6 少し俺の話も聞いて下さい! 1
「悠真さぁん! 今日も新倉のやつ、ピンポン玉当てたくらいですんごい顔して追いかけて来たんスよぉ!!」
俺のバイト先のコンビニに来て愚痴ってるのは妹の幸と同じクラスの和弘。
なんだか、俺に懐いてるみたいでよくここに来て愚痴ってる。
いつもは、幸の愚痴とかクラスの話ばっかりだけど、今日はちょっと違うみたいだ。
「さっきさぁ、家が凄い事になってて(省略)取りあえず、新倉達のおかげで少し助かったんですよ。それで、さっきその打ち上げのチケット新倉にあげて、悠真さん誘うって言ってましたけど?」
「芸能関係の打ち上げ?」
「そうそう、色んな人来ると思いますよ。あ、だけど、悠真さん……行くなら秋香さんには気を付けて下さいね?」
「ふーん。てか、仕事の邪魔すんなよ。さっさと帰れ」
秋香さんってなんだ? まぁいいか。
邪魔な、和弘をシッシッ追い払う。
俺の妹の幸は不器用。
今より子供の時に母さんの口紅を悪戯して毎回ピエロみたいになってた妹。
それを俺が直してあげると、照れてながら喜ぶ妹が笑う顔が可愛くてそんな笑顔が毎日見たい……なんて、ベタな事を思うほどシスコンなわけもなく。
口紅一つで顔色が明るく見えたり、髪型一つで人の顔の表情が変わるのが単純に面白いって思っただけの話。それに、細かい作業は昔から好きだったから、ヘアメイクの仕事がしてみたいと思った。
……あ、でも。
きっかけは、可愛い妹のためって事にしといた方が、イイ兄貴って感じがするからそういうことにしとうか。
まぁ、ちゃんとすれば、あいつも可愛いはずなんだけど。
******
和弘から聞いてたけど、バイトが終わって帰るとやっぱり幸に打ち上げパーティーに誘われた。
何故かノリノリの幸に貸衣装屋に連れてかれたけど、閉店時間ギリギリに来るなら夜からなんだから明日でもいいと思うんだけど。
「弟さんも、こちらへ」
げっ! また、幸が男と間違えられてる。
こんなとこでキレられても面倒だし……あいつ背高いしスタイルだけはいいから、この水色のワンピースとボレロでいいか。
「すいません。これを、あそこの妹に持っててあげて下さい」
え?! 女の子?! とビックリしてる店員。
慌てて、幸を接客してた店員のとこにドレスを渡した店員がそこに駆け寄る。
これで、大丈夫か?
焦って適当に選んだけど……幸の顔色が変わったから、大丈夫だな。
******
「あれ?」
パーティーに行くのに洗面台の鏡の前で、何かをしようとしてる幸が固まってる。
「メイクしないのかよ?」
「しないのでは無く、出来ないんだよ。やったことないもん」
「ふ~ん」
まだ出来ないのかよ。
そう思いながら幸のメイクポーチの中を漁ると、一応メイクの道具は一式揃ってる。
下地、ファンデ、マスカラ、アイライン……アイラインはリキットだし。
やったことないって、今でもピエロにきっとなるから変な見栄で嘘ついたな。
んー。俺がやってやるか。
「え、なんで?! 兄ちゃんがメイクしてくれるの?」
「少しなら、俺でも出来るよ」
幸が変な顔してる。
……練習っても、クラスの女子に頼むとうるさいから、自分の顔にしてたけど決して俺はそっちの人じゃない。
パシッと幸のおでこを叩くと「あはは! ごめんね」なんて謝ってる。
俺が勉強をしてると言うと、少し真面目な顔してたけどなんか変だったか?
******
「ここだな」
入口で招待状を渡してる幸。
俺のメイクで幸は恥かかないよな? やべえ、どんな人いんだろ。
中に入ると、店構えよりラフな感じの店内。
そりゃそうか、未成年のお祝いパーティーみたいなもんだもんな。
幸のメイク、派手にしないのが正解で派手にしなかったことに安心する。
まずはドリンクだなぁと思って、ドリンクをどうするのか会場を見渡してると幸が一人の男を見てる。
なんだ、そのもっさい髪型? 一応パーティーに来ておいて、それで恥ずかしくないのか?
