簡単に言えるってことことは秋香さんたちと関係ある場所なのか?

 ここもグル? あの男の人の言い方じゃ俺の勝手にしてもいいって言い方だったよな?


 ってか、実習室に来ないってヤンキーは、なんの為に学校に通ってるんだよ。

 とにかく、こいつに俺の髪の毛とか触られるのはイヤだから、家帰ったらどうするか構想考えてみる為になんか資料見ないと。

 

「あ、頭洗って来ていいよ。洗い終わってトリートメントしっかりやっといて。終わった頃にまたここ集合な? あ、ついでに、メイクも落として来いよ? そのメイク変だから。俺、資料室行って来る」


 一応はここの生徒なんだから、後は自分で出来るよな?

 ん? 面白いからいいけど、そういえばなんで俺ヤンキーの髪の毛いじってんだ?


 ヤンキーを放置して、実習室を出たはいいけど。

 資料室の場所なんか、始めた来たこの学校の何処にあるかなんて俺が知る訳がない。

 

「ん?」


 誰かに場所を聞こうと思って、周りを見渡すと髪型をきちんとしてる仁志が歩いてくる。


 仁志の隣にいるのは、きっとあいつの担当か。

 俺のとこと違ってまともそうな男。あの人だったら、俺も勉強できたかもしんない。

 担当の交換とかしたり出来ないのかなぁ? なんて考えてると、仁志も俺に気づいて近くに来た。

 

「悠真さん、なんスか? 俺の事ジッと見て」

「あー。今日は髪型ちゃんとしてるじゃん。と思って見てた」

「モデルすんのに変な感じで来たら、担当に失礼じゃないっすか……」


 意外とまともなことを言う仁志に驚きつつも、俺が話したい内容は資料室が知りたいからペコリと仁志の担当に頭を下げて場所を聞く。


「ここ曲がったらすぐに分かると思うよ」

「ありがとうございます。あ、仁志……デコ出すの嫌がるかもしれませんけど、無理矢理すればなんとかなると思いますよー」


 余計な事をっ! って、なんか仁志が騒いでたけど、デコ出さないつもりだったのか。

 でも、ここの学生に余計な事言った気もするけど。


 仁志の担当に教えてもらって資料室に到着して、ここ2,3年のショーの資料を探す。

 歴代のグランプリの写真を見つけてパラパラと見ると、一昨年はジュンがグランプリで準グランプリがノブ。

 ノブの方がグランプリかと思ってたけど、ジュンがグランプリで少し驚きつつも去年のも見ると去年は女のショーだったらしい。

 去年のグランプリは和服だから、去年のグランプリに便乗する人も今年も居るかもしれないから、俺も便乗すれば目立たないで済むかもしんない。

 資料を見てると、担当した人のここはこうしたとか書いてあるカラーナンバーとか書いてあるレポートもあって参考になる。


 便乗するにしても、和服が似合う髪型を少し考えないと難しいし、自分の髪をカットするのは大変な気もするけど……ヤンキーには頼みたくないし、どうしたもんかと悩んで資料を眺めてると結構な時間が経ってたことに気づく。

