共産の夜明け
自由主義者、民主主義者はご遠慮ください。
この世界には、様々な政治思想が存在する。
例えば、自由主義、民主主義、社会主義と言ったものである。しかし、その中に社会を構成する規範となるに相応しいと言える物は少ない。
だが、僕、東條亙は敢えて言わせてもらいたい、共産主義こそが世界で最も優れた思想である、と。
しかし、残念な事に、この世界では既に殆どの人民の骨の髄まで民主主義、自由主義という悪しき思想が浸透仕切っており、今更、僕一人がどれだけ足掻いても世界は変わりはしないのだ、それが悲しい現実である。
だから僕は、心の奥から純粋な気持ちで、ただただ一途に、
「共産主義が根ずくことの出来る、まっさらな世界が存在してくれれば・・・」
そう願った。
そんなもの願うだけ無駄だと、自分でも分かっていた、世界は一つしかないのだ。
そんな時だった、
「その<願い>聞き届けよう」
「えっ」
突然、空から、いや脳内に、低い重低音のような声が鳴り響いた。
その直後、僕の体は徐々に霞がかっていった・・・。
そして、その日から僕の革命戦士としての戦いは始まった。
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「ん・・ここは・・・?」
そこは、たくさんの木々が颯爽と生い茂る森の中だった。
「たしか、変な声が聞こえて、そのあと・・・?」
自身の頭をフル回転させて考える、しかし、どれだけ考えても何故こんなところにいるのか分からなかった。
「・・とにかく、この場に何時までもいるというのもな・・移動するか」
不可思議な状態に説明をつけるより、まず、移動するのが先決である。行動あるのみだ。
「それにしても・・深い森だな」
実際のところ、こんな深い森は初めて見る、昔、富士の樹海や屋久島といった木々の多い場所に観光に行った事があるが、この森はそのどれとも違い、圧倒的なまでに深く、暗い。
しかし、森である以上は必ず出口があるはず、と出口があることを信じ、一定の方角に向けて歩き続けた。
「はぁ、はぁ、出口は、まだなのか?」
もう、3時間は歩いただろうか、だが、それでも森の終わりは一向に見えてこない。
この森には終わりがないのか、そう諦めかけていた時だった。
”グォォォー!”
腹の奥から出すような野太い鳴き声が聞こえてきた。
「クソッ、ダメ押しでこれかよ・・・!」
大きな鳴き声を上げながら、1メートル位の大きさの真っ白な狼のような生物が、8~9匹程の群れを作って、僕の進路を塞ぐ。
・・・どうやら、通してはくれなさそうだ。しかし、僕の体は既に疲労しきっている、オマケに戦闘経験など皆無で、武道の心得なども一切無い。
「共産主義の日の目も見ぬうちに死ぬのか・・」
そう覚悟した時だった。
『キャイン!』『グゥゥゥッ!?』
二匹の狼が、何処からか飛来した二本の矢に眉間を貫かれ、絶命した!!!
「え・・な、何が?」
僕は、突然の出来事に思考が追い付かないでいた。
『ガァァァ』『グギャァァァ!!!』
呆けているうちにも、次々と矢が飛来し、狼達を駆逐していく。
『キャイン、キャイン!』
そして、とうとう狼達は姿の見えぬ敵に怖気づいたのか、森の奥へ一目散に逃げて行った。
「助かった・・のか?」
「ホントにそう思う?」
いきなり、目の前に一人の人間らしき物が現れる。
「・・ッ、誰だ!」
僕は、その人間らしき者に、声を荒げて素性を問うた。
「助けてもらった相手に随分な物言いね、マナーって物を知らないの?」
その声の主は、僕の態度が気に食わなかったのか、目に見えて機嫌を悪くした。
「まったく、これだから人間は・・・助けなければよかったわっ!」
人間は?どういうことだ?コイツも人間だろうに、可笑しな言い回しをする奴だ・・・いや、よく見るとコイツ耳が尖っているような・・・それに、目もやけに緑がかっているな、まさか!
「に、人間じゃ無い!?」
「当然でしょ!私たちエルフと貴方たち人間を一緒くたにしないでくれる?」
エルフだと?たしか、北欧神話に出てくる自然と豊かさを象徴する小神族で、美しく若々しい姿をもつとされる妖精のような存在、だったか?しかし、それはあくまで伝説の中での事であり、現実には存在しないはず、だが実際こうして僕の前に居る・・・つまり、考えられる事はひとつ、ここは僕の居た世界では・・無いっ!
「ハハッ、僕の願いが叶ったってことか!」
「・・・貴方、いきなり何言ってるの?頭大丈夫?」
おっと、どうやらいきなり巡ってきた千載一遇のチャンスに興奮して、声が出てしまっていたらしい。気をつけねば、この行動しだいでは、せっかくのチャンスがふいになる事も十分あり得るのだから。
「いや、先ほどはすまない、感謝する」
僕は跪き、頭を地面すれすれまで下げて謝意をしめす。
「そ、そうよ、最初からちゃんと感謝しなさいよね。まったく」
彼女は、何故か困惑した表情でそういった。
「今度からこの森には近づかないように、それじゃ、さよなら」
彼女はそういって踵を返し、立ち去ろうとする。しかし、このまま帰す訳にはいかない。僕はまだこの世界について何も知らないのだから。
「まってくれ!」
聞こえるように大きな声で言った。
「・・・何か用?もう帰りたいのだけれど・・」
「いや、助けてもらっておいて、お礼もしないというのは性に合わない、何か礼をしたいんだ」
「べっ別にいいわよ、そんなの」
「是非にでもさせてくれっ!!」
ズイッ、と詰め寄って言う。
「わ、分かったわよ、何かしてもらうから、だから少し離れて!」
よし、第一段階はクリアーだな、どうやらコイツは押しに弱いらしい。・・・もうひと押ししてみるか。
「出来れば、小間使いとかがいいんだが・・・ダメかな?」
「なんで、私が人間を家に連れ帰らなきゃいけないの?絶対にイヤ!」
「掃除、洗濯、炊飯なんでもやる。だからお願いだ」
「イヤよ、イ・ヤ!そうなるんだったら、お礼云々はもういいわ帰って!」
くそっ、ガードが堅い・・しかし、何としても付いて行かなくては、こうなったら仕方ない、騙すようで少々気が引けるが、情で攻めるか。
「お願いだ・・・僕にはもう、帰る所がないんだよ・・」
限界まで悲哀な声を絞り出し、情を誘う。すると、
「うっ・・それは、気の毒だったわね・・・で、でも里の決まりで人間は入れるな、ってなってるし・・」
「お願いだ・・それに、こんな所に置いて行かれたら。また、獣に襲われてしまうよ・・・・」
「・・・分かったわ、ただし、貴方を長老に会わせて許可を得られたら置いといてあげるけど、もし、ダメだったら、直ぐにこの森から出て行ってよねっ!」
「ああわかった。その条件でいい、ありがとう」
よし、第二段階もクリアーだ、後はコイツに付いて行き、その”里”とやらを一人残らず共産化してやるぞ。まったく、神さまも素晴らしい世界に飛ばしてくれたもんだ、感謝しなくてはな。
そうして僕は、輝く未来に夢をはせそのエルフに付いて行った。
稚拙かつ突発的な文章で申し訳ございません。