俺もその男が気になって見てると、もっさい男が幸の所に来てなんか話してる。
「ふーん」
お、まぁまぁ、いい顔してんじゃん。
この前髪を上げてデコを少し見せてサイドを流して……
「ちょっと、兄ちゃん!」
「ん?」
幸の慌てた様子に驚いて自分が何も考えないで、こいつの髪の毛掴んでたことに気づく。
「わりぃ。あぁ、仁志ってやっぱこいつか……じゃあ、付いてきたら許してやる」
幸がトラブルに巻き込まれたことは、どうでもいいし。
それで、怒って髪掴むとかしたわけではないけど、流石に髪を掴んだら相当キレてると思われてもしょうがない。
まぁ、こいつの髪の毛いじってみたいし、それでいいや。
「幸、お前のカバンちょっと貸せ。くしとワックス入ってるから」
何も入ってない幸のカバンに、くしとワックスを勝手に入れたから入ってるはず。
本当はアイロンもほしいとこだけど、あるわけないから前髪を上げることくらいは出来る。
「じゃあ、仁志は付いて来い」
仁志の腕を掴んでトイレにって、おっ! 控室あんじゃん。ここ。
「え? ちょっと、あのっ?」
仁志が慌て、力いっぱい踏ん張って俺の動きを止めようとする。
ん? 初対面だし不審者だと思ったのか?
「あ、俺あいつの兄貴の悠真」
「じゃなくて、ここ、メンバーの控室ですよ?」
あぁ、クリスタルって張り紙あるな。
「中に誰も居ないんだから、少しくらい大丈夫だろ? それに、本当はメンバーになるはずだったんだろ?」
俺の発言に、なんで知ってるんだ? って顔をしてる仁志を無視して中に入る。
おお、アイロンあるじゃん! 使える。
「あの、俺……髪型このままでいいっすよ?」
「は? なんで?」
「なんでって、母ちゃんの話聞きませんでした?」
母ちゃん? あぁ、なんか和弘が言ってた、秋香さんって人の事か。
「お前の髪型ちゃんとする事と、なんの関係があんの?」
「俺、芸能関係で働きたくないんすよ。だから、いつもこんなんにしてるんです!」
「で? お前の母ちゃんはどっちにしろ、お前の素顔知ってんだから今更じゃねぇの?」
「いや、でも、写真勝手に撮るカメラマンも居て!」
取りあえず、和弘と違って女々しい感じでゴチャゴチャ煩いから無視して座らせる。
……お、ワックスよりハードスプレーのがいいな。
目の前にあったハードスプレーを勝手に使ってると、ここを本来使うであろう人たちの声が聞こえて来る。
「仁志、髪の毛ちゃんとしてるの珍しいじゃん。誰? ってあれ? 新倉だっけ?」
「は? 誰?」
ここで俺の名前を呼ばれると思ってなかったから、素の言葉が出る。
誰? なんて言っといててあれだけど、ここはクリスタルの控室だったから、メンバーの誰かに決まってる。
来る前にメンバーの写真は見たけど……こいつはジュンだったけ? なんでそいつが俺の名前知ってるんだ? 顔をジッと見てもジュンの顔は写真でしか見た記憶はない。
「俺の事は知らない思うよ。俺の姉貴がそっちの高校行ってて、去年の文化祭でかっこいい後輩が居るって連れまわされて俺も見ただけだし。って、普通は逆じゃねぇ? 俺ってば一応、芸能人なんすけどー!」
去年の文化祭と言えばあまりいい思い出はない。
なんか追っかけて来る女の中に、男も居てその男も女に追いかけられてたから、かなり面倒なことになったんだ嫌なことを思い出す。
「ふーん。あれ、お前のせいだったんだな」
「俺のせいって……そいや、新倉もこの事務所入ったの?」
「俺、興味ない。付き添い」
……あ、付き添い。
自分の発言に、幸の事すっかり忘れてたことを思い出す。
1人にしといたら、何気にビビりだから絶対に挙動不審になってるはず。
「仁志、出来たから戻るぞ。妹のこと、すっかり忘れてたわ」
「あ、え?! 悠真さん、まじ勘弁してくださいよぉ。あぁあぁああっ」
仁志の腕をまた掴んで戻ろうとした時に、多分メンバーだと思うやつらに声掛けられてたけど、こいつのこの髪型そんなに珍しいのか?