 いくらなんでも小一時間経ってれば、ヤンキーだって髪の毛だメイクだの落とすのは終わってるはず。


「あれ? ヤンキーが居ない。帰った?」


 実習室に戻るとヤンキーがいない。

 黒くすると、なかなか明るくするの出来ないしなぁ……勝手に髪の毛、黒くしたの怒ったのか? なんて、考えてるとそこに居た女の人が話し出す。 


「こ、ここにいるわよ。それに、さっきから普通に私の事ヤンキーって呼んでるわね」


 は? これ、さっきのヤンキー? なんだよ、スッピンまともじゃん。

 とんでもないブスだったら、少しだけどうしようかと思ったんだけど。


 これだったら、肌の色も白いし目もそれなりに、デカいからメイクは薄い方が似合うな。


「なぁ、ヤンキー、あそこにある化粧品は、使ってもいいやつ?」

「だから、ヤンキーって……あたしの名前は淳美って言うんだけど」

「うん。わかった。そんで、あそこの使っていいの? ヤンキー」

「使ってもいいはずだけど、あなた人の話、聞いてないわね……」


 もう、ヤンキーでいいじゃん。

 さっきから返事はしてくれてるけど、仮にも年上だから先輩つけた方がいいか。


「何触ってるのよ!」


 肌の質をチェックするの少し頬触ったら怒られたけど、会話するのが面倒だから無視をする。

 だけど、メイク落とした後にきちんとヤンキーは肌の手入れはしたみたいで感心する。


「なぁ、ヤンキー先輩は、着物の着付け出来る?」

「そ、それくらい出来るわよ!」


 着物の着付けが自分には出来ないことを思い出して、メイクをしながら話しかける。

 ……ジャージしか着ないような髪型しかカタログなかったのに、本当に着付けが出来るのか心配になりつつもこれ以上は話すこともないから黙々とヤンキーのメイクをする。


「メイク、出来たよ。ヤンキー先輩、鏡見てみ?」


 鏡を見て固まってる、ヤンキー先輩。

 そいや、文句も言わずよく髪黒くさせたよなぁ。


「しょうがないから、言う事を聞いてあげるわ。このままじゃ、私も卒業試験危ういからね……」


 ん? 言う事を聞く? なんだよ。

 変に素直だなぁと、思ってるとクリスタルにファンだったらしい。


 同じ事務所なんだから、挨拶位させてくれって。

 俺に挨拶させてやるとか出来るのか? あいつらにまた会う機会なんて早々ないと思うけど、取りあえずショーが済めばいいから適当に返事をしとく。


「じゃあさ、今回のショーの衣装は着物にしようと思うんだけど、なんか着物の宛てとかない?」

「うちから、持って来るわ!」

「……持って来る?」

「うちの家、なんか昔からある呉服屋らしいから」

「じゃあ、俺リクエストするから近い感じの着物を今度ここに集まる時に2~3枚持ってきてよ。着付け本当に出来るんでしょ?」


 ヤンキーなのに呉服店の娘ってのもなんだか信用できないけど……着付けできるって言うのは、まんざら嘘でもなさそうだから信じてみる。

 着物さえ決まれば後は自分でどうすればいいかを、考えればいいから何回も学校に来なくていいよな。


 俺のサイズを測って、それだけで今日は解散した。


 ******


「これで、いいかしら?」


 おっ!

 着物の柄とはよく分かんなかったけど、古臭くなくて新しすぎるわけじゃない感じがいいのを、ヤンキー先輩は持って来てくれた。


 しかも今日はヤンキー先輩はまともにメイクしてて、これはこれで安心する。


「やるじゃん! ヤンキー先輩!」


 ベシべシとヤンキー先輩を叩く。

 この着物の柄なら髪もなんとかセットしやすいな。


「じゃあ、この肌襦袢とステテコを着たら呼んでちょうだい。左側が上だからね? 右だと死んだ人だから」


 ほいほい。ヤンキー先輩、着れましたよっと。


「あぁ、やっぱり細いわね。帯が上がって来ちゃうから、補正ベルトしないと」


 着物に、補正ベルト? それを付けると下っ腹が出た感じになるんだけど、着物はそうやって着る物らしい。

 ヤンキーのカタログを見せてきた人だと思えないくらい、着物について詳しく話してくれる。

 なんだか着物は奥が深いらしい……話は面白いけど、俺は髪のこととかメイクの話もそれくらい話してくれる人の方がよかった。


 着付けは思ったより簡単で自分でも出来きそうな感じだけど、髪とかセットしてるから着物を汚すかもしれないから本番はやってもらわないとまずいか。

 

 よし! 本番はこの着物に決めた!



