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夢見たっていいじゃん!!!!  作者: YUKARI
第一章 出会い
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1 プロローグ

 夕飯終わりにリビングのソファーでお菓子片手にミュージック番組をBGMに漫画を読む、あたしのいつもの光景。


 『明後日、ついにデビューで初登場のっ──っ……』


 長ったらしいデビューの話なんか、どうでもいいから曲流してよ。

 漫画に集中出来ないじゃん。


 中学生になったら恋をして、バレンタイン渡して付き合って、そ、それ以上は高校生になってから……むふふっ。


 読んでる漫画と自分を重ねて、想像してみても好きな人は愚か。

 ──初恋もまだな、新倉(ニイクラ) (サチ) 中学2年生でお年頃です。


 中学入学してから恋する事に期待してドキドキしてたこともあったけど、ほとんどが小学校からの持ち上がりでクラス替えしたかといっても、この公立の学校じゃあ近所の男子しかいない。


 同じ学校の男子なんかはやっぱ好きになれないよねぇ。

 ドッヂボールで当てあってた男子と恋なんて恥ずかしいというか……想像も出来ないし、したくもない。

 幼馴染との恋愛とかも憧れてたけどそんな幼馴染もいません。


 恋なんてまだ、やっぱりあたしには早いみたいです。



 ******



「んーーーー。やっぱり、かっこいい! この人たちいいよねぇ」


 お昼休みにお弁当を食べ終えたクラスの女子達は、あたしの周りでクラスの女子達がなにやらアイドル雑誌を開いてキャーキャー騒いでる。

 去年までは、コミック雑誌開いてるとかだったから、男の子の話とか、彼氏が出来たとか言う話を聞く様になって少し大人になった気分。


「何見てるの?」

「この人たち、明日デビューなんだよぉ。デビュー前からもテレビに出てたりして、一押しアイドルなんだって!」


 ひょいっと、その雑誌を覗き込む。


 あぁ、昨日のテレビでなんか言ってたのってこの話かな? どれどれ……っと、って、えっ?!


「──っ! いたっっっ!」


 居た? いや、違います。

 痛いの聞き違いです。

 聞いて下さい! いや、聞くのはまじ強制ですけど。


 何度でも言わせて下さい。

 誰か発見した『居た』じゃない。

 雑誌を覗き込もうとしたらね、頭に飛んできたよ! 頭に何かが!

 

 だから、もう一度言うよ!!


「痛いっ!!!! 何っ?」


 睨みを効かせながら回りを見渡すとあたしの足元に落ちてるのは、何故か上履きと卓球ボール。

 卓球ボールを拾ってもう一回り見渡すとオロオロして「大丈夫?! 幸?」と聞いてくれてる女子達。


「これは、何でしょうか……?」


 あたしの疑問に答えるように「俺じゃないって! お前が変なの打つからだろ」コソコソ言いながら、上履きをラケットの代わりにしてたのか、あたしを見ながら卓球のスマッシュだかサーブだかのポーズで固まってる男子達。


 もちろんその状況を見て、何が起こったかあたしでも分かる訳でありまして。


「誰だ、このやろおおおおお! 誰だ、当てたの奴! 出て来いっ!」


 教室中に響き渡る声を張り上げる。

 絶対にあいつらしかいない。 


 ピンポン玉を握りしめながら、ズカズカ男子達のとこに突進すると、奴らはビビって後ずさってるけどそんなのは気にしない。


「俺じゃぁあああ、ねぇええええええええよぉぉぉぉぉぉぉ」


 中心で固まってた男子の 池山イケヤマ 和弘カズヒロ が一目散で逃げだした。

 こいつも、小学校からの腐れきった縁のあるやつ。

 見た目はまぁまぁまぁみたいで、中学入って背が伸びてこんなバカでも、モテてるらしい。


 幼馴染との恋愛もいいなぁって、思ったこともあったけど……あたしの幼馴染の男子こんな奴しか、こんな奴しか──!!