「あれー? 仁志、珍しいじゃん! って、あれ? どうしたの?」
「大輔、助けて……」
唖然としてるメンバーらしきやつを無視して、仁志を引っ張って会場に向かう。
「えっと、幸はどこ行った?」
幸を探してると、なんだか回りがザワザワしてきた。
みんな、仁志を見てる。
いい反応ってとらえていいのか? まぁ、なんだかんだ、こいつ元はいいからな。
しかし、仁志はまだ俺の後ろでゴチャゴチャ言ってる。
「仁志、こっち来なさい! 私がいくら、ちゃんとしなさいって言ってもちゃんとしなかったのに。どんな心境の変化かしら?」
バシッと仁志の頭を叩く女の人。
あっ! せっかく、髪の毛ちゃんとしてやったんだから、崩さないで欲しいんだけど。
これが、こいつの母ちゃんの秋香さんって言う人か? 和弘が気をつけろって言ってたのがなんとなく分かった気がする。
秋香さんの後ろに幸も居る。
面倒な事になりそう気がして、幸の後ろにそっと移動する。
仁志のやつワザと秋香さんに喧嘩売って、髪の毛を崩す気にしか見えない。
せっかくやってやったのに、無駄にするなよ。
「あ、そうだわ。悠真くんでいいかしら? ちょっと、ついて来なさい」
「え、え? あ、でも、妹を一人には……」
な、なんで、俺に声をかける?
咄嗟に言い訳して逃げようとしたけど、秋香さんの手はしっかり俺の手首を掴んでる。
「ちょっ、ちょっと?!」
「あんたもよ! ばか! 幸ちゃんはもうすぐしたら、あの子達来るから相手してもらってちょうだいねぇ」
逃げようとしてた仁志も捕まって、知らないおっさんが話してるとこに連れてこられた。
「お、秋香ちゃん、男の子を捕まえて来たのか?」
「えぇ、この子が仁志の髪の毛セットしてくれたみたいで」
その秋香さんに、俺と仁志がその男の人の前に突き出される。
「でも、仁志のセットはもう崩れてるじゃないか」
その男の人が秋香さんの顔をジロっと見ると、ヤバいって顔になる秋香さん。
「あ、湯浅。仁志の写真撮ってないのか?」
「珍しいもん見たので、撮ってありますよ。ほら」
カメラを持った人がその男の人にカメラの液晶を見せる。
「へぇ、君たちの2ショットいいね。あ、湯浅、あそこでジュンが女の子に絡んでるからあそこも撮っといて」
俺たち2ショットって? 俺は、関係ないでしょ。
それに絡まれてる女の子って……幸じゃん! 大丈夫かあいつ? 暴れたりとか、殴ったりとか……殴ったりとか……。
幸の方を見てると、俺が幸の方を見てるのに気付いたのか、男の人が口を開く。
「あ、あの女の子は君の連れかい? ノブとダイも居るから、あそこは大丈夫だよ」
いや、幸の身の安全ではなく暴れたりする方の心配なんだけど、ここでは暴れないだろうと幸を信じてみることにする。
それにしてもうるさかった秋香さんを黙らした、この人は誰だ?
仁志にコソっと聞いてみる。
「Treasureの社長っすよ」
Treasureって、クリスタルの所属事務所だったけ。
ふーん。だから、秋香さんが大人しくなったのか。
「君、名前は?」
「あ、新倉 悠真です」
ニコニコして俺の事をジッと見てるますけど……俺そっちの趣味はないよ?
