雨の祈り
「彼女は星になったのだと」
冷たい雨が降っていた。
黒く染まった夜空。
月さえ見えない。
「何故星になったの?」
彼女は胸で両の手を組み、祈る。
「もっと違うものに」
瞳を開き、目の前を見つめても幻想すら現れてはくれない。
目の前にあるのは残酷な現実。
「だって手を伸ばしても触れられない」
捕まえようとあがく手に落ちる雫は冷たい雨だけ。
寒い。
凍えてしまう。
「声が欲しい」
神様?
悪魔?
「温もりが欲しい」
誰でもいい。
「わがまま?」
この願いを叶えてくれるなら。
「私の願いはそれほど贅沢なもの?」
ただ会いたいのだと彼女は祈る。
「見守ってる?でも、私馬鹿だからしっかり掴んで、言葉で言ってもらわなきゃ分からないよ」
雨は降り続ける。
彼女の中には星が宿っている。
星は彼女の瞳を通して世界を写し、彼女はその世界を閉じ込めるように手で覆った。
いかないで。
いかないで。
星の想いの欠片はいくら手で押さえつけようと、その隙間からあふれ出る。
星が流れる。
雨はまだ降り続いていた。