「なんで、あたしの周りはこんな奴しか居ないんだーっ! ふざけんなぁっ!」

「は? あっ。いや、く、来るなぁぁっ!!」


 ベキッと音を立ててピンポン玉をあたしの握力で変形させて、自分の都合事を棚に上げて追い掛けっこになったのは言うまでもありません。


 池山を追いかけながらふと考える。

 男子を追いかける、叫ぶ子供っぽいあたしには、まだ恋って早いって事なのか? あははっ……?


 ******


 学校の帰り道にクラスは違えと幼馴染の 木村(キムラ) 里香(リカ) と帰ってると昼休みの話をしてると、里香も一緒に怒ってくれると思いきや、笑われてしまう始末。


「あはは、池山と幸は相変わらずだねぇ」

「上履きで卓球ゴッコって子供だよね。やだやだ」


 なんで、あんな池山みたいな幼馴染しかいないんだろ。

 やっぱり、幼馴染との恋愛ってどこぞの漫画の世界の話だね。

 頭にボール当てられたせいで、雑誌見逃したじゃん。

 アイドルだモデルだってよく分からないけど、みんなが気になってる物にはあたしにだって興味ある。


「まぁ、それを怒って追い掛け回す幸も子供だけどねぇ」

「ちょっ、ちょっと!」


 だって! って、言おうと思ったけど我慢する。

 これ以上言ったら、池山が好きって事にされてしまう。


 こないだ、何故か後輩に「池山先輩が好きなんですか?」って、聞かれてありえないから否定したんだけど、最近おかしな展開になる事が増えた気がする。


『池山? ないない。あなた、池山の事が好きなの?』

『ちっ違いますよっ!』

『わざわざあたしに聞きに来てるんだから隠す必要ないってぇ。仲取り持ってあげるよぉ? あ、でも、あいつクソガキだよ? 本当にあいつ?』

『だから、違います! 池山先輩がバカなのは知ってます。わ、私が好きなのは新倉先輩です!』


 顔を真っ赤にして叫ぶ女の子。

 あたし、バカとまでは言ってないけど。


『……ん?』


 新倉先輩って、兄ちゃんの事? だったら、なんで和弘の事とあたしが何の関係が。


 あたしには 新倉ニイクラ 悠真ユウマ 高校3年生の兄ちゃんがいる。

 言葉足らずだし、時々あたしの事を騙したりするけど……仲は悪くはないからそれなりに兄ちゃんの事は好き。

 それに、妹から見ても兄ちゃんの顔はいい方だと思う。


 兄妹だからあたしも兄ちゃんと顔も似てるし、短いショーットカットの髪型と女子にしては少し背の高い。

 それがいけないのか、モテる兄ちゃんと間違えられて、よく声を掛けられるから今回もそんな感じだと思ったんだけど?


『えーっと、兄ちゃん?』

『にい……幸様の方です!! あのっ、これっ!!』

『へっ? さま……? あ、ちょっと?!』


 うん。こないだの感じは新しかった「幸ーっ!! かっこいい!!」は最近は当たり前になって来てたけど、手紙まで渡されて幸様と呼ばれるあたしって……何処に向かってる?

 

「何ボーっとしてるの? 話聞いてる?」

「あ、うん? ごめんごめん」


 まぁ、池山みたいなバカを好きにさせるくらいなら、あたしは変なことはしないしから、まぁいいかとは思うけど女の子とは恋愛は……ないな。


 なんて考えてたら、住宅街にさしかかったとで道端にどこからか、叫び声が響き渡った。


「嫌だぁぁーーーーー!!」


 あたしと里香は驚いて顔を見合わせる。


「な、なに、今の?」

「さぁ?」


 あたしの後ろに里香は隠れる。


 この状況をビビりながらも、サッとあたしの後ろに隠れる背の低い里香を羨ましいと少し思ってると、高い所から物を落としたような、もしくは銃声のような音がガタン、ドドドと大きな音がする。


「え、なに、この音?!」


 やだ! 事件?