「君はモデルとかは、興味はなさそうだね。興味あるのはヘアメイクの方かい?」
「俺がモデルするのは、まったく興味ありません」
「あら、ハッキリ言うのねぇ? うふふ。じゃあ、条件付きでうちと契約してる美容専科の推薦状を書いてあげるわ」
黙ってた秋香さんが、いきなり話に入って来た。
「仁志を丸め込んで、きちんと髪の毛セットしてくれる子なんて、滅多にいないしねぇ。それに、女の子ウケしそうな顔してるし」
女ウケ……なんだよそれ、迷惑だし美容専科とか全く関係ないじゃん。
でも、美容専科の推薦状の事は気になる。
「条件って、なんですか?」
「美容専科の美容ショーにモデルとして、出てみるなんてどう?」
「はぁ?!」
目立つの嫌だよ! 今、モデルは興味無いって言ったのに、推薦状とモデルがなんの関係があるんだよ。
秋香さんは人の話を聞いてないのか?
「悠真くん、本当に嫌そうだね。でもね、勉強にもなると思うよ? 自分がモデルしながら他の人の技とか盗めるし、ね?」
社長さんが、秋香さんのフォローに入るけど、勉強……そう言われればそんな気もしてくる。
「ショーのモデルやらないなら、推薦状出すかわりに専属モデル契約うちとしてもらうけど? ま、学校入ってもモデルの仕事始めちゃったら、学校の勉強してる暇なんて無くなると思うけど」
強制的にモデルやらせる気まんまんじゃねぇかよ。
専属モデル契約までして推薦状は書いてもらおうとは思わないし、それなら普通に断るに決まってるじゃん。
でも、専門の学費は高いし俺は頭もよくないから、普通に試験して受かってもイイ学校に行けないだろうしなぁ……一回モデルやるだけで推薦状書いてもらえるなら、ラッキーだよな?
「出ることに意味があるからね。あ、仁志も出てくれよ?」
「えぇ?! 俺、関係ないし!」
「関係あるわよ! 私に迷惑かけたじゃない! たまには言う事聞きなさい!」
バコーン! っと、仁志の頭を殴る秋香さん。
もし出るだけで専門行けるなら、俺も誰か知ってるやつがいてくれると気が楽になるな。
これは仁志も巻き込むしかないか。
多分、モデルなんて適当に担当の言う事を聞いて、やってればいいはずだし。
「お、じゃあ、仁志。俺とやるよな? なぁっ?」
仁志の脇腹に拳をこっそり当てながら、仁志と肩を組んでみる。
「わ、わかったよ……」
ガクリと肩を落とす仁志。
これで、よしと!
「なんだぁ、新倉もやっぱり事務所入るんじゃん」
なんて、後から来たジュンに言われた。
ノブとジュン、こいつらも美容ショーに出たことあるらしく、話しを聞く限りモデルとして出る分には、大変な感じではなさそうだった。
人前に立つのかぁ……それだけが、微妙なんだよなぁ。
「きゃあっ!」
幸の叫ぶ声が聞こえた気がしたから、その方向を見るとダイだったかを突き飛ばしてる姿が見えた。
なんかされたか? さっきはジュンが確かになんかしてたけど、普通のやつが幸にそんな事する奴は滅多に居ないと思ってたんだけどなぁ。
「あいつ、何やってんだよ。ちょっと俺あっち見てきます!」
「あ、別に大丈夫じゃね?」
「俺もー!」
って、俺の言葉も聞かないで小走りで、ノブとジュンが幸のいる場所に向かってた。
なんか、よくわからないけど、俺も行った方がいいよな?