 ******



 泣き叫びながら俺ん家に、仁志が何回か逃げ込んで来る。

 と、言うトラブルが何回かあったけど……俺がモデルやるって事は幸にはもちろん、色んな奴にはバレないで今日の本番まで来れた。

 

 後は、今日の結果次第だ。

 俺の知識だけではもちろん入賞とかするわけないから、モデルをきちんとやったって事が伝わればいい。


 ここの学校に出入りするようになってから、学校は色々と充実してるのがわかった。実習室、シャンプー室、色んなとこ綺麗だった。

 どうでもよさそうな学校だったらもっと適当にやって、自力で行けそうな学校に行けばいい。

 なんて思ったけど、ここの学校の推薦状を書いてもらえるならここに通いたい。


 今日のショーは担当者の名前を隠して、モデルに投票するって仕組みになってる。

 控室は今日のモデルたちが数人。

 みんな一応は同じ事務所か。俺の事を見て「誰だ? あいつ」って、言ってるのが聞こえる。


 雑誌で見たことある人が何人かいるけど、俺は雑誌とかの仕事はする気ないからそんなにライバル視しないで大丈夫ですよと。

 グダグダなんか言ってるヤツらの会話を面白半分で聞いてると、背中をツンツンされて振り向くと、凄い顔した仁志が居た。


「げっ。何その、泣きそうな顔! 失恋でもしたか?」

「失恋のがマシですよ! 悠真さんのせいだぁぁぁぁぁ!」

「はぁ? 俺のせい?」

「ばばぁに、嵌められたんですよ。俺たち」


 話を聞くと、今回のグランプリはクリスタルの加入、準グランプリは有名雑誌の専属モデルになるって事らしい。

 俺と仁志には他のモデルに知り合いがいないから、今日までその話が耳に入ってこなかったらしい。

 でも、一昨年の入賞者がジュンとノブだから、この展開は俺はなんとなく予想はしてたけどそれを言うと仁志が今以上に騒ぎ出しそうだから黙っておく。


「俺は入賞なんか、出来ないから関係ねぇよ?」

「俺には関係あるんですよぉぉぉぉ! 俺の担当、短期留学してるほどの成績優秀な人なんですううううう!」

「へぇ、俺も担当そっちがよかったな。勉強になっただろうなぁ」


 あ、でも、グランプリになるとヤバいのか。


「しかも、性格いい人だから逃げ出せない。担当の成績に、響かなきゃ逃げるのに……」


 あぁぁぁあああああっと、泣きわめいてる仁志。

 さすが仁志って名前だからなのか、なんだかん文句を言いつつ人情深い。


「悠真さんの担当は誰ですか?」

「え? 俺の担当? ヤンキー、じゃなくて、なんだっけ? 淳美とか言ってた気がする」

「「えぇっ?!」」


 何っ?!

 仁志だけじゃなくて、同時に俺に視線が集まって他の人も声をあげる。


「なんで、そんなにビックリしてんの?」

「その人、ここの学生じゃないっすよ?」


 は? なにそれ。

 回りのモデル達は口々に文句言ってる「なんだよ、今回のグランプリは決まってるんじゃん」とか聞こえるのは俺の気のせい?


「うちの事務所のヘアメイクの責任者だよ?」

「は? 何それ?」


 確かにちょっと、年いってるなって思ったけど……ここ専門だし、色んな年齢の人がいてもおかしくないなぁ位にしか思ってなかった。


「悠真さんも、やっぱり嵌められてみたいっすね」


 っても、着物を用意してくれただけで、ヤンキーは俺には何もしてない。

 それでグランプリとかヤラセはしないだろ……やばい、頭が真っ白になって来た。


「モデルの皆さんは、それぞれ担当の人のとこに行って、準備お願いしまぁす」


 と、取りあえず係りの人がなんか言ってるから、ヤンキーの所に行くしかないよな?



「──あらぁ、バレちゃったの?」


 バレちゃったのって……バレちゃったっ?!


「じゃあ、こ、今回どうするんですか?」

「バレちゃったなら、私が全部やるに決まってるじゃない」

「えっ?! そ、それは困ります……」


 や、やばい。

 聞くんじゃなかった!! え、何? 本当にすごい人なの?!


 実は同じ名前なだけで、俺をヤンキーに改造するとかじゃないよな? それも嫌だけど、この人が本物でまじでグランプリも……いーーやーーだーー!


 今なら仁志の気持ちがすげー分かる。

 仁志を巻き込んだからこんな事になったのか?