 キョロキョロと周りの様子を窺うと、どうやら近くの家の中から音がするみたいで、あたしと里香はもう一度顔を見合わせた後に、恐る恐る音が聞こえる家を見てみる。


 すると突然、その家の扉が大きな音を立てて開いた。


「俺は絶対に出ない!!」

「ひいぃっ」


 突然、家から出て来た人に驚きながらも、あたし達は硬直しながら凝視する。


「出ない俺には関係ないからなっ!」


 目の前で家の中に向かって、女物のヒールの靴を両手に、大きなリュックサックを背負ってる男の子だか男の人が叫んでる。


 髪の毛グチャチャで前髪長くて、顔も見えないから年齢もよくわからない。

 世間で引きこもりとか言われてる人ってこんな感じなのかな? と、思わせる風貌だけど、声の感じから多分だけど同じ年くらい。


 その男の子があたし達に気付いたのか、勢いよくこっちを見るから、目を逸らす暇も無く多分……目が合った。


「げっ」

「幸、やばいって。逃げよっ!」


 目が合って硬直してるあたしに里香が腕を引っ張りながら小声で話しかける。


「あんた達に……」


 へ? 声掛けられた。

 どうしようかと焦ってると、男の子が手に持ってる靴をこっちに投げて、あたし達のポトンと足元に落ちる。


「その靴あんた達にあげる!」

「えっ?!」


 あたしと里香は顔を見合わせながら、渋々その靴を拾うともっさい男の子は、また家の中に向かって叫び出した。


「大輔ぇっ! なんでお前とばばぁがこの家に来てんだよ! 明日のイベントは俺には関係ねぇし。もう、追い掛けてくるなよ!」


 叫びながらもっさい男の子は、あたし達の横を凄いスピードで走って何処かに行ってしまった。


「あぁ! 待てよ。仁志ぃぃぃぃ。俺もどうしたらいいかわかんないよぉぉぉっ」


 家の中から走って出てった男の子を追いかけるように、もっさい男の子と対照的に綺麗な感じの男の子が、ガクリと肩を落として出て来た。


 今あたし達に気付いたのか、男の子がビックリした顔でこっちを見る。


「あっ。その靴、秋香さんの……」


 あたし達の持ってる靴にジッとこっちを見る男の子。

 それをきっかけに、あたし達も我に返る。

 状況はよくわからないけど、この靴を本当にくれた訳ではないのは何となく分かる。


「あのぉ、これぇ」

「あ、ありがとう……」

「じゃ、じゃあ、あたし達はこれで」


 早くこの場を離れたくて、靴を渡して逃げようとしたら、男の子がまだ何か言いたそうにこっちを見る。


「……あ、あのぉ」

「は、はいぃっ?」


 声を掛けられて思わず返事をすると「なんで返事なんかしてるのよ!」と里香に小声で叱られる。


 あたしのバカー!

 返事しちゃいけない事くらいは、分かってたんだよ? なんでか返事しちゃったんだよ!

 変なことに巻き込まれる前にこの場から早く逃げたいのにーっ。


「君たち、カズくんの知り合い?」


 ん? カズくん? カズ……どっかで聞いたことのある名前のような。 


「……池山の事ですか?」


 里香の言葉でハッとして目の前の家は池山の家で、何故か男の子に池山家に招かれた。


「池山の家の人居ないみたいだけど私達、お邪魔してていいのかな?」

「さ、さぁ……?」


 里香が小さな声であたしに耳打ちする。

 確かに居なそうだけど、お風呂場の方から水が流れてる音がするから、もしかしたら池山のお母さんかもしれない。


 テーブルを挟んで目の前で俯いて座ってる男の子は大輔くんと言うらしい。

 どうしたもんかとチラッと大輔くんの顔を見る。

 

 そんな年上には見えないけどあたしの学校には居ないタイプの男の子。

 耳に髪の毛がかかる位の長めの黒髪のストレートの髪型で、犬みたいな目をして人懐っこそう。


 この微妙な空気のせいで、カッコいいと思われる顔は今にも泣きそうな顔で、少しもったいない気もする。

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