「宏樹さん、俺もちょっとあっちに行っていいですか?」
「あぁ。詳しいことは、後で連絡するからこっちは、気にしないで楽しんで来なさい」
「はい、失礼します!」
宏樹さんに軽く会釈をして、幸の方に来てみたけど……なんだ? この状況。
少し離れたところで観察してると、ポカンとダイをノブが叩いて、後ろに居たジュンは笑って見てる。
「なんだよー、ダイ。俺が手解きしてやろーか? あはは」
「ちょっと、俺がジュンくんみたいな事するわけないでしょ! 一緒にしないでよ!」
そういえば、ジュンさっき幸に絡まれて、幸はイライラ全開の顔してたっけ。
「お前ら、うちの妹に何してんの?」
「に、兄ちゃん!」
後ろから声を掛けると、ビックリした顔で3人俺の顔を見て、幸は慌てて俺の後ろに隠れる。
「俺は今は一番、何もしてないよ!」
「俺はダイがジュンみたいな事してたから、止めに来ただけですけど」
「俺だって、何もしてませんから!」
3人が口々に反論する。
まぁ、確かに何かして感じには見えなかったけど。
幸の方をちらっと見ると慌ててるんだか、よくわからない表情をしてる。
「じゃあ、まぁいいや。幸もこんなとこで、暴れたりすんじゃねぇよ?」
「今日はまだ暴れるのは未遂です……」
「ふーん」
それは、ダイを突き飛ばした時のはなしじゃなくて、ジュンの時の話だと思うけど。
未遂なら別にいいか。
「幸はなんか食ったのか?」
「あ、ちょっとだけ食べたけど……」
「ちょっとだけ? おい、ちょっとだけだってよ? お前ら」
ジッと3人を見ながら、ジュンに無言の圧力をかけてみる。
「俺もまだ、あんま食ってないんだけどなぁー」
「だったら、取りに行こうよ兄ちゃん」
幸に腕を引っ張っられたけど無視して3人の顔をジッと見てると、ジュンが何かに気付いたのかハッとした表情に変わる。
「おい、2人とも取りに行くぞ」
「う、うん」
ジュンの号令で、3人は料理を取りに行ったのかこの場から離れて行った。
「兄ちゃん、なんで何にも喋ってないのにみんな動いたの?」
「さぁ?」
俺はジュンだけに言ったつもりだったんだけど、何で3人で動くんだよ。
何もしてないなら動く必要ないから、動かないと思ってたんだけど……まじで、あいつら幸になんかしたのか?
「俺さぁ、新倉の後ろに、何か秋香さんと宏樹さんみたいな物が見えたんだけど」
「やっぱり、ジュンにも見えてたんだ。ダイは?」
「俺も見えた……何もしてないのに言う事を聞かないと、殺られるって思った」
……っておい! 聞こえてるよ。
宏樹さんはともかく、秋香さんに見えるのはどっちかと言うと幸じゃね?
まぁ、何もしてないならそれでいいか。
腕時計に目をやるとこれ以上ここに居たら、家に着くのがかなり遅くなる時間になってる。
「幸、遅くなる前にそろそろ帰るか」
「そだね。電車も酔っ払いで臭くなるし」
「それは大丈夫、お前が居るからって秋香さんがタクシー代くれた」
俺だけだったらタクシー代くれなかっただろうなぁ……なんであの人、気性が激しいのにこれから活躍するかもってやつらのマネージャーしてんだろ。
「え、新倉もぉ帰んのー?」
「もう、帰るよ。眠いし俺」
同じ年のジュンとは一応は普通に会話はするが、こん中で一番ガキっぽくて話してると疲れる。
「じゃあ、帰り気を付けて帰れよ」
ポンと幸の頭に手を乗っけてるノブ。
俺的にはこいつの方が同じ年くらいに感じて、落ち着いてるから話してても気が楽。
「今日はわざわざ、俺たちのパーティに来てくれてありがとうございました」
立ち上がってペコリと頭下げるダイ。
こいつは、まだまだガキだけど一生懸命しっかりしようとしてるのが、分かるから好感は持てる。
幸とノブとダイは何やら、遊ぶ約束をしてるみたいだな。
「えーっ? もしかして俺だけのけ者? じゃあ、幸ちゃんは俺と2人っきりで……いてっ」
「お前は何をバカな事を言ってんの?」
いや、アイドルが性別が一応は女な幸と2人で遊ぶのはどうかと思って、俺が説教みたいなことを言うといいタイミングでノブが無言でジュンを殴る。
今日は考えてもみなかった収穫があったし、来てよかったかもしれない。