 仁志くん……まじでゴメン。


「私が居るのバレちゃったなら、ちゃんとしないと私の名前にキズつくじゃない」

「俺デビューとかまったく興味ないし、ヤンキーになるのはまじで嫌なんですけど」

「ヤンキーもデビューも私には関係ないわよ。と、言いたいとこだけど、私にチョイスした髪の色とメイク。手直しは必要だったけど評判は良かったわ。それに、赤木さんにも頼まれてるし」

「赤木って……どの赤木だよ! じゃなくて……ですか?」


 秋香さんとグルだったら、マジでアウトだろこれは。


「あなたが、カラーの配合を聞いた旦那の方でここの副校長よ。モデルにするのはもったいないって言ってたわよ。じゃあ、これから説明しながら色々やってあげるから、しっかりと見ときなさいよぉ? あ、そうそう。最後に一言。推薦状の決定権があるの私だからね?」


 あの人、やっぱり仁志の父親だったのか。

 ん? 推薦状書くのヤンキー……じゃなくて! 淳美さんが書くの?!

 俺の無礼な言葉使いやばくね? ヤンキーって、呼んでたの誰ですか? あ、俺ですよね、まじですんません。

 でも、でも、でも! これだけは言わせて下さい。


「あの、俺……頭、ピンクとか緑とかのパンチパーマは嫌です」

「あんなのにするわけないでしょ! あのカタログまだ本気にしてんの? ばかねぇ」


 気付くと、淳美さんが勝手に髪の毛をいじくり出す。

 うん、何をやってるか分かんない。

 けど、やってる事はすごい事だって、分かってしまい本物だと気づかされる。


「あなたってば、得してるわよねー。スタイリスト目指して、モデルも出来る人なんて滅多にいないわよー? モデルすれば観客に見せ方も覚えるから、どうセットすればモデルが観客に見せやすようになるかとかも勉強出来るしラッキーじゃない。あ、ちょっと髪切るわよ」

「え、あ、はい」


 っとまぁ、俺の返事なんか待ってなかったんだろうけど、切ったうちに入らない位だけ切られた。

 なんだろ? セットしやすいようにか? 難しい事は言ってないけど、その説明は俺にはまだ理解出来ず。


 着付けも終わって後はステージに行くだけになった。

 パンチパーマには勿論なるわけもなく、俺が考えてたのと全然違う出来になった。

 俺だけど、俺じゃない感じに仕上がってる。


 す、すげぇ。

 俺もこんな風に他人に出来たらきっと面白い。その人の個性を残したままで、人を変えるって言うのか?


「はいはい、突っ立てないでステージ行って来て頂戴! 適当に歩いてくるっと回って来ればいいから」


 簡単に言わないで欲しい。

 そのステージの立ち方まで、何も考えてなかった。

 ステージの方に行くと、仁志が居て泣きそうな顔してるのは、見なかった事にしとこうか。


「悠真さん、一生恨んでやる! って、思ったけど悠真さん見たら、俺元気になった!」

「いや、何言ってんの?」

「悠真さん、すげえいいもん!」


 はいはい。勝手に言ってて下さい。

 って、言っても、仁志もかなりいいと思うけど。


 ショーって言うのに仁志の衣装は着飾ってない。

 けど、きちんと着飾って見える、この技はなんだろう。


 っても、準グランプリでも雑誌の専属契約だろ? それはいいのかね? それ言うと、また半べそなりそうだから黙っておく。


「ほら、次は仁志の番みたいだけど、行かないのか?」

「あ、いってきまぁ~す」


 ……分かりやすいやつ。


 ん? なんだ、あいつ。

 嫌がってた割には、場慣れしてるな。魅せ方を知ってるって言うの?

 秋香さん実はかなり、仁志を仕込んでたのか。


 さぁて、俺の番だな。行きますか──


 ******


 ショーが終わって俺の目の前には、赤木夫婦に淳美さんに社長の宏樹さん。

 横には顔を真っ青にした仁志、父親になにか目で訴えてるみたいだけどこっちを見ようともしてないところを見ると、無視されてるなこれは。


「取りあえず、悠真くん。グランプリおめでとう。だが、なんで悠真くんがグランプリになったんだ? 淳美くんには、悠真くんの管理と助っ人を頼んだだけだが?」

「それは、私が悠真くんの担当が、私だってバレてしまったので私がやりました」

「まぁ、いいじゃないですか。悠真くんなら問題ないじゃないですかぁ」


 3人はなにやら、話をしてる。

 淳美さん、俺の管理と助っ人……だったの? 助っ人ぽい事なんて、着物しか持って来てくれなかったけど。


 仁志の髪をセットしただけじゃあ、どれだけ出来るか分からないから、俺が俺自身をどうするか見たくて、初めから俺に全部やらせて推薦状の事を、決める予定だったって事なのか?


