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板橋区に住むサラリーマン井上の意識が高いはずなのに限界系ギャンブルライフ  作者: 秋山機竜


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第1話 ノーギャンブル、ノーライフ

 都営三田線はギャンブルに適している。


 なぜなら水道橋駅でウインズ後楽園(中央競馬)とオフト後楽園(地方競馬)を利用できて、内幸町駅でラピスタ新橋(競輪とオートレース)を利用できるからだ。


 上記三つの施設は、すべて都営三田線一本で利用できる。


 もし競艇をやりたいなら、電車の乗り換えを挟んでしまうものの、三つの施設が候補に挙がる。


 埼玉のボートレース戸田、東京の南側であるボートレース平和島、東京の東側にボートレース江戸川だ。


 個人的にはボートレース江戸川の場外販売所をおすすめしている。なぜなら朝から開いているため、モーニングの舟券を紙で買えるからだ。


 やはりギャンブルは紙と現金だ。


 ネット回線と電子マネーで完結してしまう電子投票はどうも肌になじまない。


 いやまぁwin5とdokanto7だけは電子投票オンリーなんだが、それはそれとして紙で買ったほうが勝負している感じがする。


 ただし時代の流れから考えて、いつかは電子投票専用になって、現金で買えなくなる予感があった。


 電子投票のメリットデメリットについてはいつか語ることもあるだろうが、とにかくいまはマークシートを書いて現金で馬券や車券を買おうと思う。


 ビバ、公営ギャンブルライフ。


「おい井上ちゃんと聞いてるのか、おれのお説教を」


 俺の上司である坂崎課長が、ガミガミうるさかった。


 こいつはバーコード頭の五十代男だ。中肉中背で、頼りない顔つきで、ちょっと甲高い声で、粘着質な性格だ。うーん、なんでこんなやつが昇進できた?


「はいはい、聞いてますよー」


 嘘だ。まったく聞いていない。課長の説教なんて全部無視していい。どうせ中身なんてないのだから。


「本当に聞いてるのか!? お前のせいでお客様の大事な食洗器が壊れたんだぞ!」


 うちの会社の主な商品は業務用食洗器だ。


 個人経営の飲食店とかチェーン店の厨房で稼働しているあの巨大な箱みたいな機械のことである。


 便利だし洗浄力も強いのだが、使い方を間違えるとあっさり壊れる。

 

 で、このたび俺が担当している顧客が導入したばかりの食洗器を壊してしまったので、課長がおかんむりになったわけだ。


 だが待ってほしい。俺のせいじゃない。


 ちゃんと顧客には異物を入れて動かすなと忠告してあった。


 食洗器を壊しかねないNG行動をリスト化した図解シートも送付してあった。


 それなのに顧客はやらかしてしまった。


 なんでそれが俺のせいになるんだよ、バカ課長。


「どう考えたって、俺のせいじゃないでしょう、課長?」


「いいやお前の説明不足が原因だ。ちゃんと招き猫は異物だと伝えなければならなかった」


 顧客は食洗器の洗浄力に感動して、お店のカウンター席に置いてあった磁器製の招き猫を洗ってしまったのだ。


 そんなことをしてしまえば、招き猫が高熱と圧力でぱりんっと割れて、しかも塗料が飛び散って、それらが機械を内部から壊すことになった。


「招き猫が異物だなんて誰の目にも明らかなのに、なんで俺のせいになるんです?????」


「お客様にはわからなかった。皿と同じ陶磁器ならこれも洗えるはずだと思ったのだ。だから営業したお前が悪い」


 さてはこのバーコードハゲ、俺をねちねちイジめたいから、本当は俺のせいじゃないとわかっているくせに、わざわざ同僚たちの前で吊るしあげてるな。


 ふざけやがって。だったらこっちにも考えがある。


「課長、ここにおもしろい画像があるんですけど」


 俺のスマートフォンに表示されているのは、課長が風俗店で赤ちゃんプレイしている画像だった。


「な、な、なんでこれを!」


 課長は真っ青になった、耳も鼻もバーコードの頭頂部も。


 あと一押しで落ちるはずだ。


「営業マンって、いろいろツテがあるんですよ課長。ところで、このくだらないお説教はもうおしまいですよね?」


 これ以上バカげた説教を続けるつもりなら、この画像を社内にバラまくぞ、と脅したわけだ。


 課長はあうあうと腰が引けてしまい、気持ち悪いぐらいの猫なで声になった。


「も、もちろんだとも。朝礼はこれで終わりだから、井上は営業に出てくれぇい」


 なぁにが朝礼だ、このバーコードハゲ。まるで説教なんてなかったみたいな言い訳しやがって。


 俺はこの会社に愛着があるわけじゃない。


 ギャンブルの種銭を稼ぎたいからしょうがなく働いているんだ。


 給料以上の働きをするつもりもないし、win5かdokanto7を当てたらすぐに辞めてやるからな。


 という言葉を心の奥底にぐっと溜め込んで、


「うーっす、営業出てきまーす」


 と、まっとうな会社員のフリをして、カバンを担いで営業に出た。

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