「う~ん。悠真くんに、自分の事をやらせてどんな風になるか見たかったんだけどねぇ。淳美くんが手出すのは、悠真くんが何もしなかった場合にって話だったからねぇ」

「よっぽど、あのカタログの中の人みたいにされたくなかったみたいで、配合のやり方も知らなのに赤木さんに聞きながら、私の髪の色も変えてましたよ。自分じゃなくて、なんで私? と思いましたが、モデルやってる時より真剣な顔してましたし。だから、私は推薦状を書いてもいいと思ってます」


 そりゃ、目立つ事するのまじで嫌いだし、髪とかいじってる方が面白いからそっちの方が真剣になるの当たり前じゃん。


「じゃあ、今回は繰り上げで仁志がクリスタルに!」

「モデルするのも嫌なのにクリスタル加入はもっと嫌だよ!」


 ニヤニヤしながら間に入って来た秋香さんに、仁志が声を荒立てる。


「なんで、今回はグランプリを喜ばないやつらがグランプリになったんだ。悠真くんの方はまだ敦美くんがやったと言うことでなんとかなるが……」


 頭を抱えながらブツブツ宏樹さんが言ってる。

 横で秋香さんが「仁志でいいじゃないですか」とか言ってるけど……仁志を、巻き込んだの俺だっけ。


「クリスタルも始動したばかりだし、焦って新メンバー決めなくても大丈夫じゃないの? 部外者が口出すのもあれだけど、来年のショーで悠真くんがどうするか、どんな子を使うかそっちの方が、僕は楽しみだけどねぇ」

「どんな子を使うか……うん、それも面白そうだね。その子がいい子だったらクリスタルの加入させるとか。うん。じゃあ、そうしようか!」


 仁志父と宏樹さん言ってる話を実行するなら、俺の学校入学は決定してる感じなのか?

 これはラッキーって喜ぶ所なのか? いや、クリスタルのメンバーを俺が決めるって遠回しに言ってるよな?!


「私の下で悠真くんは、バイト始めてテクニックも人を見る目も勉強しなさい。やる気あるなら、それくらい出来るわよね?」


 美容の勉強したいなら、クリスタルのメンバーを俺が出しても批判されないくらい、人の倍勉強して腕を磨きなさいって事か。

 ただ俺は将来、美容師とかになれればいいかなーって、考えてただけだけど何をするにも淳美さんの下も勉強するのも面白そう。


「やらせてもらいます。よろしくお願いします」


 頭を下げながら、ちらっと宏樹さんと秋香さんを見る。

 秋香さんは、ムスッとした顔をしてる。流石に旦那と社長には何も言えないんだろう。


「うん。面白そうだね。悠真くんは頑張りなさい。専門の学費と住むとこはこっちでバックアップさせてもらうよ」


 ニコニコ満足そうな、宏樹さん。

 面白がってるようにしか見えないけど、学費と住むとこもって優遇するって事はそれだけ期待されてるのか? 


「あとは、仁志だね。逃げ回ってばっかりで、勉強もまったくだろ? 高校だって、本当は宏樹さんになんとかしてもらわないとダメなんじゃないのか? 諦めてモデルするしかないんじゃないのか? それを踏まえて、仁志はどうするんだ?」


 仁志父に言われて仁志は黙ってる。

 何にも言えないとこを見ると、自業自得ってやつか。

 遠回しに俺はプレッシャー掛けられてるけど、なんとかなるか!

  

 こうして、淳美さんのとこで来月からバイトと言う名の勉強を始めて、俺は無事に翌年に専門に無事に入学できた。


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